「――まあつまり、アナタは顔がいいので、親衛隊持ちに目を付けられることはないと思います。しかし、一応気をつけてくださいね。襲われたりすることが稀にあるので」
「へーぇ、なぁるほどね。まあ私はそこまで顔良くないし心配ないわよ」
「いや、充分に良いですが」
「酒代先生は普通に格好いいと思うわよ。それに比べて私なんて」
「……はあ、ま、取り敢えず気をつけてください」
「ええ、勿論」
「あ、あとですね。今、生徒会や親衛隊持ちがある一人の生徒に群がっているという非常事態なので親衛隊が荒れています。そこら辺も充分気をつけるように」
「あら、どういうことなの?」
「説明は長くなるので(面倒なので)省きます」
「今本音が」

 俺は一つ年下の教師、酒代の言葉に呆れた。どういうことだよこの学校。あいつ――上島、俺を騙しやがったな畜生。何が俺も勤めてるいい学校だぜー、だよ。いい学校はホモの巣窟じゃねえ。そして親衛隊なんてそんなもん存在しねえし学園を騒がす問題児なんていねーわ。激しくここを勧めた上島を恨みながら表顔では酒代に笑顔を向けた。そう、俺は色々検討した結果、俗にオカマと呼ばれる喋り方を使い始めた。結婚前提で付き合っていた彼女――ミカが死んで俺は誓った。もう恋愛はしない。俺にはミカだけで充分だ。まあだからカマなんだけどさ。カマに好き好んで近づく奴なんてよっぽどの物好きか興味本位しかいないから。そういえば大学生のときはダチはいたな、変わり者の。まああいつらは男だったし、結果的には女がドン引いて近付かなかったから成功ってことにしとく。
 でもここ男子校だしなあ。意味あんのかよくわかんねえけど女みたいな奴がいるということを聞いたし、気持ち悪いから近づかないだろ。あとウザがられるようにしよう。何て完璧な計画なんだ。なあミカ。
 それにしてもカマで話しかけたときの上島の表情はマジで笑えた。別にあいつにカマ口調で接しなくてもいいけど面白いし止められねえな。