後悔してももう遅い

平凡受け/シリアス/三角関係








 僕と相沢陸は同性でありながら、セフレという関係だった。更に言えば幼馴染だったが、家が近く、学校が同じというだけで、幼馴染は名ばかりのものである。喋ったことなど手で数えれるくらいだった。それに彼は小学生の頃から問題児で、今では暴走族だかなんだか知らないけど、不良の集まりの総長とやらになっているらしい。だから極力関わりたくなかったっていうのもある。
 何故僕がそんな彼と体だけの関係になっているのかと言うと、僕にも良く分からない。でもきっと都合が良かったんだと思う。自分に逆らわなくて、相談できる人もろくにいない、弱い人。しかもチビで体格も良くないから顔さえ隠していたら男って感じがしなかっただろうし。
 彼は単に同性との性交に興味があるようだった。彼の悪友が吹き込んだのかもしれない。男とヤるのは女より気持ち良い、みたいなこと。想像でしかないけど、男を抱くなんて道の外れたこと、簡単に出来ることじゃないだろうから、それなりの理由があるんだと思う。間違っても僕を好きだとかなんだっていう理由は存在しない。僕は顔も頭も良くないし、チビで頓馬だし、短気な彼の嫌いな部類だからだ。それに、僕は乱暴に抱かれた。僕は激痛でしかなかったけど、一人満足して後処理もせずに彼は去って行った。これで勘違いをしていたらかなりポジティブな奴か自意識過剰な奴だ。
 しかし。僕は彼に抱かれている内に彼のことを好きになっていた。いつだっただろう。彼が僕を見て笑ったのは。優しく抱いてくれたのは。その時から僕の頭の中は彼で一杯だった。最初は嫌で仕方なかったあの屈辱的な行為が、いつしか待ち焦がれるものとなっていたのだ。初めに優しく抱かれた日から、彼は僕を丁寧に扱うようになった。彼も、僕を好きなんじゃないかと期待した。でも、それは愚かな勘違いだったのだ。

「たまき…」

 情事の後、寝ている彼は言った。――たまき。女とも、男とも分からないような名前。僕は一瞬にして絶望した。僕を誰かと重ねていたのだ。


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