「おい、三十七号、魔王様がお呼びだぞ」
「え…俺?」

 二十九号は俺の言葉に頷く。ま、魔王様が俺に何の用なんだ…? もしかして俺、何か気に障るようなことを…!
 全速力でアジト内を走り、一番偉い地位に就いていらっしゃる恐ろしく男前で視界に入れられただけで慄いてしまうほどのオーラを纏った方――魔王様の所へと向かった。エレベーターに乗りながら、ここ最近の自分の失態について振り返る。
 まず、俺たちの話からしよう。世間一般的に言うと俺たちは悪役だ。とは言っても、人を殺したり地獄に突き落としたりなんて非道なことはしない。例えば商店に並んでいる商品を盗んだり、人を騙したりだ。騙すってのも別に人生に支障があるほどのものでもない。
 しかしそれでも俺たちが気に入らないのか、潰しにかかってくる男がいる。それを人々は勇者と称え…ているわけでもないが、応援している人は少なからずいる。

「三十七号―、命令を下す」
「は、はい…っ」

 俺、三十七号は名前の通り下っ端も下っ端で、しかも目立たない。所謂平凡顔なのだ。
 滅多に直接お目にかかれない魔王様に、緊張しすぎて息が上手くできなかった。体が震える。
 ニヤリと笑った魔王様は、言葉を告げる。

「あの男を潰すことにした」
「ほ、本当ですか!」

 漸く邪魔者を排除することにしたのか。潰すって言っても勿論殺しはしないけどな。

「ああ、三十七号、――お前がやれ」

 ……え。

「お、俺ですか!?」

 絶対無理だろ! 何で俺!?
 目を見開いてじっと魔王様を見つめると、目を細める。はっとして口を閉じて背を伸ばした。

「そうだ。お前だけでは荷が重いだろうからな。俺も手伝ってやる」
「そ、そんな…! 魔王様の手を煩わせるわけには…!」
「俺がやりたいんだ。――お前はただ従っていれば良い」
「は、はい…」

 呆然としながら頷くと、魔王様は柔らかく笑った。それに顔を赤くして見惚れる。格好良すぎだろ魔王様…!

「つーことで、明日からここに住むぞ」
「はいっ……え?」

 紙を渡され、反射的にそれを受け取って見ると地図だった。そして魔王様のお言葉。
 す、…え、す、住む?