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「止めだ止め」
「お前も俺ら三人の賭けるもの決めていいんだぞ」
「……え、ま、マジで?」

 振り向くと、皆一斉に頷く。その瞬間欲しい物が頭を駆け回る。特に蓮は金持ちのボンボンで、私物は高い物ばかり。その中に凄く欲しい物があったのだ。それに非売品コレクターの要やゲーマー峻の私物にも目をつけていた物がある。これから離れることを考えれば、この機会を逃すわけにはいかない。旨過ぎる話に、その時の俺は思わず乗ってしまった。
 ……結果は言うまでもない。途中までは調子が良かったのだが、緊張のあまり手を滑らせて崩してしまった。まだ賭ける物を聞いてすらいなかった俺ははっとして三人をみる。ニヤニヤとした悪魔三人は、俺にこう告げた。

「お前の髪型をモヒカンにする」
「…へ?」

 意味不明すぎて素っ頓狂の声が出た。も、モヒカン?

「な、何でだよ」
「万里に悪い虫がつかないように、俺たち考えたんだよ」
「わ、悪い虫…?」

 どうしようマジで意味が分からない。目を丸くしていると、峻に腕を引っ張られた。

「そうと決まれば今から美容院行くぜー!」
「ちょ、待て待て待て! 何も決まっちゃいない! そして納得していない!」
「だって負けたじゃん、万里」
「うっ…そ、それでも、だな」

 確かに誘いに乗ったのは俺だし、負けたのも俺。でも、モヒカンにするなんて。金を取られた方がよっぽどマシだった。

「よしレッツゴー!」

 い、嫌だぁああああぁぁ!









 ……ということで今の俺は赤髪のモヒカンヘアーだ。ピアスホールもこれでもかというほど開けられて、一人ずつピアスを俺に渡してきた。もうどう見ても俺引かれる格好だよこれ…。今までも遠巻きに見られることはあったけどさ…。
 ていうか家族もマイペース過ぎて皆似合ってるだとか盛り上がっていた。もうちょっと怒るとかしようぜ…。
 家族はそんな感じだったから拍子抜けしたが、近所の人に挨拶に行ったら皆青褪めていた。当たり前だけど悲しすぎる。子どもとか俺を見て泣き出したぞ。傷ついたぜお兄さんは…。
 だから学校に行きたくないのだ。ピアスも外したら駄目だとか言うし…。因みに毎日写メ送らないと学校に乗り込むからとか脅してきた。県外だし大丈夫だろうというのは蓮には通用しない。自家用ヘリがあるらしいからな。……今改めて思ったが、あいつら悪魔すぎるだろ。

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