「なんだよ、煩せぇな」
「表に出てください! 八木くんのせいで、寺辻くんが先輩と喧嘩してます!」
「は、先輩って?」
そう言ったのは、眼鏡ネス。
鋭い視線をこちらに飛ばしている。
「分かりませんけど、寺辻くんは“先輩”って呼んでたから。とにかく一人で喧嘩してるから早く行ってください!」
あたしだけが焦ってそう言っているようだった。
あたしの言葉を聞いてはくれているけれど、誰一人としてその場を動こうとはせずにいて…―――
ちょっと、何なの!?
「ねぇお願い、寺辻くんをタスケ…――
「オレに触るんじゃねぇっ!!」
一番近くにいたネスの腕を引っ張ろうと手を伸ばしたら、その手をバシンっと振り払われた!!
おまけに大声で怒鳴られて…
ビクンっと後ろに下がった。
「はいはい、ごめんね〜。こいつ根っからの女嫌いなのよ。だからこれからは話しかけても触らないようにしてね〜」
啓司があたしを宥めるようにそう言うけど、何もかもがあたしの世界とは違っているせいか、どうにも受け止められなくて…涙が零れた。
「わお、泣いちゃったよ、ケンチの女」
ごめんね…って
怖かったよね…って、啓司があたしの頭を撫でるけど、泣いたのは吃驚したからだけじゃなくって…
「どうして助けに行ってくれないの?寺辻くん一人で喧嘩してるのに、何で行ってくれないの?先輩たちのが人数多かったし、バッド持ってたんですよ…一人で勝てるわけないのに…」
次から次へと零れ落ちる涙を手で拭いながらそう言うあたしに、「だってケンチ強ええもん」ボソリと哲也くんが呟いた。
「そう、別にオレ達が出るまでもないんだよね、マジで」
啓司までもがそう言うけど…
「でも、八木くんに用があるって…」
見つめるあたしの視線から逸らした将吉は一度宙を見上げて「ああ」って言った。
「あの時の奴か…じゃあ尚更雑魚だから大丈夫だって」
「みんなの言ってること分からないです!あたしは心配だから見てきます!」
言い張ってクルリと向きを変えて、又ゲーセンの入口に走って行った。
「分かった一緒に行くって!」
そう言って哲也くんが面倒そうな顔をしながらもついて来てくれた。
- 11 -
[*prev] [next#]
[TOP]