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 俺たちは時々囲まれながらなんとか外へ出る。寮を出てバス停まで行く頃には、遼先輩はぐったりとしていた。会長会長と慕われる遼先輩が見られなくなると少し寂しく思っていたが、当分は大丈夫だろう。

「疲れた…」
「やっぱり人気ですね、会長」
「お前までやめろ…」

 バス停付近には誰もいないため、肩の力を抜いてくすりと笑いかける。俺の言葉に溜息を吐いた遼先輩は一転して笑みを浮かべる。

「そうだ、今日はどこに行きたい?」
「どこでも良いですよ」

 出掛けられるだけで嬉しいのだ。そう思いながら言うと、遼先輩は顎に手を遣る。

「じゃあ買い物でもするか?」
「……買い物ですか?」
「なんだその顔は」
「いえ、別に」

 ……遼先輩は高いものを平気で買って俺にくれそうだから、迂闊な発言はしないように気を付けよう。訝しげな表情の遼先輩に、はは、と乾いた笑みを浮かべた。
 そうこうしている内にバスが到着して、俺たちは乗り込む。遼先輩はバスに乗るのが初めてらしくて、きょろきょろと物珍しそうに中を見た。
 車で行くつもりだった遼先輩を説得して、バスにしてもらった。車で送ってもらうのは気が引けたし、バスの方がデートらしいからだ。ちなみにこのデートらしいという言葉で遼先輩はだいぶ揺らいでいた。

「乗り心地悪いな」
「そうですか? 普通のバスより快適ですけどね」
「これでか!? マジかよ…」

 「お前、尻は大事にしろよ」心配そうに俺の尻を見てくる遼先輩を無言で殴った。

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