お前の一番に

ウォーキング・デッド/シェンリク/死ネタ/S2ネタバレあり/微ヤンデレ/独白











「本当に二人は仲がいいな」

 ある時同僚が言った。俺はその度、すごく誇らしかったんだ。お前には分からないだろうな、リック。お前の一番になれることがどれだけ凄いか。――嬉しいか。
 いつだって一緒だった。いつだって相談に乗った。いつだってその背中を撫でてやった。いつだって俺がお前の一番だったんだ。お前がローリと身を固めた時は、嫉妬だってした。でも俺は変わらず一番だったからいいんだ。だってお前はローリと衝突してばっかりで、その度俺に泣きついてきた。
 世界が崩壊して、リックが死んだと思ったとき。俺の世界も崩壊した。リックのいないこの世界なんて、生きた心地がしない。そんな俺が見つけたもの。リックの愛する者たち。ローリと息子のカール。俺は彼女たちを救った。リックの代わりに守った。愛した。
 ローリを抱く時、いつもリックの顔がちらつく。リックもこの体を抱いたのだと思うと興奮した。










 リック、なぜお前は生きて戻った。お前の最期を見たのは俺だったはずだ。俺だけのリックがあった。それなのになぜ。俺に夢中だったローリはあっさりと俺を捨て、リックのもとへと向かう。近寄らないで、だと。薄情な女だ。
 「シェーン」とリックが俺を呼ぶ。そのたびに俺は優越感を覚えていた。愛する者の座は譲った。だがリックが頼るのはいつだって俺だ。グレンでもダリルでもない。それなのにお前は、どんどん俺から離れて行く。俺の言うことに反発してくる。だから、殺そうと思った。お前が俺の傍にあるうちに。
 決行はランダルを農場から離れた場所に置きに行ったとき。だがウォーカーの群れに襲われ、殺すことはできなかった。それどころか俺は危険な目に遭ってしまった。バスの中で必死にドアを押されていると、リックがランダルを連れて車に乗っているのが見えた。おいおい、嘘だろ。リック、お前が俺を見捨てるなんて――。
 結局、リックは俺を助けた。俺はほっとした。リックは俺のことを見捨てることができないのだ。












 しかし、ランダルを殺すか殺さないかの論争の後に出て行ったデールがウォーカーに腹を引き裂かれたときだ。息も絶え絶えになっているデールの頭にリックが銃を突きつけた。さっさと殺してしまえ。ウォーカーになってしまう。早くしろと心の中で急かしていると、ダリルがリックから銃を奪う。そのまま頭に弾をブチ込み、デールは死んだ。
 俺はリックの顔を見て、血が引いて行くのを感じた。何だ、その顔は。何でダリルを見る。俺を見ろ。嫌な予感でいっぱいだった。嫌な予感は見事的中する。ランダルを解放する時の相棒に、ダリルを選んだ。二度目の世界の崩壊。お前の相棒は、もう俺ではない。
 胸をどす黒いものが占めていく。この感情がなんなのかどうでもいい。早くリックを殺さなければならないということの方が重大だ。だから俺はランダルを殺し、襲われたと嘘を吐いてリックを誘い出し、お前を――。
 だが殺されたのは俺の方だった。お前は俺を油断させ、ナイフを刺してきた。俺は避けられたはずだ。避けられなかったのは、これでお前の一番になれるかもしれないなんてことを考えてしまったからだ。
 俺が憎いだろう、リック。俺を恨め。俺を憎め。相棒の座も、愛する者の座も譲ってやったんだ。それなら俺にお前が一番憎む男の座をくれてやったっていいだろ。
 じゃあな、リック。俺は世界で一番、お前が嫌いで好きだったよ。













fin.


愛と憎は紙一重。
シェーンはリックに執着しているように見えました。
ちなみに私が一番好きなのはダリリクです。

[ prev / next ]