1月11日の出来事。






『ふっふっふっ……』



右手に握り締めた木槌を一気に振り下ろした。


ガンッ!と鈍い音がして砕けたそれに訳の分からない征服感のようなものが込み上げる。

更に細かく砕くべく二度三度と叩き割れば、大きな塊だった原形は見る影もなくなった。



『さぁーってと、「何してやがる」ひぁぁっ!?あ、あ…?なんだリボーンさんですか』



突然掛けられた声に我ながら間抜けた悲鳴を上げてしまったと思いながらそちらを振り返れば、訝しげな表情を浮かべた黒衣のヒットマンが立っていた。
相変わらずの神出鬼没さには慣れる事なんて出来ない。



「不気味な声がすると思えば…一人で一体何してたんだ?」


『不気味で悪かったですね』



リボーンさんの視線が私が手にしている木槌に向いている事が分かってニッコリ笑う。



『鏡開きしてたんですよ。この木槌で鏡餅割ってたんです』



ここは確かにイタリアなはずなのだが、妙に拘る雲雀さんの方針(?)でお正月は日本式に迎えた。
初詣に行けなかったのが残念なくらいだ。


お節料理も年越しそばも作り、さらに当然の事ながらお飾りも雲雀さん(というか草壁さん)が何処からか調達してきてリビングにきっちり飾られていたのだった。




『こうして割った鏡餅をおしるこにして食べるんです。リボーンさんも召し上がりますか?』


「……甘そうだな」



鍋にたっぷり作ったおしるこの甘い匂いに眉間に皺を寄せた彼に苦笑して、それなら…と細かく砕けた欠片を素揚げして塩をまぶした物を差し出す。



『これなら甘くないですよ』



出来立ての不揃いなあられを一つ口に放り込んで、ニヤリと笑う。



「これは悪くねぇ」


『それはよかったです』



もう一つつまんでから、

「俺は戻る。じゃあななまえ」

と言って出て行ったリボーンさんの背中を見送りながら、もしかして…物音に心配して様子を見に来てくれた?なんて思ってみたり。




(あのリボーンさんが、まさかね…?)





『……うん、おしるこ食べよ』


(雲雀さんも食べるかな?)












『どうですか?雲雀さん』


「……甘いね」


『すみません……これでもかなり甘さ控えめにしたんですけど…』



それでも、甘い甘いと言いながらも残さず食べてくれたところを見ると味は悪くはなかったようでホッとした。


これならツナさん達も食べてくれるだろう。

鍋いっぱいのおしるこを無駄にしないですみそうだ。




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