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砂浜の特別メニューをこなさせながら、リコは先ほどからちらちらとこちらを伺う視線の方を見やった。

「…何? 千秋君」
「俺も練習したい」

言うと思った、とリコはしゃがんで自分を見つめる千秋に顔を顰めた。

「駄目よ」
「何で!?」
「何でってそれは……足に負荷がかかりすぎるからに決まってるでしょ」
「えぇ……」

顔に『バスケしたい』とでも書かれているような素直な表情で千秋はひたとリコを見つめる。リコは微妙に千秋から視線を外しながら首を振る。

「そんな顔しても駄目よ。もし悪化したらどうするの」
「自分でちゃんと加減は考えるから。な?」
「駄目。この間怒られたばっかりなんでしょ」

担当医から「少し使いすぎだと怒られた」と千秋が苦笑していたのを覚えていないリコではない。リコの返しに一瞬怯んだ千秋だが、立て直して恨みがましくリコを見上げる。
全くこのはとこは普段は大人っぽいくせに、バスケが絡むと妙に子供っぽくなるところがあるから困る。
やがて諦めたのか練習に目を向けた千秋の横顔を見て、リコは呆れのため息を吐く。
トラウマがあるからとバスケから離れかけた千秋をとりあえずはとチームに引っ張り込んだものの、それが良かったのかどうかリコには判断がつかない。何だかんだと言いながら人を放っておけない性格故に、結局周りに引っ張られて打ち解けることにはなっているが、千秋にとってそれが最善であったのかは分からない。
休憩に入った部員たちにドリンクのボトルを渡しながら楽しげに笑っている千秋を見やり、まあ今がちゃんと楽しいならそれでいいか、とリコも笑みを洩らした。



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