→1.悪戯される


 結局、俺は諦めて悪戯をされることにした。

「…で、俺は何をされちゃう訳」
「そうだな〜。と、取り敢えず、二人きりになりたいな」
「ああ? 二人きりになる必要ないやろ! 何するつもりちゃ!」
「だって邪魔されそうだしー」
「……分かった。じゃあ俺の部屋行くか」
「わーい!」

 一体何をするつもりなんだよ。邪魔されるようなこと…? 暴力は了の性格からしてないだろうけど、不安だ。嬉々として後を付いて来る了を一瞥し小さく溜息を吐くと、部屋に入った。

「うわっ!?」

 急に背中に重みが加わって、体が前のめりになった。俺の腹に了の腕がしっかりと回っている。何をするんだ、そう文句を言ってやろうした時、肩に了の頭が乗った。

「了…?」
「千尋…。俺は、確かに千尋を邪険にしてたけど…でも…」

 どうやら、一の言葉を気にしていたらしい。そんなの、俺に対して気にする必要なんてないのに。それに俺と了は友達なんだ。そう思って、俺も案外ここの奴らに情が移ってしまってんだな、と苦笑する。

「もう気にするな、って」
「あ、…うん! じゃあ、じゃあさ、キスしてもいいかな!?」
「……え?」

 返事をする前に体を反転させられて向かい合うと、そのまま顔が近づいて、軽快なリップ音と共に離れていく了。え、俺、キスされた? 男に?

「あ〜もう、満足だよ俺。こんなときじゃなきゃ勇気でないってダサいよなぁ…」

 了は急速に顔を赤くすると両手で顔を覆ってしゃがんだ。いや、俺はどんな反応とったらいいの、これ…。キスなんて別に初めてとかじゃないし嫌悪感とかもないけど、え、これが悪戯? もしかして了はファーストキスだったのか? だから手頃な俺で済まそうとしたのかもしれない。それで、そんなこと知られるのは嫌だったから二人きりとか…なるほど、そういうことか。
 俺が納得して頷いているとどうやら復活したらしい了は、しゃがんだまま不思議そうに見上げる。良かったな、ファーストキスできて。何だか微笑ましくて、にっと笑うと了は目を見開いて再び顔を赤くした了が俺を凝視する。次いで照れたように笑ったのだった。


Happy Hllowen
了END
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