01

始業式の日。教室に行ったら夏目の席の斜め前に緑髮が座っていて「え、何で緑間君が居んの」と思わず声をかけてしまった。切れ長の目が夏目を捉えて大きく見開かれる。

「香坂……? ……言っておくがここは秀徳だぞ」
「緑間君ってあたしのことあのバカ並のバカだと思ってるよね。違うから。あたし学年順位いつも一桁だから。あのバカとは頭の造りが根本的に違うから」
「……このクラスなのか?」
「うん」

頷くと非常に訝しげな顔で見られた。何故そんな顔で見られなければいけないのかと不満を込めて見返すと目を逸らされた。はぁ、と「全く救いようがないのだよ」とでも言うようなため息を吐かれて、ちょっとイラッときたのでラッキーアイテムであろうセロハンテープを床に投げつけてやった。

「何をするのだよ!」
「何かイラッてきた」
「香坂お前……!」

緑間は暫く怒りに打ち震えていたが、やがて「もういい」と諦めた。そうそう、人間諦めが肝心だ。

***

緑間が部活初日から体育館を借りて居残りでシュート練をしていると、そろそろ休憩しようかという頃合いで夏目の声が聞こえた。

「みーどりんっ」
「……香坂、そのふざけた呼び方はよせ」

振り向きざまにドリンクのボトルが投げられて、相変わらずタイミングのいい奴だ、と視線を下げる。「えーさつきちゃんは良いのにあたしは駄目なのー?」とわざとらしく訊ねる夏目に「第一桃井にも許可した覚えはないのだよ」と苦い顔で答える。
くすくすと楽しそうに笑いながら、夏目は体育館のステージに飛び乗った。

「……またマネージャーか」
「ん、そ。あたしバスケ好きだし」
「だったら何故女バスに入らないのだよ? お前運動神経は悪くないだろう」

確か中学の時の体育祭ではいつも女子リレーに参加していた筈である。

「んーまあやっぱ身長がねー」
「女子でも身長の有無は関係あるのか?」
「そりゃあなかったら不利よ。あたし平均より小っちゃいしさ。赤司君とかテツヤみたいに身長低くても使える武器なんて持ってたらあれだけど、あたしそういうのないし」
「そういうものか?」

夏目は「そういうものよー」と屈託なく笑った。



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