二枚の小さな折り紙を前にして沙雪ははて、と首を傾げた。そういえば今からやろうとしていることのやり方が分からない。何となくの気分で始めようと思ったことだったので自分で調べようという気にもなれず、意味なく折り紙をつつきまわしてみる。裏に返したりそれをもう一度表にしたり、折かけてやめてみたり、もう既に綺麗な折り紙を指で伸ばしてみたり。
そういえば折り紙の入っている台紙に折り方が書いてあることがよくあるじゃないか、と思い至って鞄の中から今朝雑貨屋に寄った時に買った折り紙を取り出して台紙を見る。が、書かれてあったのは紙風船の作り方で少し落胆する。しかし紙風船とは何だか可愛いな、と思考が脱線したところに教室の外から声がかかった。

「小鳥遊? ……さん?」

いかにも後付けでつけたしました感の滲み出ている呼びかけにもうそれなら呼び捨てでいいよ、と思いつつ後ろを向くとここ最近何だか遭遇率の高い気がする赤髪と目が合う。先ほどまで素面でいたので予期しない他者の登場に多少辟易しつつも「赤司くん、」ときょとん顏で応える。

「どうしたの、部活は?」

さすがに洛山一の有名人の所属部活を覚えていないほど世間ずれはしていないつもりだ。確かバスケ部で入部当初から主将になったとどこかから聞いた。そして今はばりばり部活真っ只中の時間帯だし、なぜそんな時に主将のはずの赤司がここにいるのか。

「顧問の先生に少し用事があってね。……そっちこそ何をしてるんだ?」
「うーん、何だろ……」

どう答えたものか分からずに首を傾げると赤司は「何それ」と笑って教室に入ってきた。部活はいいのだろうか。
あ、そうだ、と頭の中に閃くものがあって赤司の方を見る。無駄に知識のありそうなこの人なら知ってるかもしれない。

「赤司くんさ、折り鶴の作り方って知ってる?」
「折り鶴? 知ってるけど……どうして?」
「教えてよ。今から折るの」

不思議そうにする赤司に沙雪は赤色の折り紙を手渡してにこりと笑いかけた。



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