けんじろうの恋愛事情 | ナノ


▽ ヤキモチ



えええええええええっ!!!

脳内であげている悲鳴は勿論ユヅキちゃんに届くこともなく。

エレベーターが閉まる寸前に触れたその唇に心拍数が一気にあがった。


「健二郎…」


名前を呼ばれて俺を見つめ上げるユヅキちゃんからは妖艶な色気が出ていて…

物凄い無意識でユヅキちゃんの腰に腕を回していた。

自分の方に引き寄せてそのまま背中にまで腕を回す。

もう一度その唇に触れたい…―――ただその一心やった。

無言で顔を寄せると、ユヅキちゃんがまた背伸びをして俺の首に腕をかける。

そのまま腕に力を込めて俺の顔を引き寄せるようにしてそっと唇を重ねた―――


目が回るんちゃうかってくらいに傍で聞こえる息使い。

唇が触れ合う度に鳴るリップ音…

ああ、あっかん…

このまま離したないわ…

キスしたんいつぶり?

…もう覚えてへんわ…

え、俺キスしたことあったっけ?

それすら覚えてへんわ…

そもそも…こんな柔らかいもんなんや、女の人の唇って…

脳内大興奮気味の俺の唇を、滑らかに舐めていくユヅキちゃんの舌に身体がゾクリとした。


「…健二郎くん…」


唇と腕を離して俺を見上げるユヅキちゃんの瞳は見た感じ潤んどって、その唇はほんのり濡れている。


「お、おん…」

「気づいてないんだ、さっきの子…」

「おん、え?なん?さっきの子?」

「もう…。あの子どういう…」

「同じ会社やねんけど、たまたま同じマンションやって…」


俺の言葉にプウっと頬を膨らませた。

怒った風な顔やのに、むちゃくちゃ可愛くて…


「もー鈍感なんだから!だから今まで彼女もできなかったのよ!」

「え、どういう意味?」

「好きだよ、健二郎くんのこと、さっきの子…」

「…えええっ!?ないやろそんなんっ!あいつ憎まれ口しか叩かへんで!」

「健二郎くんだけだと思う、気づいてないの…。だからちょっと悔しいからキス見せてやった…」

「…え」


もしやそれは、ヤキモチ?

唇をムウって尖らせて俺の腕を掴んでプラプラさせてるユヅキちゃんが押し倒したいくらい可愛くて。

会社の女が俺を好きかどうかなんてどうでもようなった。


「俺ん中、ユヅキちゃんしかおらへんで…」

「もっと私でいっぱいにしてよぅ…」


下から上目使いで見つめるユヅキちゃんの破壊力は半端なくて…

ゴクっと生唾を飲み込んでコクコクと首を動かす俺。


「あ、あのあの…ええかな俺…ユヅキちゃんの彼氏ってみんなに言うても…」


今更ながら気になっていたことを聞いてみる。

キョトンとした顔のままユヅキちゃんは次の瞬間、ニコっと微笑む。


「それは今夜の健二郎くん次第かな…」


そう言ってスッとそう、俺のモリっとしたそこを一撫でした。





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