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 その時俺は何故か、今なら話を聞いてくれるのではないかと思った。だから恐る恐る俺は言った。

「…俺に、どうしてほしいんですか」
「あ?」

 俺の質問に金山は一瞬目を丸くし、考え込んだ。俺は調子に乗って言葉を続ける。

「俺が嫌いなら、関わらなければいいじゃないですか」
「嫌い?」

 金山は理解できないという風に聞き返し、眉を顰めた。そして気まずそうに視線を漂わせ、最後に俺を捉えた。

「…嫌いじゃ、ねえよ」

 はあ?
 目を見開いて、金山を凝視する。聞き間違いかと思ったが、金山の顔を見る限り、違うらしい。初めて聞く金山の俺に対する気持ちは、にわかに信じがたいものだった。

「嫌いな奴と、一緒にいるわけねえだろ。そんくらいも分かんねえのかよカス」

 カスとか言うから分かんねえんだろ! あと手加減してくれているにせよ、暴力振るわれるし!

「だから、もし次誰かに絡まれたら、すぐに言え。分かったな」

 何がだからなのか分からないが、とりあえず、絡まれたら金山に連絡しよう。もしかしたら助けてくれるかもしれない。うんうんと一人で頷いていたら、ガッと髪を掴まれた。そして上を向かされる。痛い。俺、最近よく髪を引っ張られるけど、大丈夫かな。この歳で禿たくない。痛みで涙目になる。ぱちりと金山と視線が合った。固まる金山。そして、その金山の顔が
落ちてきた。……えっ、ちょ、顔近い。そんなことを思っているうちに、何かが唇に触れた。ふに、とした柔らかい感触の正体を考えたくない。

「不細工な面してんじゃねえよ、クズが」

 そう吐き捨てると、金山は踵を返した。俺はあんぐりと口を開けて、数分間その場に固まっていた。
 少し暑さを感じる、良く晴れた日のことだった。



















fin.

このまま続けると短編じゃなくなるな、と思い、区切りました…!


以下、登場人物紹介です。



名前すらでてきてないイケメンよりな平凡主人公
財布の中が虚しい。

金山

不良。
カツアゲとか平気でやる。

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