1.見知らぬ場所に一人




「・・・あれ?」
少女がはっと気が付くとそこは自分にとって見慣れない場所だった。
周りを見ても自分以外の人の姿はない、それどころか建物すらない。
唯一あるのは日が暮れ始めている空と地平線ぐらいで。
「どうしよう・・」
なぜ自分がここにいるのかが分からない。
自分は確か・・と思い出そうとするが何故か何をしていたのかが思い出せない。
それどころか自分の事も、ここに来る前の事も全て思い出せないのだ。
「(何も分からない・・・)」
そんな自分の状況に少しづつ不安が募り始める。
何でこんなことになってるのか分からない。
それでもこのままではいけない・・・。
「(とりあえず、誰かいないか探さないと・・。)」
少女はゆっくりとだが歩きはじめる。
もしかしたらこの近くにいないだけで歩いていれば誰かがいるかもしれない。
もしかしたら建物があるかもしれない。
そんな事を思いながら・・。

「なにもないなぁ・・。」
あれから歩き続けたはいいものの人の姿はおろか建物なんてない。
それに加えて同じ景色が続いてばかりで進んでいるのかすらも分からなくなる。
少しづつだが少女にまた不安が募り始める。
このまま進んでも何も変わらないのではないか?とそんな事を思いかけた時だった。
「・・んっ?」
ふと、目の前に標識らしきものが立っていた。
よくみるとそれには「ルテホ昏黄」と書かれており、少女は何だこれと思いながら首を傾げる。
「ルホテ・・って、何だろう・・・あっ!」
変な名前の所と思ったが、すぐに逆から読んだ方が正しいのだと気づく。
それを見た瞬間、少女には少しだが希望が見えた気がした。
「(もしかしたらここに行けば誰かに会えるかもしれない・・!)」
そう思うと先ほどまであった不安が一気に軽くなった気がした。
「早く行こう・・!」
そう呟くと少女は標識の示す先へ歩いて行った。

と、来てみたはいいもののそこには建物などなかった。
それを見て少女は酷く落ち込んだ。
折角希望が見えたと思ったのに、それを見事に壊されてしまった。
「もう、やだ・・。」
そう小さく呟いて、下を向いた時だった。
フッと地面に大きな影が現れ、少女に影が差す。
何だろうと思い顔を上げるとそこには先程はなかったはずの大きな建物があった。
「・・えっ?」
突然の事に少女は混乱する。
どうして先程まで何もなかったはずの場所に突然建物が現れたのか。
もしやあれは自分が見ている幻なのではないか?
そう思って建物を見てみるが・・どうあがいても幻には見えない。
異人館風の建物は時を感じさせつつも、綺麗なものだと思った。
そんな建物を少し、怖いとは思ったものの中に誰かいるかもしれない。
このまま分からない場所を歩き続けるよりはここを訪ねるのがいいかもしれない。
「よしっ・・」
小さく呟くと少女は建物のドアノブに手をかけて、ゆっくりとドアを開けて中に入った。

建物の中に入るとそこはロビーらしく、ソファーなど色々なものが置いてある。
また掃除が行き渡っているのも見てすぐに分かった。
「(綺麗・・・。)」
そう思いながらクルクルと室内を見ていると
「お客様でしょうか?」と声をかけられる。
突然声をかけられたことにビクッとしつつ、人がいたことに安堵し声の主の方を振り向く。
そして、ピタッと固まった。
当たり前だ、だってそこにいたのは・・・。
「ようこそ、黄昏ホテルへ」
どう見たって人間・・ではない、頭が燃えている(ような)人物だったのだから。
「・・・・」
「・・お客様?」
少女はしばらくその人物を見て固まったままだが、数秒後。
「いっ、いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」
という大きな悲鳴が建物内に響き渡ったのであった。


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