気付いたら夢中

目を閉じた途端に隆二の息遣いを感じた。

同時に感じる隆二の温もり。

チュって小さなキスを何度か繰り返してゆっくりと目を開けた。

唇をムンっと突き出して隆二を睨む私を見てクスっと笑われる。


「怒ってる?」


優しくそう聞かれて。

大きな隆二の両手が私の頬を包み込んでその指で頬をくすぐっている。


「だって…」

「俺の理性が勝ってもいいの?」

「…いいよ」


自分でも馬鹿なこと言ってるって分かっている。

でも隆二前に理性を抑えられないのは私で。

浅黒い隆二の頬を逆に私が掴むと、そのままちょっと強引に唇を重ねた。


「ンッ…」


ほんの一瞬隆二の口から漏れた甘い声。

それをもっと聞きたくて隆二の首に腕を回して身体を寄せる。

椅子の腕かけに触れていた隆二の手が私の背中に回されたことで私達のキスが深まっていく。

舌を絡ませる隆二は私の背中から髪をいったりきたり撫ぜていて…

髭が唇に当たってくすぐったくて…

舌でその髭を舐めると「…ッ」隆二の声がまた響いた。


「ユヅキ…」

「いや?」

「やばい…」

「ふふっ」


舌を出して唇と髭を舐める私に、目を閉じて感じる隆二。

顎から髭へと舌を這わせながら隆二の頬に手を添えてそのまま耳へと舌を動かす。

ピンっと上を向いてる尖った隆二の耳を舌で挟むと「ンッ…はぁ…」隆二の声がどんどん漏れていく。

首筋を指で触りながらその手を喉仏で止めてゆっくりとそこを撫でる。


「ユヅキ待って…」


慌ててそう言った隆二の瞳は少し潤んでいて。

それでも耳を攻める私の肩を手で押して距離を作る。


「隆二?」

「マジでこれ以上は危険…。このままここで抱いてもいいの?」


くるりと視線を泳がせる隆二に私もようやく隆二を離した。

至って変わらない社内。

毎日ここで働く私達。

この場所で…――――「ダメ…」小さく呟いた。


「今日のユヅキ…すごすぎ…」


隆二の言葉に何となくここにあったエロスな空気を感じ取って苦笑い。

私ってば夢中になりすぎてた…

一気に自分のしたことに羞恥心がわいてくる。


「…忘れて…。何か私今日ちょっとおかしい…。隆二が帰ってくるのが待ち遠しくて…」

「俺も一緒だよ。現場出てもずっとユヅキのことばっか考えちゃってた。とりあえず早く帰ろう、俺達の家に…」

「うん!」


やっと椅子から立ち上がった私達。

すぐに鍵をかけて会社から抜け出した。

- 9 -

[*prev] | [next#]

[TOP]