復讐という名の贖罪を/狼ゲーム・ユキナリ | ナノ


ゲームの始まり  




「・・・あれ?」
目を開けるとそこは暗い部屋だった。
電気が付いていなくよく見えないがそんなに広い部屋でない事は分かる。
とは言うものの何で自分がこんな所にいるのか皇 トウリには分からなかった。
ただ一つ分かるとすれば何者かに連れてこられたという事だけ。
「(一体誰が私を連れてきたんだろう・・)」
考えても答えは出ない。何かの事件に巻き込まれた可能性はあるがあくまで予想だ。
ともかく、このままここでじっとしていても何も始まらないと思ったトウリはゆっくりと椅子から立ち上がると電気をつけるためにスイッチを探す。
視界が悪い中、壁を伝いながら慎重に進む。
転んでしまったら大変だ、と思っていた時指先に何かが当たる。
形状からこれが電気のスイッチだと気づく。
トウリはすぐにスイッチを押して電気をつけた。
すると暗かった部屋が明るくなり、先程まで暗かったせいか
その光が眩しくて目を細める。
徐々に光に慣れると部屋全体が見渡せるようになった。
部屋の中にあるのは自分が座っていた椅子と部屋を照らす電灯と扉ぐらいしかなかった。
特に何もないと分かると部屋から出ようとドアノブに手をかけるがガチャガチャと鍵のかかっている音がした。
「すぐに出れるとは思ってなかったけど・・」
ため息をつきたくなるのをこらえ、まずは扉の鍵を探さないと・・と思った時だった。
ふと、扉に何かが書かれているのを見つける。
近づいてみてみると

『明るい光にこそ この部屋を出る鍵がある』と書かれていた。

「・・・光」
そのメッセージに書いてある光という単語、それを見てすぐに思い浮かぶのはこの部屋にある電灯ぐらいだ。
トウリはすぐに電灯を調べる。すると何かがそこにあった。
手に取ってみるとそれは鍵だった。
先程のメッセージ通りに探し見つけた鍵、という事はこの鍵を使えばこの部屋から出れるはずだ。
トウリは早速鍵を使い、扉を開ける。
ガチャという音がして鍵の開く音がした、そしててトウリはドアノブに手をかけるとゆっくりとドアを開けた。

部屋を出た先に見たものはまた違う部屋だった。
先程いた部屋よりも広い部屋、そしてそこには何人かの人間がいた。
扉の開く音に反応したのか、その人間たちは一斉にトウリの方を見る。
そしてその中にいたセーラー服の女性が「誰か来ましたよ!」と言う。
トウリはその反応を見て、この人たちも自分と同じ状況なのかもしれないと思った。
「皆さんも、私と同じような状況の人たちですか・・?」そう聞くと
ノートPCを持った青年が「あぁそうだ」と答える。
するとセーラー服の女性がまだ開いていなさそうなドアを指さすと
「でも、まだあそこのドアが開いていないんです・・」と言う。
トウリはそれを聞いて自分を含めた人間の人数を数える。合計で12人・・開いていないドアの人物を含めると13人だ。
「(13人の人間がここに連れてこられた・・いったい何のために?)」
何か理由があるのだろうか、もしくは別の目的があるのか。
そんな事を考えていると、ふと最後のドアからガチャッと鍵の開く音がした。
そしてゆっくりとそのドアが開いて中にいた人物が出てきたのを見た時、トウリは驚いた。
「ゆっ、ユキナリくん・・!?」
「えっ・・トウリ!?」
出てきたのはトウリの知り合いである霜月ユキナリだった。
まさかこんな所で会うなんて、予想なんてしていなかった・・のはユキナリも同じようで。トウリに近づくと
「何でお前がここにいるんだよ」という。
「私も分からないよ・・むしろこっちが聞きたいぐらいだよ」
とトウリが言うと「そうなのか・・」とユキナリは言う。
と、その時だった。

突然、不気味な声が部屋の中に響いた。
その不気味な声は
「えっ、えっと、皆さん!狼ゲームにようこそ!」
「はっ、早くそれぞれの名前が書かれた椅子に座ってください!」とその部屋にいた全員に言う。
だが、全員その場に立ち尽くしたまま声に従おうとするものは誰一人としていなかった。
当たり前だ、突然不気味な声にそんな事を言われたってそう簡単に言う事を聞く人間なんていないだろう。
すると、その様子を見た不気味な声は「ちょっ、ちょっと皆さん!言う事聞いてください!」と焦ったように言う。
それを聞いた大柄な男性が「いいからここから出せ!俺は警察だよ!」と言う。
が不気味な声は「警察だろうとここから出すわけにはいきません!」と返す。
すると今度はノートPCを持った青年が「じゃあどうしたら出れるというんだ?」と聞く。
不気味な声は言う事を聞かない全員にしびれを切らしたのかこんな事を言う。
「もぉ!言う事を聞かないなら罰を受けてもらいますよ!」
「10秒間だけ待ちますからね!」

その言葉通りに「10、9、8・・」とカウントダウンが始まった。
トウリは「罰」と言う言葉に嫌な予感がした。
「(あの声の言う事に従った方がいいんじゃ・・)」
そう考えている間にもカウントダウンは進んでいく。
「7、6、5・・・」
少しずつカウントダウンは0に近づいていく。
「4、3、2・・・」
「(動いた方がいい、そのはずだ・・!)」
頭ではそう思っていてもトウリの身体は動かない。誰もその場から動かないまま、ついに
「1、0・・!」とカウントダウンは終わってしまった。
不気味な声は「ルールを無視したので罰を実行します!」と言う。

その言葉の次の瞬間、トウリの身体に鋭い痛みが走った。
「うぁっ・・・!?」
その痛みはどうやら他の皆も受けているようで、その痛みにそれぞれ悲鳴をあげている。
「(早く、早く止まって・・・止まってよ!!)」
痛みで頭がおかしくならないように必死にそう願う・・。すると
数秒して鋭い痛みはピタッと止まる。
「止まった・・。」
やっと痛みから解放されたことにホッとしていると不気味な声が「これで命令に従う気になりましたか?」と言う。
すると突然赤いリボンのついたヘッドレスをした少女が「あ、あれ!」と中央のイスを指さす。
全員がそちらを見ると中央のイスにそれはいた。
そこにいたのは羊と狼のぬいぐるみだった。
一見可愛らしいぬいぐるみだが今はそれが不気味にしか感じられなかった。
その2体のぬいぐるみは「どうも皆さん初めまして!このゲームの主催者であるメリーと」「ウルフだ」と自己紹介をする。
そんな2体を見てセーラー服の女性は「きっ、きもい・・」と小さく呟く。
トウリも可愛いと思うよりむしろ不気味すぎて怖いという思いが今は勝っていた。
するとその2体にノートPCを持った青年は「おい!俺たちに何をした!」と聞く。
何をした、というのは先程の鋭い痛みの事だろう、あの痛みは普通では起こせないもの。
この2体によって何かされたと考えるのが妥当だろう。
メリーはその問いに「あ、アナタ達の脊髄神経にデバイスを取り付けさせていただきました・・!」と答えた。
その言葉に全員が自分の首の後ろを確認する。
すると、首の奥に何かがあるのを感じた。
「(これがデバイス・・・。)」
何でこんなものを付けたんだ、と思いながらどうにか取れないかと考えるが
それを見透かしていたのかウルフは
「無理やり取ろうとすると死ぬ可能性があるから気を付けろ」と言った。
その言葉を聞いてトウリを含めた全員はデバイスを取ろうとは思わなくなった。
「さぁ、早く自分の名前が書いてある椅子に座ってもらおうか」
今度は誰も逆らず、全員ウルフの言うとおりにして椅子に座る。
全員が椅子に座ったのを見るとウルフは
「最初から言う事を聞いていればよかったものを」と呟いた。
「(無茶言わないで欲しいなぁ・・。)」
トウリはウルフの言葉にそう思いながらじっと、椅子に座る。
そして、数秒経ってウルフは言う。
「それでは・・・。」
「今から狼ゲームを始める」

ゲームの始まりの合図を。


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