06

黒子が見えなくなると青峰と夏目の間には相手の雰囲気を探るような沈黙が流れる。
何を言ったものかと考え考え、夏目は口を開いた。

「何で、テツヤと一緒だったの」
「シュート、」

その単語だけで全てが通じる。青峰に指導してもらってシュート率を少しでもあげようということだろう。夏目は納得したように「ああ、」と声を洩らして、呆れを滲ませて苦笑した。

「そういうとこ、テツヤ図太いもんね、割と」
「……ああ。普通負かせた相手に翌日教えろとか言ってくるかよ。アホか」
「アンタに言われるのだけは嫌だと思うけど」
「つくづく失礼だなオイ」

互いに恐る恐る軽口を叩いて、大丈夫だと内心ほっと安堵する。
夏目は目を合わせないようにそっぽを向いて、「まあ一応、」と前置きする。

「おつかれさま。……頑張ったんじゃないの?」
「何だよその上から目線は」
「何よ、アンタが負けたのただの練習不足でしょ。ダサすぎ」
「うっせーよ」

夏目の口調も青峰の返す言葉も、タイミングがどこか他人行儀でぎこちない。どちらも正面から目を合わせないように、と少しだけ目を逸らしているからというのもあるだろう。
1年足らず。満足な別れ方をしなかった2人にとってはこの期間は重くて長い。

「……あのさ、」

夏目はぎこちなさを押し殺した声で(恐らく)青峰に話しかけた。恐らく、というのは夏目がこちらを正視していないからである。だがこの場には青峰と夏目しかおらず、夏目が話しかける体を装ったからには青峰に話しかけたのだろう。
向けた視線の先、仄かに赤らんでいるような気のする夏目を青峰は初めて視界の真ん中で捉えた。




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