手の平の温度

リクエスト:学園もので会長×美人副会長orチャラ会計or親衛隊長or脇役平凡
俺様会長×脇役平凡/性格男前

















 婆ちゃんが亡くなったため、実家に帰っていた俺。早く戻らないと授業に付いて行けないと慌てて戻った学園にはとんでもないくらい大きな台風が上陸していた。
 この学園は所謂王道学園で、同性愛が当たり前の世界だ。外部入学の俺には理解できない世界だが、将来家のために好きでもない女と結婚することを考えれば今のうちに好き勝手するというのは悪いことではない気もする。まあ、俺には関係ないことだから。俺は庶民の出だが、特待生として入学した。そのせいで金持ち連中からやんや言われるが、俺は金持ちになりたいわけではないし、家族が好きだから特に気にしていない。
 どうやら外部入学は珍しいそうで、この学園で絶大の人気を誇っているらしい生徒会連中も俺の顔を見に来た。ま、俺の顔がぱっとしないっていうんで、すぐに興味を失っていたけど。偉そうだし何だか色々罵倒してくる連中だったが確かにカリスマ性はあると感じた。顔だけじゃなくて、仕事もできるみたいだし。……と思っていたのだが。
 どうやら学園を荒らす台風に、生徒会連中が惚れたらしい。生徒会だけではない。学園の人気者がこぞってその台風に夢中なんだそうだ。それでも一応ちゃんと学園が動いているのは、風紀委員会のおかげらしい。
 ――そして、俺は学園を支えている風紀委員長と向かい合っている。

「はあ…大変だったんですね」

 俺が労りの言葉をかけると、風紀委員長の風中先輩は眉を顰めた。

「気持ちがこもっていないな」
「いや、そんなつもりはないんですけど…で、俺に何の用なんですか? そろそろ昼飯食いたいんですけど」

 入学してから何かとお世話になったので、彼とは結構親しい。風中先輩は溜息を吐いて、書類を読むときだけかける黒縁眼鏡を押し上げた。

「お前なあ…。ったく、まあいい。お前に折り入って――」
「お断りします」
「おい、まだ何も言っていないだろ」

 面倒臭そうなにおいがぷんぷんする。俺はもう一度嫌ですと断ったが、先輩が無視して話を進める。おいおい。

「お前にあのバカを説得してもらいたい」
「あのバカとはどちらさんですかね」
「泉田――泉田貴志だ」

 名前と顔が一致せず、眉を上げる。そして顔が一致した時、俺はげ、と顔を歪めた。泉田貴志。この学園の生徒の中でトップに君臨する男。つまり、生徒会長だ。

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