二人の未来

アパートの1階のお客様用の駐輪場に停めた大型バイク。

何だかたったそれだけのことが嬉しくて思わず顔が笑う。

それがバレないようにアパートの二階にある家の玄関を開けた。


「どうぞ」


隆二を通して私もあがる。

片付けてあるよね、大丈夫だよね。

怪しいもの置き去りにしてないよね?

思わず健全な男子校生みたいなことを思い浮かべたけれど、それは大丈夫だ。


「ユヅキの匂いがする、いい匂い」

「…香水だと」


玄関で出る前にふっているせいか、部屋の匂いが消えていてちょっと安心したなんて。

ポンッて隆二の手が私の髪を撫でてニッコリ微笑んだ。


「今お風呂沸かすからちょっと待っててね」


鞄を置いてキッチンに立つと隆二が嬉しそうにソファーに座った。

そこから視線を私におくっていて。


「ん?」

「いや、何かいいなって。結婚したらこんな感じかなー?俺ら」


突然言われた言葉に思わず手が止まる。

さっきの同棲通り越して結婚!?

ジッと隆二を見つめる私に「子供がいたら完璧だなー」…展開が早すぎるよ!


「ん?ユヅキ?」


全くもって私の驚きに気づいていないような隆二。

薄々ちょっと天然っぽいなーって思うこともあったけど、これほどまでに?


「結婚…?子供…?」

「あ、気が早い?」


ニコッて微笑んで言うわけで。


「考えてるよね?結婚、俺と?」

「え、それはまぁ…」

「いつ頃する?俺早くしたいんだよねぇ」

「………」

「毎日ユヅキにお帰りって言われたい」


白い歯を見せて優しく私を見つめる。

学生カップルが未来への憧れを語り合っているのとは訳が違う。

お互いそこそこいい歳だからこそ、慎重に間違えないように。

まだ隆二と付き合って1ヶ月程度だけれど、これから先もずっと一緒に居たいと思える人だ。

だけれど、結婚となると私達だけの気持ちだけで進むもんでもなく。

会社に秘密にしていることすら許されない。


「ここ座ってユヅキ」


手を差し出す隆二に引き寄せられるみたいにソファーに座った。

ギュッと私の手を握る。


「いきなりって思ってるかもしれないけど、じつはずっと考えてたんだ。結婚はユヅキしかいないって」


色々思うことはあるけど、目の前にいる隆二を信じる気持ちはちゃんとあって。

やっぱり嬉しいものだなぁーって。



- 14 -

[*prev] | [next#]

[TOP]