復讐という名の贖罪を/狼ゲーム・ユキナリ | ナノ


運命を左右するもの  




突然、トウリ達の目の前に何枚かのカードが配られる。
「さぁ、カードを選べ・・お前達の運命を左右する大切なカードだ」
ウルフのその言葉にトウリは驚く。
「(運命を左右するって・・何それ)」
その意味が分からないまま、カードを引く。
そして引いたカードを表にするとそこには羊の顔が描かれていた。
「(羊・・・?)」
皆が自分の引いたカードを見ている中、ウルフは説明を始める。
「今、お前達に配ったカードは2種類ある、羊のカードと狼のカードだ」
「突然だが、狼のカードを引いた者は・・・羊を一匹殺せ」
ウルフの言葉に帽子を被った男性が「殺せ・・だと?」と呟く。
だがウルフはそれを無視し、説明を続ける。
「そして狼が羊を殺した12時間後に狼裁判を開く、そこでお前らに狼が誰なのかを推理してもらう」
「そして、誰か一人を選んで処刑しろ」
^処刑"という言葉にトウリは「えっ・・・」と呟く。
処刑・・それはようするに自分たちの手で誰かを裁かないといけないという事だ。
「無事狼を処刑することができたら羊側の勝利、この建物から出るための脱出の扉が開く」
「つまり、狼になった者は生き残るためにバレないように羊を殺す。羊側は狼を見抜いて脱出の道を開く・・お前たちはお互いの命をかけて脱出を目指すんだ」
そんなウルフに眼鏡をかけた女性が「もっ、もし狼が羊を殺さなかったらどうなるの・・・?」と聞く
するとウルフはサラッと「その場合は命令違反として狼は無条件に処刑される」と答えた。
どちらにしても、自分達には『殺す』か『殺されるか』の二つしか残ってないのだと分かった。
「これで全ての説明は終了だ」
そう言ったかと思えばウルフとメリーはすぐにいなくなってしまった。
二体がいなくなると小柄な少女が「クソッ!誰が何の目的でこんな事を!」と叫んだ。
確かに、未だに自分達がここにいる理由さえも分かっていない。
それも気にはなるものの、ウルフから説明されたゲームのルールが頭の中から離れずにいた。
すると、派手な髪色をした青年がふとこんな事を言った。
「狼を処刑したら脱出の扉が開くって言ってたね♪そこでなんだけど・・・今回の狼って誰?」
誰もその質問に答える者はいなかった。
それはそうだろう、羊を殺す狼と殺されるか狼を処刑するかの羊。
あのカードを引いた時点でその二つに分かれてしまったのだからこうなるのは当然だ。
簡単に自分のカードが何だったのか言えるはずがない。
少し重い空気が広がっていくのを感じる。それが息苦しいと思い始めた時だった。
「こ、こんな暗い雰囲気じゃあかんて!」と赤いリボンの付いたヘッドレスをした少女が言う。
「とりあえず、皆で現状を整理した方がええんちゃう?」
その言葉に帽子を被った女性が「確かに状況が分からないことには何も分からないし・・」と呟く。
皆、その意見に賛成なのかそのまま部屋を出て移動をした。

部屋を出るとさらに奇妙な部屋が続いていた、一言でいうと不気味それに尽きる。
皆がその部屋を見回す中、トウリは「ねぇ皆!」と全員を呼ぶ。
「とりあえず、自己紹介しない?お互いの名前が分からないと色々と大変だと思うし」と提案をする。
その提案に皆「確かに・・・」と頷くと、それぞれ自己紹介を始める。
先程、自身を警察と名乗った大柄な男性は小島タケオ
眼鏡の女性は弁護士をしている海堂ミホ
帽子の女性は大手週刊誌のジャーナリストである高山マキ
赤いリボンの付いたヘッドレスの少女は森ミサキ
派手な髪色をした青年は飯田リンタロウ
ノートPCを持った青年は新村コウ
セーラー服を着た女性は小宮チエ
小柄な少女は神木リツ
帽子の男性は俳優の土屋タクヤ
白衣の男性は精神科医の米森サトル
眼鏡の男性は中学校の国語教師である永井オサム
そしてトウリの友人である霜月ユキナリと
まだ見習いだが探偵の皇 トウリ
計13人の自己紹介が終わるとタケオが
「ちょっと皆・・俺の話を聞いてくれないか」と言う。
「さっきも言ったが俺は警察だ、君たちの安全は俺が守るから安心してくれ」
その言葉にマキが「警察の人がいるなら安心だね・・。」とホッとする。
周りも少しだけ安心したようにするが
「まぁ、アンタが狼って可能性もあるんだけどな・・」とコウが言う。
その言葉にタケオは「何だと!!そんなわけないだろうが!」と反論する。
しかし、コウの言葉に続くようにリツが「じゃあそれを証明できんの?」と聞く。
タケオは怒りからか肩を震わせながら「お前ら、いい加減に・・。」と今にも殴り掛からん勢いで言う。
すると「まぁまぁ♪そんなに熱くなっちゃ駄目だよ〜」とリンタロウが間に入って来る。
「喧嘩なんてしたらゲームの主催者の思うツボじゃないかな♪」
そんなリンタロウの言葉が効いたのか二人は不満そうにしつつも喧嘩をやめた。
すると二人の喧嘩に耐えれなかったのかミサキが「みっ、皆仲良くしようよ!皆で力を合わせたらきっと出れるよ!」と言う。
がリツはその言葉に「そういうフラグ立てるやつって早めに死ぬよね〜」と茶化す。
ミサキは「フ、フラグ!?」と驚くが「と、とにかく仲良くしようや!」と言った。
それを聞いたトウリも「仲が悪いよりはお互いに仲良くなった方が脱出の道も見つかると思うなぁ」と言う。
しかしタクヤは「仲良くするにも狼は誰かを殺すかもしれないだろ?」と言う。
それを聞いたマキが「まさか本気で殺そうとか思ってないでしょ!」と反論するが
そこに「でも狼も羊を殺さなければ処刑されるんだろう?」とサトルの言葉が付け足される。
「まぁ、あのふざけた人形の言う事が本当ならな」とコウも付け足すが
チエの「じゃあ、やっぱり狼は本当に誰かを殺そうとしてくるかも・・」と言う呟きに皆何も言えなくなってしまった。
誰もが言いようのない不安を大きくさせる中、サトルがこんな提案をする。
「こうしててもどうにもならない。建物の中を探索でもしてみるか?」
その提案にリンタロウは楽しそうに「そうだね♪探索楽しそう」と頷く。
それを聞いたタケオも「それなら単独で動くのは危険だ、それぞれペアになって探索エリアも分担しよう」と指示をする。
「でも13人だから1人余るわよ?」とマキがタケオに聞くと「どこかのペアに入れてもらうのはどうだ?もちろん、相談をした上でな」
そして各々がどこを探索するのか、誰とペアを組むのか話し合った結果。
1階をサトル・ミホ、コウ・オサム、リツ・タクヤ・トウリ
2階をチエ・マキ、タケオ・リンタロウ
3階をユキナリ・ミサキが探索することとなった。

ペアと探索場所が決まり、それぞれ別れる前にミホが言う。
「念のためだけど、皆注意してね。もう何が起きてもおかしくないからね。」
その言葉に何も起こらないと良いなと思いながら、皆自分達の探索場所へ向かっていった。


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