1.始まりと受け入れたくないもの

フワフワとする感覚が続く中で少女は目を覚ました。
「・・・ここは?」
まだボーッとする頭で自分の事を思い出す。
「(私は・・確か、戦場で戦っていたはず・・。)」
そう思いだした直後、少女はハッとする
「そうだ・・私は、確かにあの時・・」そう呟いた直後だった。
「メガサメマシタカ?」と突然そんな声が聞こえた。
バッと前を見るとそこにはフヨフヨと浮きながら少女を見るロボットの姿があった。
「・・・貴方は、誰ですか?」と少女が聞くと
「ワタシハ コノセカイ・・コンパスノカンリニン Voidollトモウシマス」とロボット・・もといVoidollは言う。
それを聞いた少女はコンパス?管理人?と色々と疑問が浮かんだが、先に自己紹介をした方がいいと思いVoidollに続くように自己紹介をする。
「・・私は、本宮 樹里と申します。ある軍に所属していた・・呪術師です」
樹里がそう言うとVoidollは「アナタハ コノセカイ二 クルマエノコトヲオボエテイルヨウデスネ」とそんな事を聞いてくる
樹里は一瞬、驚いたような顔をするがすぐに「・・・はい」と頷いた
Voidollの言う通り、この世界に来る前の記憶を樹里はしっかりと覚えている。
だからこそ、覚えているからこそ樹里はどうしてこんな所にいるのか分からないのだ。
どうして、あの時・・"死んだ"はずの自分がここにいるのかを。
「Voidoll様・・・ここ・・コンパスというのはどういう場所なのですか?死後の世界なのですか・・?」
「・・・クワシイコトハ ワタシハイエマセン・・デスガ ヒトツイウトシタラ、コノセカイハ アナタニトッテ アタラシイジンセイヲハジメル
セカイトオモッテクダサイ」
Voidollの言葉に樹里は「そう、ですか・・。」とだけ言って黙ってしまった。
その反応を予想していたVoidollは「スグニ ウケイレナクテモイイデス ユックリト ウケイレテイタダケレバ」と言う
樹里はコクッと静かに頷いた
Voidollはそんな樹里を気にしつつ「ワタシ二 ツイテキテクダサイ・・モクテキチ二ツクマデニ コノセカイノコトヲセツメイシマスノデ」と言う。
「・・・分かりました」
そう言って樹里はVoidollの後ろをついていく。
歩いている間にVoidollは樹里にこの世界の事を説明した。

・この世界では『ヒーロー』と呼ばれる存在がアリーナという場所で協力して戦う。

・ヒーローにはそれぞれロールというものがあり、アタッカー、ガンナー、スプリンター、タンクの4つで分かれている。

・樹里その中でアタッカーのヒーローとして戦う。

・またヒーロー達は皆Voidollがこの世界に連れてきたのだと。(樹里を含む)

その説明を聞いた樹里は「・・協力して戦うという事は、他のヒーローの方々もいるのですか・・?」と聞く。
「ハイ イマムカッテイルバショ二 ミナサンクラシテオリマス」
「そう、なんですか」
「モウスコシシタラツキマスヨ」
Voidollの言葉通り、しばらく歩くと前の方に建物らしきものが見えた。
あそこがVoidollの言った他のヒーロー達が住んでいる場所なのだと樹里には分かった。
そして、建物の前につくとVoidollはドアを当て「ハイッテクダサイ」と言う。
樹里はその言葉に従い建物の中に入った。

「マズ 樹里サンノヘヤヲアンナイシマス ナカノアンナイトヤホカノヒーローノミナサントノ アイサツハソノアト二シマス」
「はい、分かりました」
その言葉に頷きつつ、廊下をVoidollと一緒に歩いていると樹里は少しだけワクワクしていた。
この世界の事は受け止めきれていない、それにまだまだ分からないことや知らないことも多い
だからといっていつまでも暗い事を考えていてはいけないと樹里は思う。
「(Voidoll様も受け入れるのはゆっくりでいいと言ってくださった・・焦らなくていいんだ)」
そんな事を考えながら、時々Voidollと話をする。
そうしていた時、ふと後ろの方から「おーい!Voidollー!」と誰かの声が聞こえた。
どうやらVoidollに用事があるらしくその声の人物は「ちょっとこっち来てくれー!」と言っている。
「カピッ・・。」
「・・私はここでお待ちしておりますので、Voidoll様は行ってください」
「・・・デスガ」
そう話してる間も「Voidollー!」と呼ぶ声は聞こえる。
Voidollは少し考えると「スグモドリマス」と言って声の人物の方へ向かった。
樹里はVoidollが戻るまで、時間を潰そうと窓の外を見る。
「(・・・やっぱり、見慣れない景色だ)」
窓から見える光景は樹里が今まで見たものとは違いすぎて、驚かせるには十分すぎるほどだった。
そんな光景を見ていると、ふと樹里の耳に足音が聞こえた。
一瞬、Voidollが戻って来たのか?と考えたがVoidollは浮いて移動するため、それはないとすぐにその考えを打ち消した。
そうなると、他のヒーローの可能性が高そうだ。
「(怪しまれない・・かな)」
樹里は今日ここに来たばかりの存在だ、他のヒーロー達からしたら見知ぬ人物。そんな人物がいたら怪しんだり警戒するのは当然だ
「(もし何者かと聞かれたら新しく来たものですって言わないと・・。)」
そう決め、足音の人物が近づくのを待つ
一体どんな人だろうか?Voidollのようにああいう姿をしている人物か?そんな事を考えていた時だった。
「・・・何奴だ」
そう問いかける声を聞いた瞬間、樹里は目を見開いた。
どうして、どうしてここに『いない』と思っていたはずのあの人の声が聞こえるのか?
「(違う、気のせいだ・・そう気のせい)」
そう思いながら樹里はゆっくりと声の人物の方に振り向く。
そして、その人物を見た時樹里は声にならない声で「どう、して」と呟いた。
そこにいたのは
「・・・久しぶり、だな」
樹里がこの世界に来る前に所属し、戦いを共にした妖怪軍総帥 桜華忠臣だった。
自分と違い、『生きている』そう思っていたはずの。

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