02.黄昏ホテル




少女の悲鳴にその人物は驚き「ひぃっ」と同じように悲鳴を上げる。
だが、それは少女も同じなようで慌ててソファーの後ろに隠れると「火の玉お化け…!」と怯える。
その言葉を聞いた人物は「おっ、おば…!」とショックを受けたのかその炎を青くさせる。
とはいうものの、少女をこのままにしておける訳もなくそっとソファーに近づくと「おっ、お客様…?」と声をかける…が。
「ひっ…!」
少女は怯えたままソファーの後ろでずっと震えている。
「(どっ、どうしよう…!)」
鉱も怯えられてしまっては自分ではどうにもできない。
どうすればいい…そう悩んでいた時だった。
「支配人!今の悲鳴は一体なんですか!?」
慌ててロビーに来た青年はその人物…もとい支配人に聞くと周りを見回す。
するとその青年を見た支配人は「阿鳥くん〜!!」と泣き出しそうな声で縋りついたかと思えば
「お客様が僕の顔を見て怯えちゃったよ〜!!」と言う。
『阿鳥』と呼ばれた青年は支配人の言葉を聞いて何かを察したのか、ため息をつくと「…分かりました、俺が何とかします」と言う。
それを聞いた支配人は嬉しそうにして「阿鳥くんありがとう〜!」と言う。
はいはいと流しながら阿鳥は少女のいるソファーにゆっくり近づくと「あの…お客様?」と優しく声をかける。
すると、少女がゆっくりと顔を出すのが見えたが…すぐに隠れてしまった。
それを見た阿鳥は「(完全に怖がっているな…。)」と心の中で呟く。
まぁ、頭が燃えている…という非現実な物を見れば怖がるのも当然ではある。
しかし、このままにしておく…というのはできな。
だが怖がっている相手にどうすればいいと考えていると「…あの」と小さな声が聞こえた。
その声が少女の声だと気付くと阿鳥は少し驚きつつも冷静に「どうしましたか…?」と聞く。
「…さっきの人とは、違う人、ですか?」
そう言っておそるおそると言った感じに阿鳥を見る少女に阿鳥は「はい」と頷く。
その言葉に少女は安心したのか、ゆっくりとソファーの後ろから顔を出して阿鳥を見る。
支配人が少女に近づこうとするが阿鳥の「(まだこっちに来ないでください)」と言うオーラを感じたのかしょんぼりしながら下がっていった。
「あの…貴方は、ホテルの人、なんですか?」
少女がそう聞くと阿鳥は頷き「はい、私は当ホテル従業員阿鳥と申します」と自己紹介をする。
それを聞いた少女は「阿鳥さん…。」と小さく呟くと「えっと、私は…。」と続けて自己紹介しようとするがすぐに口を閉じる。
どうしたのだろうと少女を見ていると「…名前が、分からないんです」と小さな声で呟くのが聞こえた。
少女のその声に阿鳥は「大丈夫ですよ、お客様」と優しく言う。
「このホテルにはお客様と同じような方が来ることは少なくありませんから」
「…えっ?」
その言葉に少女が首を傾げると同時に支配人が恐る恐ると言った感じで「あの〜」と声をかける。
その声に少女はビクッとするが阿鳥が側にいるからか、先ほどの様に悲鳴を上げることはなく
「な、なんでしょうか…?」と小さな声で聞く。
支配人は悲鳴を上げられなかった事にホッとすると「お客様にこのホテルの事をお話ししたいと思ったのですが、よろしいでしょうか?」と聞く。
その問いに少女は少し考えると小さく頷いた。
それを見た支配人は安心したようにして、ゆっくりと少女にホテルの事を話し始めた。

「あの世とこの世の狭間にあるホテル…?」
「えぇ、ここに来たお客様はご自身が生きているかも死んでいるかも定かではない魂でいらっしゃいます」
もちろん、貴方様もと言われた言葉に少女は戸惑いを隠せずにいた。
いま、自分がここにいるホテルはあの世とこの世の狭間にあるホテルで、それに加えてこのホテルに来る人は生きているかも死んでいるかも分からない魂と言うわけで。
「(信じられないというより…信じ、たくない)」
そもそも、今のこの状況もおかしい。だって頭が燃えている人間なんて実際にいるはずなんてないのだから。
「(夢であってほしい、出来ることなら早く目が覚めて…。)」
と、願ってみるが何も変わらず、これは夢でないということを改めて自覚させられる。
その事実に少女は軽くめまいを覚えるが、倒れるのだけはいけないと必死に耐える。
そんな少女を見て支配人は阿鳥に「お客様をお部屋に案内してくれるかい?」と指示をする。
それを聞いた阿鳥は「分かりました」と頷くと「お部屋までご案内させていただきます」と言って少女の前に立つ。
少女は頷いてゆっくりと阿鳥の後ろに着いて行く様に歩き始めた。


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