願い



――――――――――――――



パチ…。

目が覚めたら素っ裸の自分と、隣には天使みたいな寝顔の剛典くんがいた。

近くで見るとやっぱりすごい綺麗…。

思わず見とれてしまった私はギュっと剛典くんに抱きついた。



「ん〜起きたの?」

『あ、ごめん…起こしちゃった?』

「うん。でもお腹すいた…ナナさん何か作ってよ?」

『…何でもいいの?』

「うん」



ニコって笑う剛典くん。

ナナって呼んだり、ナナさんって呼んだり、敬語だったりタメ語だったり…剛典くんって人は私をどう扱いたいんだろうか?

まぁ、呼び方も言葉づかいも、剛典くん相手だったら何だってかまわないんだけど。



「これ着て」



そう言って剛典くんが私に差し出したのは真っ白いYシャツ。


…―――これ。



「それだけね、着ていいのは」



そう言って悪戯っ子みたいに歯を見せて笑うんだ。

大人だったり子供だったり、オトコだったり無邪気だったり…忙しいな。

でもそんな剛典くん全部が私の愛する人なんだって。

きっとこれも剛典くんの趣味なんだろうね…。

Yシャツ一枚だけを身に着けた私は、ベッドルームから出るとリビングと繋がっているカウンターキッチンに身を置いた。


若奥様気分で鼻歌を歌いながら冷蔵庫を開けたら、フワリと後ろから長い手に抱きしめられたんだ。


真っ黒い長めのシャツだけを羽織った剛典くん。

クルリと私の身体を反転させるなり、冷蔵庫に押し付けられてちょっと強引な口づけ。

こんなシチュエーションに軽くドキドキしてしまう私は、またも簡単に剛典くんに抱き上げられて今度はリビングのソファーに下ろされた。

すぐに剛典くんの大きな手がシャツの中に入ってきて、直接私の胸を揉みしだく…



『剛典くんッ…ご飯はっ?』

「無理。だってナナがエロすぎる」

『なっ…』

「もう一回抱かせてよ」



NO…なんて答えは私にあるわけもなく。



『仕方ないなぁ…』



そう言った私を上から見下ろす剛典くんは「嬉しいくせに」オトコの顔でそう答えたんだ。




ずっと幸せを探してた。

一人…一人…とお嫁にいってしまう友達を見送っていた私は、婚期すら逃してしまったのかって思いこんでいたけれど、早いとか遅いとかそんなことにとらわれていたのかもしれない。


絶対にありえないような相手に出逢ってしまったことで、一度は諦めようとしたけれど、だからこそ本気で剛典くんが好きなんだと気づけたんだと。

この先どんなことがあっても、剛典くんとならやっていけるって今あるこの気持ちを、これからもずっと大切に歩いていけますように…。

それが、私の願いなんだ―――――





*END*



願い

←back|×