2014・即興忍足劇場20-30

☆即興忍足劇場20☆

「この後、どうするん?」
「どうって?」
「メシとか」
「う〜ん、そうだなぁ」
「汗かいたし、何なら跡部んとこのジムで風呂入ろかー?」
「跡部のトコ予約制だし。急じゃ無理っしょ」
「何のためにお前がおんねん」
「う?」
「そのVIPガード、今使わんでいつ使うん」
「オレ、別に家帰ってから風呂入るからい〜もん」
「俺らどないせいっちゅうねん」
「帰ってシャワー浴びなよ」
「大きい浴槽につかりたないんか?!」
「近所に銭湯あるし」
「ほな、そこ行こか」
「そこまで行くなら、家帰るっつーの」
「銭湯代、このオニーサンが奢ったるわ」
「あのねぇ。…そんなに行きたいなら二人で行けばいいし」
「何が楽しくて謙也と二人きりで裸の付き合いせなアカンねん」
「……忍足が温泉好きでマンションのお風呂キライなのはわかるけどさー」
「なら、銭湯付き合うてや」
「イトコに頼めばいいのに」
「謙也はどうでもええねん」
「………あっそ」
「な?銭湯代出したるし」
「それはどっちでもいいけどさ」
「!よし、OKやな?」
「ハイハイ。そんかし、財前の分も出してよ?銭湯代」
「おー、ナンボでも出したる。謙也がな」
「謙也関係無いとか言ってなかったっけ」

―テニスで一汗かいた後はお風呂でサッパリ!
商店街に程近い銭湯へ行くことになりました。
成り行きを見守っていた謙也くんはひたすら挙動不審になり、その様子を眺めていた財前くんはため息をついたんだとか。







☆即興忍足劇場21☆

「何でずっと下向いてんの?」
「な、な、何でもあれへん」
「お風呂、行かないの?」
「い、いい、行く、から。先に行けや」
「行くけどさ……なんなの、さっきから変だし」
「と、友達にメール打ってから行く」
「ふ〜ん。ま、いっか。じゃ、先に行く」
「お、おう」

ーガラガラ

「おージロー、ええ湯やわ」
「忍足、オッサンだし」
「謙也はどないしてん?」
「携帯いじってる。先行けだって」
「携帯、ねぇ」
「もー、なんなの?銭湯来てから急にモジモジして、わけわかんない」
「アイツはシャイボーイやねん」
「なんだよシャイボーイって……ったく、見られたくないって?」
「逆や。お前の裸がまともに見れんっちゅうー」
「ハダカとか言ってんなよ。変わんないっての」
「はっはっは、思春期の青少年やねんから」
「でたよオッサン……こっち正面から見ない割りには、背向けるとすっごく視線感じるし」
「エロ本をコッソリ見る心境いうヤツや」
「えろぼんとか言ってんじゃねーよ」
「謙也もまだまだやなぁ。見るなら真っ正面から、堂々とくまなく見んと」
「うるさいヘンタイ」
「はっはっは」
「……財前は?」
「先に洗う主義なんやと。ほれ、あそこ」
「………オレも先に髪洗ってくる」

―4人仲良く銭湯へやってきたものの、すぐさま脱いで中へ入っていった忍足、財前に対しジローくんは着替えにもたついた模様。
普段は素早いはずが、脱衣場でひたすら挙動不審な謙也くんは顔を真っ赤にして下を向いていたようです。







☆即興忍足劇場22☆

「はぁ〜いいお湯だったねー」
「寒っ…早よ帰りましょう。せっかく温まったのに風邪引く寒さやわ」
「うち近いから、すぐだよ」
「ほな行こーや」
「忍足たち、遅いな〜」
「待っててもしゃあないし、俺らは帰ってええやん」
「なぁにやってんだか」
「侑士さんはまだドライヤー中やろ。俺らと違ってちゃんと乾かさな、帰り道体冷えるし」
「だーから家帰って風呂入ればいいのにさ」
「そんなに遠いん?」
「忍足んちはねぇ、ここからだと自転車で10分くらいかなぁ。そんなに遠くも無いんだけど」
「近くも無いっスね。自転車なら」
「けど、二人とも自転車じゃないし」
「まぁ、ええんちゃいます?ここの銭湯くるて言い張ったの、侑士さんやし」
「う〜ん」
「?何」
「オレんち来そうな気がするんだよね」
「これから?もう夜やで?泊まるん?ジローさんの部屋、4人も寝られへんやん」
「もしくは岳人んち」
「あぁ、向日さん…そういや隣ですね」
「岳人んとこ行くならいーけどさ。遠いから泊めてくれーとか、家まで送ってやーとか言い出しそう」
「送れるワケないやん。駅まで見送れって?」
「オレんとこ兄ちゃんいるっしょ?今は実家暮らしじゃないけど。タイミングよく家にいれば、車出してくれることあるから。今いないけどさ、そういや忍足に言ってねーや」
「それ狙い?」
「そ。何回か忍足送ってったことあるんだよね。でも、『面倒くさい。明日電車で帰れ』ってなると、オレの部屋で寝て帰る…
…ったくあのメガネ、人んちホテル代わりにして、いつかシメるC」
「向日さんとこに行かんの?」
「岳人んちは車で送るーってのが難しいからさー。たまにおばさんが出してくれるけど。忍足もオレの兄ちゃんには言いやすいから、こっち来ちゃうんだよね」
「?向日さんも上の兄弟いませんでしたっけ」
「あそこはねーちゃん。岳人と忍足のねえちゃん同士仲いいから、色々バレんのが嫌なんだって。意味わかんねぇし。オレんち泊まっても岳人遊びにくるから、結局バレるのにさ」
「なんや面倒やな」
「困ったメガネだよねー。まだ来ないC」
「せやから行こうや」
「忍足はいいけど、あっちはどーしたんだろ」
「謙也さん?放っとけばええねん」
「のぼせてたし、大丈夫かなぁ」
「単なるアホや。気にせんでええですわ」
「う?」
「(じっと考え込んで、ジローさんが風呂あがるまでお湯から出れなくてチラッチラ覗き見して……ホンマ、いつからあんなにヘタレになったんやろか。しまいには42度の高温でのぼせて鼻血出すて、ありえへん)」
「財前?」
「謙也さんには侑士さんがついてはるし、問題ないやろ。行きましょう」
「……ま、うち来るかもしんないしね」
「『帰れ』てメール打っときます」
「あはは、じゃあオレも忍足にメールしとこーっと。『兄ちゃんいないから来ても無駄』ってね」
「謙也さん?」
「アホ眼鏡に決まってるC」

―どうせなら力石のごとく灰になった状態で脱衣所の椅子に腰掛け、扇風機の風をあびている謙也へメールしてあげてくれと思った財前くん。
しかしながらいくら慈郎くんからのメールとはいえその内容が『じぶんち帰れー!うち来るなよ、入れないC』だと、益々ヘコむのではないかと思わなくも無い。
やれやれ面倒くさい先輩だ。







☆即興忍足劇場23☆

『……』
「白熱した試合やったで!」
『…そりゃ良かったなぁ』
「目ぇキラキラさせて、ボール追いかけるとこなんて、も〜アカン!!」
『……何がアカンの?』
「可愛すぎて、どうしたらええかわからん」
『どうもせんでええねん。試合せえや』
「(無視)そんで、その後風呂に行ってん」
『ふろ?』
「芥川んちの近所に銭湯があってな、そこに皆で―」
『ほお〜、裸の付き合い言うヤツか。よぉ一緒に入れたな』
「気合やで!」
『(何のや…)中学の合宿ん時は、芥川クンと目ぇ合わせられんでオロオロしてたのになぁ』
「人は成長するモンや」
『…で、裸見て興奮して、倒れたん違うやろな?』
「た、倒れてはない」
『どもってんで。さてはのぼせたか?』
「なっ…」
『どうせ真正面から見れんと、熱いお湯にずっとつかって』
「白石、おまっ…見てたんか!?」
『なワケないやん。やっぱりそうか』
「何がや」
『鼻血でも出たんか?鉄分足りんのちゃうん。レバー食えや』
「レバーなんて食えるかい!さては侑士やな?!」
『はい?』
「あいつ、マジでしばく。何吹き込んでくれてん」
『アホ、ちゃうで。俺の単なる想像や。ていうか聞かんでもわかるし』
「なんやて!?」
『なぁ、もう切るで』
「まだまだ、全体の2割程度しか話してへん」
『今何時だと思とん……深夜1時、眠いし』
「冬休み!安心して夜更かしできるっちゅう話や」
『するならするで、何か別の有意義なことに時間使うわ』
「親友の相談にのる以上に有意義なことなんて、あれへん」
『何が相談やねん』

―ウキウキで銭湯から忍足家のマンションに戻った謙也くん。
侑士くんはとっくにベッドで就寝中ですが、興奮冷めやらぬ謙也くんは誰かに言いたくて仕方ない様子。
深夜だろうが何のその。20コール目でやっと出てくれた親友へ、ひたすら喋るのでした。







☆即興忍足劇場24☆

「ふーん。侑士、泊まんなかったんだ」
「泊まりはしなかったけどさ、結局うちに来た。兄ちゃんいないって言ってんのに」
「おばさんが車出したのかよ」
「まじまじ、あのメガネ、うちのお母さんをタクシーがわりに使ってくれちゃって」
「シメるか?」
「ぜってーシメる!」
「侑士んとこ行く?」
「行く!岳人もいこーよ」
「財前はどうしたんだ」
「こっちの友達と遊ぶから、出掛けてる」
「で、お前はひまだと」
「忍足をシメに行くから暇じゃないC」
「あっそ…。あ、でも侑士んち、イトコいるんじゃねーの?」
「財前と一緒に舞浜行った。共通の友達なんだって」
「舞浜?男だらけで夢の国にでも行くのかよ」
「しらな〜い」
「……で、アイツがいないうちに侑士んちに行くってか」
「別にそういうワケじゃねーけど、朝、忍足から暇だってメールきたからさ」
「じゃあアイツ、いま家?」
「さぁ。でもおばさんはいるから。さっきおばさんに、これから行くって言っといた」
「ま、侑士いてもいなくても関係ねぇしな」
「そうそう。部屋、めちゃめちゃにしてやるし〜」
「今回はどうデコレーションしてやっかなー」
「ぜ〜んぶピンクにする」
「フリフリ?」
「モコモコ」
「お姫様スタイル?」
「ロココ調」
「材料は?」
「エリナさんのヤツと、うちにあったやつ」
「よし、ねーちゃんのヌイグルミも提供しよう」
「う?そんなの持ってたっけ?乙女チックなのキライなのに」
「彼氏に貰ったんだと」
「提供していいの?ソレ」
「激しくいらん!くれてやる!!って、何故か俺の部屋に投げ捨ててきた」
「あ〜らら。カワイソー」
「ったく、黙ってりゃそこそこなのになー」
「テディベアとか、フリフリとか、似合うのにね〜黙っていれば」
「見た目とギャップありすぎだぜ。ま、とにかく、テディベアの行き先も決まった事だし」
「よーし、じゃ、行こ〜!」
「お〜!」

―メガネへのお仕置きと称して、イタズラしに行くことにしたジローくん。
おともに岳人くんを連れて、忍足のマンション突撃訪問をするようです。
侑士くんの部屋をピンクのお姫様スタイルに模様替えするらしい。







☆即興忍足劇場25☆

「…自分ら、何してくれるん」
「「おっかえり〜」」
「オイ岳人、ジロー」
「エリナさんも手伝ってくれたC!」
「……そのネーチャンはどこ行ってん?」
「デートなんだと。出かけた」
「弟の部屋にこんなアホなことして」
「うるせーぞ侑士。感謝しろ!」
「岳人、お前今度泊まりにきたら俺のベッドで寝かすからな」
「ふ〜ん。オシタリ、それまでピンクのお姫様部屋のままにしとくんだね〜」
「うっ…」
「おーし、わかった。ふりふりベッドでも何でも泊まってやろーじゃん。侑士、片付けンなよ」
「お前ら……ていうか何食うてんの」
「パンケーキ」
「ちょ、待っ…ま、まさかそれ、ATBファクトリーの抹茶パンケーキMIX!?」
「そだよ〜おいCねー」
「抹茶の味がちゃんとするし、高そーな味だな〜。よし、もう一枚」
「それを手に入れるためにどんだけネットで奮闘した思っとん!?」
「えー?しらねーし。キッチンにあったんだもん」
「そーそー。エリねーちゃんも食っていいって言ってたしなー」
「おばさんが出してくれたんだC」
「くっ、あの二人…!!」
「だいたい、オシタリが悪いんでしょ」
「何がや」
「ジローん家をホテルかタクシー代わりに使ってんだろ」
「シメるC」
「ちゃうって!それは、おばさんの厚意いうヤツで―」
「来んなって言ってんのに、来るんじゃねーよ。まじまじ、バカタリー」
「ええやん」
「よくねーだろ。ジローの兄ちゃんもいねぇのに」
「せやから泊まらせてもらおう思たら、おばさんが車だしてくれる言うて」
「泊まりは無理だって言ってるC!バカ!バカタリ!!」
「バカ言うな」
「じゃあアホー。アホタリー」
「くっ…ジロー、ええかげんに」
「エエカゲンにするのはお前だろ、侑士。今に跡部にシメられっぞ」
「怖いこと言いなや」
「跡部にメールしよーっと」
「どアホ!ほら、抹茶パンケーキもう1枚か?焼いたるから」
「キレイに焼かないと、跡部にメールするかんね」
「ハイハイハイハイ。アイスミルクティは?」
「いるー。でもミルクじゃないやつがいい」
「アイスティ?オレンジかレモン、どっちがええねん」
「オレンジー。輪切りで、シャリマティにしてー」
「岳人は?同じのでええか?」
「おー、何でもいいぞー」
「了解。二人とも、大人しく、大人しく、待て。間違っても跡部にメールなんて送ったらアカン」
「パンケーキの仕上がり具合と、アイスティ次第だな」
「そうそう。はやくしろーアホタリー」
「くっ…」

―ちょっとコンビニに行っていたら、いつのまに岳人・慈郎のチビっこコンビにマンション突撃され、部屋をこれでもかというくらい、可愛らしく模様替え。
在宅中のお姉さんもノリノリで手伝ったようで、その後はお茶タイムとしてレア物の抹茶パンケーキMIXを提供されてしまったそうな。
その後帰宅した謙也くんは、一心不乱に部屋の掃除と模様替えを行う従兄弟を奇異の目で見つめつつ、事情を従姉に聞き大爆笑しておりましたが、犯人の名前を聞いて硬直。
『なんで俺を呼んでくれんかったんや!?』
『アホ。舞浜から戻っても間に合わんかったっちゅーねん』
慈郎くんと岳人くんが抹茶パンケーキに舌鼓うっている間、謙也くんは舞浜でアトラクション行列に並んでいたらしい。
ちなみに財前くんは眉を寄せながら『ホンマ……勘弁して欲しいっスわ。何が楽しくて男だらけでこんなとこ』ぶつぶつ言いながらも面倒見がいいのか、先輩と友達に付き合ったそうです。







☆即興忍足劇場26☆

「「あ」」
「……」
「あ、芥川」
「なにしてんの?こんなとこで」
「こ、こんなとこて、コンビニやで。そりゃもちろん、ちょっとしたものを……あ、に、肉マン」
「忍足んちの近所にもセブンイレ○ンあるのに」
「あ、あこのマンションの、とこ、………特製豚マンが売り切れててん!」
「ふ〜ん。で、自転車で10分もかけてここのセブンイレ○ンまで来たんだ」
「つ、つ、ついでに、ホワイトエクレアも。侑士が買って来い言うて―」
「パシリ?」
「じゃんけんで負けたからしゃあないねん」
「フーン」
「近所のセブンイレ○ン、普通のエクレアしか無くて」
「あー、そういえばホワイトエクレア、どこでも売ってるわけじゃないもんね」
「!!そ、そうそう」
「ふ〜ん。邪魔してごめんね」
「え!?」
「じゃあね」
「あ、ちょっ、待っ…芥川!!」
「う?オシタリ待ってんでしょ。早く帰った方がいいC〜」
「いや、その……あ、ざ、財前はどないしてん。一緒ちゃうの?」
「昼まで一緒だったけど、その後わかれた。今頃高1で集まってる」
「高1?」
「そ。桃城と、切原と、神尾だったかな。あ、日吉もいるかも」
「なんや同い年の連中と遊んでるん?」
「テニスだと思うけどね。川崎で集合ーって言ってたから。あの辺、切原がよく行くコートあるし」
「あ、あ、芥川は、何か予定あるん?ていうか今、何してるん?」
「別に、ただブラブラしてるだけ。アイス買おっかなーと」
「さ、寒ないん?アイスて」
「寒いけど、アイスは家で食べるもん。コタツあるし」
「せやな…」
「じゃあね。オシタリによろしく〜」
「ちょ、ちょ、ちょお待ち!!」
「…なんだよ〜、何か用?」
「ひ、ヒマなら、お茶でも……ほんのちょっとだけでも、か、カフェでも」
「?お茶したいの??」
「お、おう」
「オシタリ待ってんじゃねぇの?ホワイトエクレア」
「侑士はどうでもええねん」
「(なんかその台詞、つい先日も聞いたような)」
「せ、せっかく休みで大阪から出てきてるし…それに、俺らじっくり話したこと、無いやんか」
「んー(話したこと無いっていうか、『会話』にならないというか)」
「ゆ、侑士と仲ええやろ」
「そりゃチームメートで5年近く同じ学校だC」
「侑士のと、友達とは、俺も仲良くしたいっちゅうことでな」
「……そんなモンかねぇ」
「そういうモン!そ、それに、財前とも仲ええやろ。こ、こ、後輩が、世話になってるしやなぁ」
「(ドモりすぎなんだけど)まぁ、そだね」
「侑士と財前だけやなくて、……俺とも仲良くしてや!」
「へ?」
「(…言った!!言うてやったで、白石ーッッッ!!)」


―慈郎くんちの近所のセブンイレ○ンにて。
始終どもっていた謙也くん、最後の最後できっぱり慈郎くんへ宣言し、お茶に誘った模様。
その後、天井見つめながら両手を握り締めワナワナしていた謙也くんを眺め、慈郎くんは軽くため息をつきつつ、ここで断ると後で伊達メガネにネチネチを言われるに違いないと予想。
しょうがないなぁと頭をポリポリかきながら、口を開いたようです。
さて、謙也くんへの返答はどうだったのでしょう?







☆即興忍足劇場27☆

―めっちゃ可愛い。目ぇパッチリ大きくあいてて、くりくりやねん。
しかも全然寝んと、起きてるなんて奇跡やん?こっからどうすればええの??
何話したら?どっと食いつくような話題、例えばでええから、早よ教え!

(誰がそんな報告せぇ言うたん。ったく、どないなっとんねん。
お茶に誘ってokしてくれたのは一歩前進やけど、何で携帯いじっとん、アイツ。
さっきからめっちゃトーク飛ばしてくるし。まさか芥川クンの前で携帯ずっといじってるんちゃうやろな)

―おい、既読になっとんで?!
返信してや。どうしたらスマートでかっこよくて、話し上手に場を盛り上げて―

(いつものマシンガントークでええっちゅうねん。何がスマートやねん。そんな要素カケラも無いやろ)

―どんな話題がいいかだけでも教えてや!

(自分で考えや、謙也。何を思春期の中学生みたいなことぬかしとんねん)

―白石!!頼む!このままやとちゃんと話できないまま終わる!

(終われや)

―なー、白石!携帯いじれないんか?電話すんで?

(アホか。好きな子放置して携帯いじって、さらに電話て。どないやねん)

―おい、白石!!
―謙也。お前、芥川クンの前で携帯いじっとんの?
―やっと返信したか!!
―聞けや。
―ちゃんとひざの上で操作してるし、ノープロブレムやで。
―プロブレムありすぎやろ。だいたい、話のテーマて何やねん。
―芥川が興味持って聞いてくれそうで、なおかつ俺のアピールもできる一石二鳥なテーマや。

(こいつ……本気で言ってるん?)

―早く!指示くれ!校内一のモテ男のテクをひとつ
―アホ。誰がモテ男やねん
―この前雑誌の街角スナップで撮られてたし
―それとモテ男、関係ないやろ
―あるっちゅうねん。スカウトにどんだけ声かけられてん
―興味ない
―せやから、モテ男の話術を教えろっちゅう話や!
―あのなぁ。俺、トークあかんやん。お前が一番知ってるし
―はい!?
―小春にもシュール言われて、金太郎にもおもんない言われて
―言われてみれば、そうやな
―携帯電源切るで?
―ちょ、ちょーっと、待った!あかん!話題が何も思いつかん
―いつも通りに喋ればええねん。共通の話題とか、あるやろ
―共通?
―テニスとか、侑士くんとか
―なんで芥川と侑士の話せなアカンねん
―話を広げる切欠やっちゅうねん
―侑士以外にしてや
―芥川クンとテニスして、財前と夢の国にも行ったんやろ?東京滞在中のこととか、大阪の話とか、なんぼでもあるやん
―なんで財前の話せなアカンねん
―せやから切欠言うてるやん
―他の男の話なんてアカンやろ

(アカン、理解せぇへん)


―急にピコーンと光った携帯を見てみると、怒涛のトークが東京から飛んできました。
見ればなんと二人っきりでお茶をしているとか。成長したなぁとしみじみした瞬間、一緒にいるはずなのに自分あてに大量の『どうしたら?!』なトークがとんできて。
そんなことをしている暇があるなら少しでもたくさん話せと言っても謙也くんは一人ではダメなようです。
誘った勇気をどこへやった。
そう思わずにはいられない白石君でした。







☆即興忍足劇場28☆

(あーもう、白石!何やっとんねん。さっきから『既読』になってんのに返信おっそいわ
共通の話題言うてもなぁ。テニス、侑士……はアカン。テニス、テニス。
テニス言うても、どないせぇっちゅうねん。どっか行く、誘う……どこなら喜ぶ??
スポーツショップ?……渋谷のアディ○スショップ、お台場のでっかいとこ……か、アミューズメント的なとこ。
どこならええの?
白石ーっ!!はよ、返事よこせや)

「………」

―謙也、ちゃんと話せてるか?
―さっきから百面相してる。しょっちゅう下向いてるし。
―下?
―多分、携帯いじってるんだろうけど、時々こっちみて固まる
―何やっとんねん
―オレ、帰っていい?
―もうちょお待ったって。謙也も今が頑張り時やねん
―何が頑張り時だよ。まったくさぁ。おめぇは何やってんだよ
―今?これから家出て本屋でも行こうか〜ってな
―ウチの近所の?
―新刊チェックやで
―おい。ヒマならこっちこい!イトコ引取りにきてよ
―二人きりのデートを邪魔するなんて、ようせんわ
―アホなこと言ってンなよ?メガネかちわるC
―暴力反対!
―も〜、ほんっと、しょーもない
―しょーもない言わんと。後でそっち引き取りにいったる
―あとっていつだよ
―本屋終わったら。どうせ公園のとこのケーキ屋やろ?
―そうだけどさ。この店、まさかオシタリが教えた??
―近所でも(女子に)人気のカフェ、と一般論を伝えただけやで
―男、オレらしかいないんだけど
―まぁまぁ、ケーキ好きなだけ食えばええねん
―もう3個目だC
―謙也のオゴリや。もう一個頼んどき
―はぁい……じゃ、アップルパイにしよ〜っと


正面の謙也くんがひたすらデーブルの下で携帯をいじっている間、その様子を眺めていた慈郎くんはケーキを頼んでは完食し、追加しては完食の繰り返し。
2つ目あたりから携帯を取り出し、素早く友達へメッセージを飛ばし実況中継さながらトークをかわしていき、ついにはケーキも4つ目に突入しようとしていた。
メガネが来るまで携帯ゲームしちゃおうかな〜。
アプリをチェックし出す慈郎くんでした。







☆即興忍足劇場29☆

「ふ〜ん、待つのキライなんだ」
「当たり前や。時間の無駄やっちゅうねん」
「無駄?白石みたいなこと言うねぇ」
「は?白石??」
「うん。別に待ち時間に限らずだけど『無駄は〜』って」
「な、何や?!いつアイツとそんな話を」
「中学の時から、しょっちゅう言ってるでしょ」
「せ、せやな、アイツの口グセか」
「でも、アトラクションとかご飯系に並ぶ時は『時間の無駄』とは言わないけどね」
「アトラクションて何やねん」
「?財前と舞浜行ってきたっしょ?あーいうのとか、大阪のUSJとか、そーいうの」
「アイツあまりそういうの行かんで?」
「??キライなの」
「人が仰山おるとこ苦手やねん。よぉナンパされるし」
「あ、そうなんだ。悪いことしちゃったかな」
「はい?」
「前付き合ってもらっちゃったんだよね〜遊園地」
「は?!い、いつ??」
「え〜っと、夏休みが富士急、その前がディ○ニーで、大阪行ったときもUSJ案内してくれたしなぁ」
「な、な、な、い、いつの話やねん!?」
「だから夏休みだって」
「大阪は!?」
「前の春休み。9ヶ月前くらい?かな」
「!!!!!」
「財前と、千歳と、あと石田くんもいたC〜。そういやオシタリ、いなかったね」
「ま、まさか3月後半…?」
「?うん。こっちの忍足はいたけど」
「ゆ、侑士?!アイツ、3月中旬くらいに大阪きたで??」
「うちの商店街くじ引きで大阪3日間ペア旅行が当たってさ、忍足がついてきた」
「何で侑士なん?!向日とか、宍戸とか、色々おるやんか」
「商店街でメシ食った時、チケット1枚オマケで貰ったんだけど、そんときに100円多く払ったのが忍足だった」
「(…またそんな展開かい)」
「アイツ、クジ引けるだけの枚数無いからオレが貰ったのにさ。いざひいて特賞出たら―」
「権利主張してきたっちゅう話か」
「そーそー。丸井くん誘おうと思ったのに、うるせーからさ。3月中旬に大阪里帰りしたくせに、また行くって聞かなくて」
「!!(丸井……!!ならまだ侑士の方が…)」
「まー、案内してくれるって言うから、じゃあいっかな〜って」
「それで、な、なんで白石たちとUSJ???」
「大阪行くってメールしたら遊ぶことになって」
「聞いてへん!!」
「だって家族で旅行してたんでしょ?」
「……あ」
「最初財前にメールしたら皆に連絡してくれたけど『謙也だけ旅行中』って」
「(くっ…な、なんでよりよってその時に)」
「結局、皆して『忍足』はとりあえずいるからオールオッケーって」
「オッケーちゃうわ!!」
「残念だったね〜。男だらけだけど、結構楽しかったC」

(聞いてへん!そんなん、聞いてないっちゅうねん。白石ーッッッ!!!)


―やっと会話のとっかかりを見出し、共通の話題としてホロっと出した自身の親友の話題。
なんとか話が続いたので謙也くんはうきうき、どきどきしながら頑張って話しておりましたが。
自分の知らない、親友たちとの『大阪』での出来事が出てきて呆然とする謙也くん。
さらに従兄弟も絡んでいるなんて、初耳です。
春休みを思い出して朗らかに笑う慈郎くんを前に、大阪の友らに問いただしたい気持ちでいっぱいに。







☆即興忍足劇場30☆

「どないなっとんねん、侑士!!」
「…何やねん、大声で怒鳴んなや」
「春休み!!お前、3月半ばにばあちゃんち来たのに、その後また来たんか!?」
「ばあちゃんちは家族的な里帰りで、後半は個人的な旅行や」
「何が旅行やねん!お前にとって大阪くんの、旅行ちゃうやろ」
「俺、今は東京在住やで?たとえ大阪でも、立派な小旅行」
「聞いてへん!!」
「言うてない」
「なんでや!!」
「家族でオーストラリア行っとったやろ。その期間に俺が大阪行く言うても別に会えへんし」
「言えや!!」
「言ったところでどうするん。ヤキモキするだけなら黙っといたほうがええな〜いう優しい従兄弟ゴゴロやで」
「芥川が来るて知ってたら、オーストラリア行かんかったし!!」
「アホ。おばちゃんがめっさ楽しみにしてる家族旅行やん」
「高校生にもなって家族旅行くらい、パス―」
「できるんか?」
「くっ…」
「毎年恒例の春の家族旅行やで?模試があっても受けんでええ言うくらいのおばちゃんが、旅行パスしようとする息子を許してくれる思とるん?」
「せ、せやけど!」
「お前んとこの春の旅行が強制なん、皆知ってるからやん」
「何が!?」
「オーストラリア行くんはどうしようも無いのに、ジローが大阪来るて聞いても悶々するだけやろ」
「うっ…」
「せやから黙っといてやろう言う優しさ?」
「いらん!」
「俺だけやないで。白石も、財前も、他の皆も同じや」
「…言うて欲しかった」
「知ってたらどうなん?せっかくのオーストラリア、楽しめたんか?出来んやろ」
「……」
「それに、ちゃんと土産貰たやろ?」
「…土産?」
「オーストラリアから帰ってきて、白石に何か貰わんかったか?」
「白石…?」
「大阪っぽいもの」
「あぁ、太郎のストラップか。ってアホか!何で大阪生まれ大阪育ちが太郎のストラップ土産に貰わなアカンねん」
「お、つけてないん?」
「当たり前や!たこ焼きかぶった太郎のストラップぶらさげる大阪人が、どこにおんねん!!」
「あれ、ジローとお揃いやで?」
「は!?」
「選んだんジローやしなぁ。謙也だけが来れんから何か土産買うかーってなって、ダメもとでジローに頼んだら、アイツがあのストラップ買うてくれたんやで?」
「何やて?」
「『大阪っぽいC〜』て嬉しそうに笑顔やったなぁ。今もジローの携帯についてるはずやけど」
「……」
「さすがにジローと大阪行ったの内緒やったから、誰からかは伏せた思うけど」
「…白石が、やけに真面目な顔で『大事なストラップや』言うて」
「せやで、大事で貴重やろ」

(あの太郎のストラップ、どうしたんやった…?
どシリアスな顔で、たこ焼きかぶった太郎ストラップを『大事なモンや』て渡されて、確か…
『何アホなこと抜かしとんねん』て投げ返したら、また渡されて……翔太が欲しがったから……あげた?」


―従兄弟がカフェに合流し、芥川が帰っていってからしばらく経って、春の真相を問いただす謙也くん。
先ほどまでお茶していた芥川の様子を思い浮かべ、そういえばいじっていた携帯には何かがぶらさがっていたようないないような。
もしかしてソレはたこ焼きかぶった太郎だっただろうか?
いや、太郎なら一発でわかるし、見たら見たでそのことに突っ込まずにはいられなくなるはず。
いやいや、それよりも白石に渡された太郎ストラップの行方だ。
しばらくは弟の携帯にぶらさがっていたはずだが、それからどうなった???







>31話〜40話

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