フワッと笑う寺辻くんは、さっきとは違う意味でまた目を細めた。
口端を緩めて、あたしの肩に腕を回す。
「そーいうこと」
キュンてする。
耳元で囁く寺辻くんに、胸の鼓動が高まる。
「キスする?してもいい?」
「…うん」
「ラッキー」
「もう」
クルンと身体の向きを変える寺辻くんは、両腕をあたしの首の後ろで交差する。
その交差であたしを引き寄せると、本当に軽くチュッてキスをした。
それだけで十分ドキドキして…
心臓が壊れそうなくらい音を立てている。
「もっとしたいなぁ、ダメ?」
顔を覗きこまれて甘い言葉。
ドキンてする胸を指で押さえて小さく頷く。
「ユヅキちゃん」
「…ん」
「可愛い」
確実に真っ赤になってるんだろうなって。
でもそれが何だか心地よくて。
目を閉じたあたしに、可愛い寺辻くんのキスが数回落とされた。
「あ、アイス溶けてら」
何事もなかったみたいにまたアイスを口にして…
その唇に今自分が触れたと思うと半端なく心拍数が上昇しちゃって…
「初めてだった?」
優しい寺辻くんの問いかけに、ただ小さく頷いた。
「嫌じゃなかった?オレと…」
続く言葉に、ほんの少し違和感を覚えたものの、たんに優しいからだってすぐにそう思って、あたしはまた小さく頷いた。
「そっか、よかった」
ホッとしたようなその言葉に、あたしは寺辻くんを見ると、また小さなキスが落ちてきた。
カップの中のアイスが溶けていくのも…
人が見てるのも分かっていたけど、寺辻くんの醸し出す雰囲気は優しくて甘くて…それが本当に心地よいんだ。
きっと、哲也くんとじゃ出せることのないこの空気が、本当の本当はあたしには合っているのかもしれない。
寺辻くんとの甘い空気が、あたしの求める本物なのかもしれないなんて、この期に及んで思い始めているなんて…。
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