2.逃げ出してしまいたいと思ってしまう

「忠・・臣様」
樹里の口から出た声は酷く小さいものだった。
忠臣はそんな樹里を見ると「まさか、ここで再会できるとはな・・」と呟く。
その言葉に樹里はドキリとする。
どうして忠臣がここにいるのか・・それは自分と同じように死んだからではないか?
そう考えてしまう思考が嫌になってしまう。
「(どうして、忠臣様はここにいるのですか?)」
そう聞いてしまえばいいのに、口の中がからからに乾いていて上手く声を出せない。
それどころか、今この場の雰囲気が重くて苦しいと感じる。
叶うならば、早くここから離れたいがVoidollが来るのだと思うと動くわけにはいかない。
どうしよう、と考えているとだ。
「・・樹里」と忠臣が呼ぶ。
「・・何でしょう、か」
その声に恐る恐る忠臣の顔を見る・・そして、すぐに顔を俯かせた。
忠臣は無表情で樹里を見ていたのだ。
その瞳が、樹里を見る忠臣の表情が怖くてたまらないのだ。
「お前は・・。」
忠臣が何かを言う前に「樹里サン、オマタセシマシタ」というVoidollの声と共にVoidollが戻って来た。
樹里はその声にホッとする。少しだけ息が苦しくなくなったのもあるからだ。
Voidollは忠臣に気づくと「オヤ、忠臣サン・・ドウカシマシタカ?」と聞く。
「いや・・こやつと、少し話をしていただけだ」
「ソウデスカ・・ソレナラバ、モウスコシオフタリデオハナシイタシマスカ?」
そんなVoidollの言葉に樹里は慌てて「いっ、いえ!!」と言う。
自分でもとても失礼なことを言ったのは分かっている。
だが、今このまま忠臣と二人で話をするのは自分にとって気まずいものだ。
樹里はすぐに忠臣に頭を下げると「申し訳ありません・・!私はまだ用事があるのでお話はまた後日・・!」
そう言うとVoidollに「ぼっ、Voidoll様!お部屋の案内をお願いします・・!」と言う。
「・・・ワカリマシタ、デハ忠臣サン、マタノチホド・・」
「・・・あぁ」
そうして樹里とVoidollは忠臣と別れ、廊下を歩いていく。
忠臣はと言うとそんな二人の背中を見送りながら、移動をする。
「(あいつにはしっかりと話してもらわねばいけないことが多すぎるな・・)」
そんな事を思いながら。

「ホントウニオハナシシナクテヨロシカッタノデスカ?」
「・・はい、いいんです」
「ソウデスカ・・」
そう言う樹里の表情はどこか暗いものだった。
Voidollはそんな樹里を見ると、それ以上は先程の事について聞いてこなかった。
その心遣いに感謝をしつつ二人は少しの間廊下を歩く。
すると「ココガ樹里サンノオヘヤデス」とVoidollが近くの扉を示す。
「マダ、ヘヤノナカニカグナドアマリアリマセンガ、ホシイモノガアレバ
ワタシノホウデゴヨウイイタシマスノデゴアンシンクダサイ」
「・・何からなにまでありがとうございます」
「イエ、コレモワタシノヤクメデスカラキニシナイデクダサイ」
するとVoidollは「デハ、ワタシハホカノミナサンニ樹里サンノコトヲ
オツタエシテキマス」と言う。
それを聞いた樹里は「それなら、私もご一緒します・・!」と言うが
「イエ、樹里サンハオヤスミニナッテクダサイ」とVoidollは言う。
「ですが・・」
「キョウイチニチ、アナタニトッテイロイロナコトガアリマシタ
ムリヲスルノハアナタノカラダニモヨクアリマセン・・ナノデキュウソクヲトッテクダサイ」
そう言われると樹里は何も言えなくなる。
確かにここで無理をしても自分の身体が辛いだけだ。
「・・分かりました、お言葉に甘えさせていただきます」
「エエ、ユックリオヤスミニナッテクダサイネ」
そう言うとVoidollは廊下を進んでいった。
樹里はそれを見送ると扉を開けて自分の部屋に入る。
部屋の中はVoidollの言った通りあまり家具の置かれていないシンプルな部屋だった
寝るためのベッドや机、そしてライトがあるぐらいだ。
「(・・何を置こうか考えておかないと)」
そんな事を考えながら樹里はベッドに横になる。
すると、やはり疲れがあったのか段々と眠気が樹里を襲う。
今日はこのまま眠ろう、そして朝になって他のヒーローの人達に自己紹介をしなければ。
「おやすみなさい・・。」
小さく呟くと、樹里はそのまま眠りについた。

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