残された道は現実逃避

(モヒカン受け/微ギャグ)










 カーテンの隙間から入ってくる日差し。雀の鳴き声や車の走る音。俺はそれらを見聞きしながら深い溜息を吐いた。超絶に嫌な朝だ…。
 所謂俺の家は転勤族というもので、今居るアパートも数日前に越してきたばかりだ。今日から学校なんだが、物凄く行きたくない。サボりたい。別に勉強が嫌だとか友達が出来るか不安とかそんな理由ではない。勉強は正直怠いし、今までも不良に属する分類で友達なんて同じような奴だけだったが、それでも学校に行くには行っていた。度々授業出ずに屋上で煙草吹かしてたけど。
 今行きたくない理由を作ったのは、先日まで通っていた学校で起きたことの所為だ。俺の転校が決まって、ある一人が最後に賭けでもしようぜ、とふざけたことを言ってきた。その時の俺はまさかこんなことになるとは予想だにしていなかったわけで、ノリノリで誘いに乗った。もう今ではマジで後悔している。あの時に戻りたい。
 俺はベッドから起き上がり、勢い良くカーテンを開けながら、あの時のことを頭に浮かべた。
















「で、何すんだ?」

 俺は欠伸を噛み締めながらオールバックの強面な男前な男――蓮に訊ねた。ニヤリとあくどい顔で俺を見る。

「ジェンガに決まってんだろ」
「最後までそれかよ…」

 蓮は賭け事で必ずジェンガを推して来る。いや、好きだから別にいいんだが……こいつ異常に強いから負ける可能性は高い。賭ける物にもよるなと思いながらもう一度欠伸をする。

「えー、トランプの方が楽しくない?」

 金髪に近い茶髪のポニーテールを揺らしながら峻が膨れた。隣でおい、と真っ青な髪の要が肘で峻を小突く。はっとした表情の峻は笑顔を浮かべて言った。「やっぱりジェンガにしよう!」……おい、顔を引き攣ってんだけど。
 何を企んでるんだと探りながら三人を睨めつけたが、皆素知らぬ顔をしている。……怪しい。しかし、ポーカーなどは兎も角、ジェンガは運だから如何様は出来ないだろう。こいつらそんなに頭良くないしな。俺も言えた立場ではないが。

「……よし、じゃ、何賭けるか決めるぞ」
「あー…、と。今月金ヤバイからどうすっかなー」
「あ、待て。お前が賭けるものは俺が決めさせてもらう」
「は!? なんでだよ!」
「だって最後だからな」
「そうそう」

 不公平すぎるだろ! 俺は舌打ちすると立ち上がる。髪をガシガシと掻きながら背を向ける。

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