嫉妬する二人

会長×星矢/Lの曲線/恋人設定












「星矢、準備できたか?」
「あ、はい。大丈夫です」

 とある休日。会長職の引継ぎが終わり、漸く落ち着いた遼先輩。そして仕事を早めに終わらせた俺。二人とも余裕ができたということで、遠出することになった。まあ、遠出と言っても、街に行くくらいだけど――まあ、つまり、デートだ。今までは生徒会の仕事やらなんやらあって中々外に出られなかったから、楽しみだ。
 訊ねて来る遼先輩に笑って返事をすると、部屋を出る。俺はチャラ男の仮面をすぐさま被った。

「会長様、会計様、おはようございます!」
「おはよぉ」

 俺は頬を赤く染めて挨拶してくる可愛らしい子にへらりと笑みを浮かべる。昔と比べて、随分平気になったものだ。

「おい、俺はもう会長じゃねえよ」

 呆れた顔で言うと、はっとした顔になる可愛らしい子。気持ちは分かる。遼先輩が会長じゃないなんて――なんだか、実感がない。

「すみませんでした!」

 慌てて頭を下げると、走り去ってしまった。怒られるとでも思ったんだろうか。ま、怒るまではいかなくとも、不機嫌にはなっていたかもしれない。今までは。俺はこっそり笑う。

「何だってんだよ…、星矢、さっさと行くぞ」
「うん」

 俺も、さっさといつも通りにしたい。もういい加減チャラ男を演じなくていいんじゃないか、とも思うんだけど、それをこの男が許してくれない。ちらりと遼先輩を見る。曰く、俺のギャップにやられる輩が出て来るに違いない、だそうで。…そんなことないとは思うんだけど、遼先輩が嫌がるなら俺もそのままでいいかなと。そんなこと恥ずかしくて言えないけど。
 

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