プロローグ

傍に人の気配を感じて意識が浮上する。薄く目を開くと、見知った顔が青峰を見下ろしていた。

「あ、起きた」
「……んだよ、夏目か」
「何よ、あたしじゃ悪い? さつきちゃんが良かったの?」

バスケ部マネージャーの、香坂夏目。ショートの黒髪を揺らして青峰を仁王立ちで見下ろしている。
何でそこでさつきが出て来るんだよ、と青峰は苦い顔を浮かべて、小さく「何だよ、」と訊ねる。

「そろそろ練習出れば?」
「説教かよ。アホくさ」
「別にアホくさかろうが何だろうが良いわよ」

青峰は体を起こして下から夏目を睨み上げた。

「うっせぇよ。俺が練習出ようがどうしようが俺の勝手だろうが」

強めた語気にも怯むことなく、夏目は相変わらず勝気そうな瞳で青峰を見つめて言った。

「アンタからバスケ取ったらナニ残るってんのよ」
「これ以上周りとの差ァ広げてどうすんだよ」
「っ練習出ないから、余計つまんなくなるんでしょうが!」
「練習出た結果がどうだったんだよ。あんな風になって、結局相手もやる気失って。あれ以上相手をズタボロにすればいいのかよ? 精一杯やった結果なら相手も納得するだろうって? 納得なんて、するわけねぇだろ」

結局、相手は何もかも諦めて、まともに戦おうともしない。才能の違いだ何だとやる気すらもなくなって、正面から向き合おうともしなくなる。
夏目は顔を歪めて、青峰に何かを叩きつけた。

「じゃあっ……アンタにとってのバスケって、何だったのよっ……!」

泣きそうな夏目の表情に目を見開く。夏目はくるりと後ろを向くと、それ以上何かを言うこともなく、屋上から出て行った。

「……ってーな、」

青峰は夏目の叩きつけた何かを見て、顔を顰めた。

「バッシュって……相変わらず色気のねー女」

普通こういった時にぶつけるのは何かの写真とかそういうものだろう。



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