→3.御手洗に話しかける




「なあ、御手洗」

 俺は一と睨み合っている了に聞こえないように声を掛けた。御手洗は数回瞬きをして、どうした、と首を傾げた。

「都合よくお菓子持ってたりしない?」
「ああ、あるぞ」

 あるのかよ。早く出せよそれ。そう思ったものの、あからさまに目の前で渡されたものを了に見せても了が納得する筈ないし、仕方ないだろう。

「ほら」

 御手洗がポケットからチョコレートを取り出す。俺は小さく礼を言って、それを受け取……ろうとした。しかし、俺が取る直前でひらりと手がかわされる。

「な、…」
「やりたいんだけど、それ相応のものも貰わないと気がすまねえんだ、俺」
「……相応のもの?」
「なあ、チューしてよ」
「は?」
「そしたらやる」

 何言ってるんだ御手洗は。ニヤニヤと俺を見る御手洗に俺は少し眉を顰めた。しかし、ここでそのチョコレートを貰わなければ事は治まらない。俺は溜息を吐いて、御手洗に顔を近づける。その時だった。

「あああああー! 何してんの不良くん!」

 大声と二人の驚いた顔。御手洗は一瞬、ぴくりと体を反応させた。その隙にチョコレートを奪う。未だ騒がしく文句を言っている了にチョコレートを投げつけた。

「痛っ、え、ちょ、チョコレート?」

 ピンポイントで頭に当たり、了は何が何だか分からないといった表情で俺とチョコレートを交互に見る。

「一つだけあった。それで…いいだろ?」
「え、あ、う、うん…。何かあんまり納得いかないんだけど…まあいいや」

 しょんぼりした後に溜息を吐いた了に、罪悪感が少し芽生えた。…悪いな、色々、と心の中で謝罪する。

「あー…、少し残念、だったかもな…」

 御手洗の困惑した声が聞こえた気がした。









Happy Hllowen
玲緒END
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