嵐のように過ぎ去っていった寺辻くん。
あたしの心はぽっかりと穴が開いてしまったかのようだった。
こんな気持ちになることも分かっていた?
「ユヅキ!こらっ!」
パコンって頭を叩かれてあたしはハッと顔を上げた。
呆れたようにあたしを見下ろしているのはユナ。
お弁当を広げているユナを見て、今がお昼休みなんだと理解した。
「ユヅキさ…何があったかいい加減話してもいいんじゃない?」
ちょっと怒ったような顔を見せるユナが毎日あたしを心配してくれているのは分かっている。
あたしが言ってこないことに対して苛ついているのも分かってる。
もしもあたしがユナの立場だったなら、心配だし理由を知りたいって思うだろうし。
分かっているんだけど…―――
「分からないの…」
ポツリ呟いた言葉はあたしの胸の内。
やっと口を開いたあたしに優しい表情で「うん?」って相槌を打つユナ。
「どう説明したらいいのか」
浮かぶのは寺辻くんの笑顔ばっかりで。
覚えているのは、手を繋いだ感触…
甘いくちづけ…―――
「ユヅキ…」
ユナの手があたしの肩に触れて…そのままフワっと抱きしめられた。
「分かったからもういいから。ユヅキの気持ちちゃんと分かったから…」
さすがは親友。
そう思って笑ったあたしの頬、瞬きと同時にスッと何かがつたった。
ボヤけていた視界が綺麗になったと思ったら、鼻の奥が痛くて…
それ以上に胸の中が痛くてぐちゃぐちゃで…
「どうしてすぐに言わないの!あたしが傍にいる意味がないじゃないっ!泣くぐらい好きになったって!」
ユナの言葉にあたしは意識がハッキリとして…
そうなんだ。
あんなに短期間で、数える程度しか一緒に過ごしていなかったのにあたし…
「好きになっちゃったよぉ、寺辻くんのこと…ユナァ――」
すがるようにユナの腕にしがみついて泣き喚いた。
どうしたらいいのか分からない感情を、どこにも置いておけなくて…
その苦しさをユナに全部吐き出した。
ユナは子供をあやすみたいにあたしの背中をポンポンって叩いてくれてずっと「大丈夫」って言ってくれていたんだ。
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