なんでも屋
早朝4時。
都内某所でこんなに朝早くから一体何をしてるんだか。
私は手に持っていた折り畳み式の椅子をそこに出してスッと座った。
まだ少し肌寒く首に巻いていた豹柄のスカーフを身体に巻き付ける。
一息ついて目を閉じようとした瞬間、「ちょっと寝るつもり!?」隣から聞こえた声に下がりかかっていた瞼を上げた。
「だってこんなに早いんだよ!」
「お前が寝ちゃったら俺1人になっちゃうじゃん!分かってる?」
ドデカイ身体を折り曲げて私の横にヤンキー座りしているこの男、黒木啓司。
うちの社員。
見た目はモデル並にかっこいいらしいけど、その性格は天然を遥かに超えたツワモノ。
人と違う感覚で生きていると私は勝手に思っている。
「啓司も寝ればいーじゃん」
「だってもう朝じゃん!みんなこれから仕事じゃないのかねぇ?よく並ぶわこんなことに…」
若干の嫌味を込めた啓司の言葉にとりあえずの同感。
たかが携帯電話の為にね、どんだけお金払うんだってね。
見上げたビルの1階は〓SoftBank。
新種の予約が今日の夜20時から受付らしく、その依頼を頼まれた私と啓司はこうして依頼主の指定時間に合わせてここにいる。
ひたすら時間が来るのを待つ今日のこの仕事。
探偵事務所なんて名だけで、私達の仕事は【なんでも屋】だった。