鳳長太郎 -慈郎先輩誕生祝のクラシック四重奏

*会話文




「ジロー先輩、ここ、いいですか?」

「あ、オオトリ〜。どうぞ〜」

「お誕生日、おめでとうございます」

「えへへ、ありがと〜」

「演奏、どうでした?」

「気持ちよかった〜」

「珍しく寝てませんでしたね」

「みんながせっかく弾いてくれてるのに、寝ないよ〜」

「あはは。ジロー先輩のための演奏ですしね」

「難しいことはよくわかんねぇけど、なんか優しくて、ふわふわしてて、温かかった」

「ありがとうございます」

「オオトリはピアノ、ずっとやってんの?」

「小さい頃から。最近はちょっと練習サボりがちですけどね」

「優しい音だった」

「え…」

「跡部のは、キリっとしてて一本筋が通った感じでしょ?」

「はい。跡部部長はオールマイティですね。高貴なバイオリンの音です」

「不二は響きがすごくキレイで、背筋がピシっとする音」

「きっちりしているけど、情感がこもっている素敵なビオラでしたね」

「幸村くんは、どっしりしてて、大きな木みたいだった」

「重厚な演奏で、安定感もあって、皆を包み込むような雰囲気でしたね、幸村さんのチェロって」

「みんな、すっげぇ〜」

「ジロー先輩も、ちゃんと聴いてたんですね」

「跡部んち来るたびに、クラシック流してあーだこーだ講義されるもん」

「ほとんと寝てません?」

「寝てるー」

「ダメじゃないですか」

「うとうとしてるー」

「一緒じゃないですか…」

「目は閉じてるけど、なんとなく音は入ってくるんだよ?」

「クラシック、どうです?」

「跡部ん家で聞く子守唄なかんじ」

「あはは。そうですね、部長の家くらいしか、聴かないですか」

「ていうか普段、音楽聴かない」

「何きいても寝ちゃうから、でしたっけ?」

「そうそう。眠くなっちゃうんだよねぇ」

「そんなジロー先輩が、今日は最後まで起きててくれたんですね」

「実はちょっと危なかったけど、岳人と宍戸にはさまれてたから」

「起こす係りですか?」

「うん。ウトウトすると、岳人に頭叩かれるし、宍戸はほっぺたぎゅってしてくるし」

「オペラ鑑賞会のときも、それやられたんですよね?」

「二人とも遠慮なしだC」

「宍戸さん、ジロー先輩が気になってオペラに集中できなかったらしいですよ」

「うっそだぁ。シシドだって頭クラクラしてたしぃ!」

「演目何でしたっけ?この前の新国立ですよね。2年生だけのやつ」

「ええと、何だったっけ……床屋さんがドタバタする話ー」

「セビリアの理髪師、ですかね」

「ラーラララララララララッラーラーってやつ」

「セビリアの理髪師ですね」

「次のオペラは続きって言ってた」

「秋のオペラ鑑賞会ですか?」

「うん。跡部が、この前みたヤツと同じ登場人物出るって」

「フィガロの結婚、ですね」

「また宍戸と岳人につねられるしぃ」

「起きましょうよ」

「それができれば苦労しない」

「あはは」

「ぜーってぇ休ませてくんねーんだもん」

「全員強制参加ですしね」

「跡部、まじ厳しーよ」

「2年の演目は跡部部長がきめてるんでしたっけ」

「しらな〜い」

「(確か、ニーベルングの時にジロー先輩が即座に寝て、それ以来どんどんわかりやすい演目になってるって聞いたことある気がー)」

「オレ、音楽も劇も寝ちゃうのにさー」

「部長、好きですし」

「そーそー。跡部の趣味なんだよねぇ。オペラ鑑賞会と、クラシック鑑賞会」

「クラシックも寝ちゃったんでしたよね」

「上演中に出たら終わるまで入れないって聞いたのに、入れちゃうんだもん」

「席立ったんですか?」

「うん。ロビーで休憩しようと思って」

「跡部部長がよく出してくれましたね」

「トイレ!っつって、出たの」

「あぁ、そういうことですか。氷帝貸切だから、そんなに厳しくないんですよね」

「そーなんだよ……逆にロビーのソファで寝ようとしたら、先生に見つかっちゃうC」

「普通のクラシック公演だと、一幕終わるまで入れないですからね」

「厳しいよね〜」

「そういうものだと教えられてきましたから、特には」

「よく行くの?クラシック」

「はい。たまに劇場で跡部部長にお会いします」

「オオトリは音楽、好きなんだね」

「はい!」

「宍戸も連れてってやって」

「お誘いしたことはあるんですけど、すぐ拒否されるんです。クラシックだと」

「そなの?このまえ、東京フィルの公演、行ってたよ?」

「え、宍戸さんがですか?!」

「跡部が皆連れてってた。オレは家族で外食だったから、逃れられたけど」

「東京フィル…」

「ちゃんと寝ないで全部聴いたって、自慢されたんだし〜」

「宍戸さんが…」

「今度、おぺれった?ってヤツ?があるみたいで、それも跡部が皆誘うらしいから、一緒に行ってみれば?」

「オペレッタですか。演目なんですかね〜」

「よくわかんないけど、宍戸は興味もってたから、行くと思う」

「ジロー先輩は?」

「オレは店番する予定〜♪」

「…行かないんですね」

「だって寝ちゃうもん。かわりにオオトリ、行ってきてよ」

「観たいです!でも、ジロー先輩も行きましょうよ?」

「宍戸が行くから大丈夫。オレの代わりに宍戸についてやって」

「はい!あ、いや、そうじゃなくてー」

「じゃ、跡部にオオトリ参加って言っとくね」

「よろしくお願いします。でも、ジロー先輩も」

「オレは店番あるし〜」

「…その言い訳で、跡部部長が納得したこと、無いじゃないですか」

「とりあえずは言ってみる」

「絶対却下されると思いますけどね」

「わかんないC〜」

「わかりますよ…」







跡部宅のティールームにて。
ダブルス大会が終わり、みんなで休憩!と甘いものとお茶で穏やかな時間を過ごす、5月5日の夕方。
『俺様が祝う部員の誕生パーティ』に華を添える4人の四重奏を聴き終え、なぜだかクラシック談義となった1年・鳳長太郎と本日の主役の姿が。






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オペレッタのプログラムは魔笛なんですよ、きっと。
跡部たまはあの手この手でジロたんを連れて行こうとするんです。

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