03

海常高校と誠凛高校の練習試合当日。現在海常高校正門前である。案内役として派遣されたらしい黄瀬は千秋を見つけた途端、表情を変えた。

「あぁ千秋っち! 来てくれたんスねー!」

満面の笑みで走り寄ってきた黄瀬に千秋はうわめんどい……とこれ見よがしに呟いた。

「千秋っちってば相変わらず毒舌!」
「お前にだけな」
「ひどい!」

ひどいひどいと喚きながら構ってもらえて妙に嬉しそうな黄瀬の相手がそろそろ本気で面倒になってきたので、冷めた目であしらう。

「っていうか早く案内して」
「うー……はーい」

目に見えてしょぼんとなった黄瀬に、いつもこうならもうちょい可愛げがあるのに、と思うが言うと調子に乗るので絶対に言わない。

「千秋っち、試合終わったら1on1やろ!」
「やだ」

***

コートの近くで! できるだけ近くで! と騒がしい黄瀬を宥めて(正確には好きな所で見れないんだったら俺帰るという脅しをして)二階から試合を俯瞰したいという希望が叶えられた。元々リコにはそう伝えてあったので誠凛内からは一切の苦情は出なかった。
千秋にひとつ言えることは、黄瀬ってほんと不憫だよな……、という感想くらいである。不憫にしているのは主に自分なのだが。


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