芥川家の場合



少し早いけど最近寒くなってきたからとコタツを引っ張り出してリビング隣の和室に置いてみた。
お母さんには呆れられたけど、それでもラグマットを敷いてくれて、『そこまで寒くないから』と薄めの掛け布団……というかタオルケットのような生地だけど、とりあえずそれをかけてみれば立派なコタツ!

冬場はいっつもコタツに入ってゴロゴロしながら寝たり、ミカン食べたり、テレビみたりとのんびりするのが大好きなので、もうちょっと寒くなればモコモコのコタツ掛けにチェンジできる。

早く寒くならないかな〜


なんて適当な歌を口ずさむと、決まって妹が『まぁたアホな歌うたって…もー、ゴロゴロしすぎ!ちょっとは動いて!!』なんていってぷんすか怒る。
リビングの掃除機がけ、窓拭き、キッチンに立ったりと、まだ中学一年生ながらおかーさんのお手伝いをよくしているので、せっせと雑巾かけている傍らで兄がコタツで始終ゴロゴロしているのが我慢ならないこともあるらしい。
(いつもは諦めて放っといてくれるんだけど、あまりにも動かないと、怒られるんだよね〜)

かといってオレもオレで、何もしてないワケではなくて、家事はしないけどお店のお手伝いはする。
お店のカウンターで椅子に座って、店番をするのはオレの役目。
一番上の兄ちゃんは既に社会人として独立していて、独り暮らしなので早々と家の手伝い云々からは開放されている。
家の中のことは三番目、お店のことは二番目、とお手伝いの役割分担は決まっているので、こうやって妹に怒られても反論できるっちゃできるんだけど…


『お店が休みの日は店番無いでしょ!でも、私は休みなんて無いもん。ジロ兄ィだけずるいし〜!』


土日ゴロゴロする夫を責める専業主婦のような台詞を最近言うようになったので、まぁ妹の言うことも最もだ、と逆らわないようにしている。
オレも一緒に掃除すれば済む話なんだけど……でも、コタツでゴロゴロしたいし〜。

結局は『店番って、寝てるだけでしょーが!!』と言われればその通りなので、妹には適わないんだ……毎朝起こしてもらってるし。


ということで妹のお願いは出来るだけ聞いてあげて、機嫌を損ねないように、イイお兄ちゃんでいるようにしています。



― 芥川慈郎、17歳、高校二年生。
可愛い妹は中学一年生。




「ねージロ兄ぃ、今度の文化祭、きてくれる??」


コタツで寝転がりながら漫画本読みつつ、極細ポッキーをぼりぼり噛み砕いていたらリビングの掃除機をかけ終えた妹が和室にやってきた。
今年から氷帝学園の中等部にあがり、さすがにテニス部ではないけれど約2年前にオレと岳人の通った中等部校舎は、いまや妹の校舎になっている。

高等部も場所としては同じだけど、ちゃんと区切ってあるから敷地内とはいえ別区画にあるんだよね。
共有スペースももちろんあるけれど、カフェテリアや食堂も高等部専用・中等部専用と分かれているから、校内ではめったに会わない。
シアタールーム、ホールといった大きな箱は幼稚舎〜大学部まで共有で使うけど、それこそ何か大きなイベントでもないと共通で使うことなんてないし、かといってそんなイベントで幼稚舎〜大学部までフリー入場可となっても人数が多すぎて全員なんて無理。
中等部・高等部の合同イベントなら別だけど、それでも中高併せたら相当な生徒数なので、たとえ中高で何かあるとしても妹と学校で遭遇することは難しい。
(たまに弁当忘れて、高等部の校舎まで届けてくれることはあるけどさ)

氷帝学園の文化祭は幼稚舎〜大学部まで、全て秋に開催される。
ただ、10月末〜11月にかけて時期は少しずつ違うから中等部と高等部では文化祭日程がかぶることは無いので、高等部文化祭に幼稚舎や中等部の生徒が遊びにくることは多い。
去年の高等部文化祭に、幼稚舎6年生だった妹とその友達で遊びにきたし、オレも幼稚舎の頃は岳人と宍戸と一緒に、当時、氷帝の高等部だった兄ちゃんの文化祭にお邪魔したもんだ。

兄ちゃんがオレのいた幼稚舎に来ることは無かったし、オレも妹が通う幼稚舎の文化祭に行くことは無かったので、基本的には年下連中が上の文化祭に行くのが通例なんだけどね。
(というか、オレの場合は幼稚舎の文化祭日程に遠征や大会、試合、と部活関連で基本的に行けなかっただけなんだけど)

なので、こうやって妹からでた『中等部文化祭のお誘い』に、ちょっとびっくり。
幼稚舎の頃、観に来て欲しいなんて一度も言ってきたことが無かったからさ。


「えー?どしたの?きてほしーの?」


最後のポッキーを噛み砕いてリンゴジュースで流し込んでから、寝転がっていた体を起こしてコタツに入ってきた妹へ視線を向けた。
普段あんまり甘えてくることがないし、どちらかというとオレのほうが甘えてる?
というか、すんごくしっかりしている妹で、色々と面倒や世話をしてくれるからか岳人や宍戸はしょっちゅう『どっちが年上なんだかな』なんて長年言われたりもする。
でもでも、一応お兄ちゃんなんだし!
妹のお願いはできるだけ聞いてあげたいので、文化祭来てといわれたらたとえ部活があっても何のその!


「友達にお兄ちゃん連れてきてって言われたんだもん」

「う?」


え。
カワイイ妹がお兄ちゃんに来て欲しい、じゃなくて、友達のお願い?
ええー?

が、続く妹の台詞はオレがぶーたれるのもしょーがないってくらい、ザックリと斬ってくれちゃって。


「…コレのどこがいいのかわかんないけど」

「なんだよ〜コレってー」


少し傷ついている兄の気持ちなんてお構いなしに、正直すぎる妹は用件だけさっさと述べて、一応の『お願い』をしてきた。


「いいから、何なら岳ちゃんと亮ちゃん連れてきてよ」

「えー?」

「いいでしょ、いっつも3人1セットなんだし」

「最近はそうでもねーよ?」


確かに幼稚舎〜中等部1年くらいまでは家が近いこともあってしょっちゅう一緒だったけど、中等部で互いに新しい友達も増えて外部生もたくさん入ってきたからか、幼稚舎の頃のように常に一緒にいるわけでもなくなっていった。
けれど妹の記憶では、いつでも三人一緒の幼稚舎〜中学時代がインプットされているらしい。
まぁ、特に岳人はお隣さんだし、大会や遠征のときはいつも迎えにきてくれてたからかもしれないけどさ。


「……じゃあ、最近のトリオでもいいから」

「う?最近のトリオ?」


『いっつも3人1セット』が岳人と宍戸となると、『最近のトリオ』ってなんだ?
氷帝だと跡部と一緒にいることが多い―ていうか、よく家まで送ってくれるから妹としても跡部は顔見知りだし、跡部といったら樺ちゃん…

あ、そっか。
跡部と樺ちゃんとオレってこと?

でもでも、跡部の車で送ってもらうけど、ほぼ車から出るときはそのままバイバイだし、跡部と樺ちゃんは車の中だし。
言うほど三人一緒ってワケでもないけどなぁ。



「ブンちゃんと雅くんとの1セットでもいーから」

「え、まるいくんと仁王?」

「最近よく遊んでるじゃん、このコンビ。わざわざ湘南から」


立海大付属高校テニス部の丸井くんと仁王とは中学時代からのお付き合い。
丸井くんとの出会いは中1の新人戦で、仁王は中2の練習試合、かな?
仲良くなったのは中2の冬、3年にあがる前の練習試合が切欠ともいえる。
中2の秋くらいから、たまに立海の練習みに行ってたんだけど(丸井くんのプレーウォッチにね!)、その練習試合で1年以上ぶりに丸井くんと試合した。
途中で寝ちゃったから棄権負けだったけど、丸井くんはそのときつけていたリストバンドを跡部経由でくれたんだ。
次の週に、再度立海の見学行って丸井くんにお礼伝えたら、『練習終わるまで待っとけ』といわれてフェンス越しでずっとプレーを見つめて、練習を終えた丸井くんと合流。
そのまま丸井くんオススメのケーキ屋さんでお茶したら意気投合。
携帯番号交換して、休みの日は一緒に遊んで、と一気に仲良しになった。
そうこうしているうちに他の立海生も入るようになって、切原やジャッカルが多かったけど、たまに柳生や柳、そして仁王も交じるようになったんだよね。
中3の秋になると幸村くんや真田が来ることも増えて、なんだか立海生の中に一人だけオレがいるのも変な感じだけど、もとはオレと丸井くんの回だからさ。

道に迷ってふらふらしているときに声をかけてくれた小学生がなんと真田の甥っ子で、以来なんだか世代を超えた友情?
たまに『ジロー、遊びにきて』と言われて真田の家へお邪魔する不思議な関係に落ち着いている。
最初オレが真田宅の縁側で寝こけていたら、部活から戻ってきた真田が心底びっくりしてたっけ。
けど、真田の甥っ子が『ジローは僕のお客さんだから』ってな感じでサラっと説明して終了。
真田も特にオレに何も言ってこなかったしさ。
けど、一緒になって真田をからかってると『コラー!!』なんて二人して真田に追いかけられることもある。

まじまじ、氷帝にいないタイプだから面白いんだよね、真田って。

そして真田の甥っ子と別に、迷子のオレを助けてくれたのはなんと仁王の弟。
最初は全然わかんなかったし、確かに仁王と名乗られたんだけど銀髪じゃないし、顔もそんなに似てないから気づかなかった。
今思えば雰囲気はちょっと似てるけどね。
あの時は仁王の弟も小学生だったけど、今は立海大付属中学の2年生。
テニス部では無いみたいだけど、兄貴が有名すぎるらしく、日々周囲が騒がしく面倒くさいと常に言っている。


確かに丸井くんも仁王も、他校生の中では仲良しのほうだけど、『最近のトリオ』と言うほどかなぁ。
まぁ、何回か2人が家に来たことはあるけどさ。
それでも、岳人や宍戸といるほうが多いと思うんだけど。
妹の中では丸井くん・仁王・オレの3人なのかな?


けど、高校生が中学生の文化祭行くモンなの?しかも他校の?
色々と制限のない高校と違って、中等部の文化祭はまだまだカタイものが多いしさ。


「えー?でも氷帝の『中等部』の文化祭だよ?まるいくんと仁王がきてもなー」

「だったらジロ兄ィだけでもいいよ」

「う?オレ一人で行くの?中等部の文化祭に?」

「ヤでしょ?だから、誰かとくればいいしー。岳ちゃんと亮くんダメなら、ブンちゃんと雅くん……何なら景吾くんでもいいし」


それ、跡部に言ったら落ち込んじゃうよ。
あいつ一人っ子だから年下―特にオレの妹や岳人の弟、樺ちゃんの妹を可愛がってるしさ。
『景吾くん、文化祭きて?』なんて言ったら一発なんだC〜。

すでに妹の文化祭に行くつもりではあるけど、やっぱり一人で行くのもなんだかなー
かといっておかーさんやおとーさんと行くのも何だかな〜。
岳人か宍戸かー、二人とも却下されたら跡部でもいっかな〜。
(『カワイイ妹のため!』て言ったら、100%くるだろうし)

なんて思っていたら携帯のランプがチカチカしたので画面を観てみたら、仁王からメッセージ。
はて、何だろう。


…ん?


!!


うっそ、まじまじ、タイムリーなんですけど。



「あ、ちょっとまって」

「……え?なによ?」

「仁王、文化祭行きたいって。招待券ほしーって」


びっくり。
じーっと一文字ずつ確認したけど、確かにメールには『中等部』の文化祭、と書いてある。
前にお誘いした高等部の文化祭はそれはそれで行く、とあるけど、それとは別に中等部の文化祭も行きたいらしい。
というか、一緒に連れて行ってくれ、とあるのでコレはお誘い?
それともオレは妹の文化祭に行くと思ってるのかなぁ?まぁ、行くんだけどさ。


「え、まじまじ?!やったぁ!じゃあ雅くんは決定ね!じゃあ先生に招待券追加でもらわなきゃ!」

「あ、ついでにもう一枚」

「え?岳ちゃんと亮ちゃん?」

「いや、仁王。弟連れてくるって」


意外にも仁王のメールには、『弟と一緒に行く』の一文があった。
めっずらC!
仁王兄弟って、仲いい・悪いとかは無いんだけど、二人で出かけるイメージがない。
丸井くんのところは弟2人がまだ小さいし、二人ともお兄ちゃんッ子だからベッタベタで、かっわいーんだよね。
休みの日はよく公園で弟の相手してるって言うし、丸井くんちに遊びにいってもチビっこ二人は丸井くんにじゃれついて、丸井くんも二人をぐりぐりして、すんごくほんわかしてる。
下のチビちゃんなんて、丸井くん家に泊りにいくと夜、『ジロくんと一緒に寝るー!!』って枕もって丸井くんの部屋に入ってくるんだよね。
そしたら上のチビちゃんも枕持ってきて、『ぼくもジロくんと寝るー!!兄ちゃん、じゃまー!!』って。
丸井くんのベッドって大きめだから二人でも寝れるんだ。
最初は下にお布団引いてお泊りしてたんだけど、オレも丸井くんもどちらかといえば小柄なためか、慣れてきたら『ベッドで一緒でいっか』と丸井くんが決めた。
オレは布団でもどっちでもいーんだけど、お布団出したりかたすのも大変だよね、ということでベッドで寝ています……これはさすがに誰にも内緒だけど。
跡部のベッドならちょーでかいから堂々と言えるけどさー。丸井くんのはセミダブルくらいだから。
オレは別にいいんだけど、丸井くんが『内緒だ』て言うからさ。
バレると切原や仁王にからかわれるから、恥ずかしいのか面倒くさいのか、その両方か……とりあえずは秘密。
ならオレが布団あげさげするよー?と提案したけど、それは何故か却下だった。

丸井くんのチビっこたちが部屋に突撃してくるようになってからは、結局は床に布団敷くことになったけどね。
布団にオレとチビっこ二人、ベッドに丸井くん。
『お前ら……どっちも兄ちゃんと寝てくんねーのか』なんて凹んだ丸井くんに、下のチビちゃんは『でもでも、ジロくんがいーもん』って正直!
上のチビちゃんが折れて、『しょーがないから、ボクが兄ちゃんと寝てやる』だって。カワイイよねぇ。
こういう時は、ベッドに丸井くんと上のチビちゃん、床の布団にオレと下のチビちゃん。
ただ、朝起きると不思議とオレの両サイドにチビちゃん二人がいることもあって、寝起きの丸井くんがいじける。

こんな感じで丸井くん兄弟は大の仲良し。
そして仁王のところは、弟が丸井くんとこより大きいってのもあるかもしんないけど、こんな感じではない。

普通の兄弟仲といえばそうなんだけどさ。
まぁ、高校生と中学生の男兄弟なので、『一緒に遊ぶ』ってのも無いんだろうけどさ。
(オレはよく兄ちゃんに遊んでもらったけどね〜。丸井くんとこと一緒で、年が離れてたってのもあるけど)

いまだに立海からの帰りに道に迷うこともあるオレを、何度か助けてくれた仁王の弟は、兄の仁王雅治とは外見よりも纏う雰囲気が似た感じ?
パっと見で、『何考えてるかわかんない』っていう女の子たちの評も、まぁしっくりくるかもね。
まぁ、仁王(兄)の場合は、『何考えてるかわからない』というよりも、実は『何も考えてない』ことが、よく遊ぶようになってわかったんだけどさ。
『悟らせんぜよ』なんて言っときながら中身は年相応でアホなこともやるし、負けず嫌いで、一緒になってバカみたいに騒ぐこともあるから、仁王に関しては他の皆が言うように『何考えてるかわからない』だの『クール』だの『ミステリアス』とか何とか、そういう印象を聞くとつい笑っちゃう。
(立海や氷帝の女の子たちが語る『仁王像』だけどね。男から見たら、また印象違うしさ)

仁王弟のほうはバッタリ道で会う以外、たまに仁王ん家で会うくらいだから、丸井くんところのチビちゃんたちみたいに一緒に遊ぶことが無い。
なので、仁王兄よりはわからない部分が多いかなー?

それが、仁王の中身を知る前の印象『何考えてるかわかんない』に、似た感じ、なのかな。
まぁ兄貴の中身がアレなので、弟ももしかしたら同じように外見の印象と違う部分が大いにあるかもしれないけどね。

丸井くんはよくチビちゃんたちこと話すけど、仁王から弟の話題が出ることが全然無いので、『一緒に氷帝の文化祭に来る仁王兄弟』があまり想像できない。
二人でいるところもあんま見ないしね。
けど、一緒に来るくらいはやっぱり仲いーんだね。

とりあえず仁王へは『文化祭チケットはオッケー』と返信しとくことにする。


終了!とばかりに携帯をコタツテーブルに置いて、みかんでも食べようかと剥き始めたら、妹は仁王弟に興味でも持ったのか、突っ込んできいてきた。


「弟?雅くん弟いるの?」

「うん。確か中2だったかな」

「ふーん。…って、雅くんって『仁王』だよね?」

「うん、におーだよ」

「あ、知ってるかも」


へ?

まぁ、確かに『仁王』って珍しい苗字だしねぇ。
…の割りに、初めて仁王弟に会って駅まで連れて行ってもらったとき、『仁王』と自己紹介されても気づかなかったけどさ。
妹が仁王弟を知ってるかもしれない切欠は意外といえば意外だけど、ありそうっちゃーありそうなイベンドだったみたい。


「あのね、夏休みの臨海学校で他校交流したとき、立海中2年の『仁王』って人と班が一緒だったの」

「へぇ〜珍しい苗字だから、そうなのかもね〜」


果たして立海に『仁王』が何人いるのかわかんないけど、仁王弟も中2なので確立は高そう。
というか、オレらのときは氷帝中等部で『臨海学校』なんて無かったのに、今はあるんだな〜。


「じゃあ雅くんとソノ弟の分だけでいーの?ブンちゃんは?」

「え、まるいくん?」

「だってジロ兄と雅くんくるのに、ブンちゃん誘わなかったらヘソ曲げちゃうんじゃない?」

「う〜ん、そうかなぁ」


なんで丸井くん?
高等部の文化祭は『行く!』と返事もらったけど、中等部の文化祭誘ったら来るモンなの?
オレは妹がいるから行くし、仁王は理由はともかく弟と来たいっていうからいいけど、丸井くん誘わなかいからってヘソ曲げるなんてことは無いと思うんだけど。


「そうだよ、絶対。二人っきりのデートなんて阻止するに決まってる」


なんじゃそりゃ。
二人っきりって、何さ。
オレ、仁王、仁王弟……3人でしょ?それに、岳人や宍戸も来るかもしんないしさー。そうなったら大所帯だよ。
『ハーッハッハ、妹の文化祭だしな!』なんつって、何だかんだ跡部もくるかもだし〜。
(オレの妹だっつーのと何度言っても、跡部は自分の妹かのようにオレの妹を扱うからさ)


「デートって誰がだよ」

「ジロ兄と雅くん」

「はぁ?」

「まぁ、ブンちゃんこないっていうなら、雅くんの弟くんはしばらく引き取ってあげるから、二人でデートでもすればいーんじゃない?」


何言ってんの……。
仁王の弟、おまえより先輩でしょ?一応。
それに、あの物静かで感情をあまり出さない仁王弟が、この妹に引き取られている姿を想像すると………うん、面白いかもしんない!
デートはともかく、妹に仁王弟を紹介するのも楽しいかもね。二人とも知り合いっポイしさ。

けど、丸井くんはどうしたらいいもんか。
まぁ、誘うのは別にいーんだけど、正直、他校の『中等部』の文化祭に来たいモンなのかが謎。
後で『中等部の文化祭あったんだー』って話題の一つで終わりそうな気がするけど、それに仁王が来たのを知ったら、ヘソ曲げるものかな?
でもでも、妹って勘が鋭いというか、跡部並の嗅覚というか。
跡部のヤツ、密かに『インサイト』の特訓でも課してるんじゃ……てくらい、たまに跡部的な物言いをすることがある。
さすがに『あーん?』は言わないけどさ。

(言い出したらどうしよう……しばらく跡部に近づいちゃいけません!て言うしかないんだC…)

妹の忠告を無視(というか忘れてて)して、痛い目を見たことが何度かあるので、ここは言うことを聞いといたほうがいいのかも。


「何いってんだか。………いちお、まるいくんも誘ってみるね」

「おっけー。ぜったい行きたがるし、もしブンちゃんが面倒くさいとか言うなら、雅くんと二人で行くって言ってみなよ」

「えぇ〜?なにいってんだよ〜。」

「そしたら絶対に来るから。賭けてもいーよ」

「……賭けないC〜。丸井くん誘ったほうがいーの?」


妹の文化祭なので、来て欲しければ誘うしそうでもないなら今回は仁王と一緒にお邪魔するけど?
そう暗に告げると、にっこり笑顔で『いっぱい来てくれるほうがいいも〜ん』と言うので、誘ってみて『面倒くせぇ』と言われたら『仁王と行く』と切り返すかはともかく、とりあえず丸井くんへお誘いメールを打つことにする。
仁王が弟連れてくると添えれば、丸井くんもチビちゃんたち連れてくるかもしんないね。
年上からしたらつまらないかもしれないけど、小学生のチビちゃんたちにとって中学の文化祭って、ちょっとオトナなもので興味あるかもしんないしさ。


ひとまず簡単なお誘い文で、送信―っと。


さて、『メンドイ』とくるか、『行くー!』となるか、どっちかな。
丸井くんが断ってきたら、跡部でも誘ってあげようかね〜?


目的は達成したとばかりに満足気な表情の妹は、『招待状の追加あるなら明日までにね!』の一言を残して、リビングに戻っていった。






(終わり)

>>目次

**********
ラストの芥川家でした。

結局、妹の言うとおり丸井くんへ連絡を入れたら、当初はノリ気じゃなかったものの仁王が来るの一言でコロっと態度を変え『行く』と即答した模様。
尚、仁王は弟も連れて行くと聞けば、ならば自分も!と、丸井家も兄弟参加で招待券を申し込みました。
さて、当日どうなったことやら。
とりあえず芥川妹は仁王弟と丸井弟を引き取って、氷帝中等部文化祭の案内をしてあげたようです。
兄たちは……さて、どうなったのでしょうか。
次週に控える氷帝高等部文化祭で、慈郎くんに案内してもらう約束を取り付けようと火花を散らす立海生2人の姿が、氷帝中等部文化祭で一際目立っておりました、と。

―そこを書け

書かん!>え。
いや、その…ほら、もう11月が終わるけん。文化祭シーズンも終了ぜよ!
@この短編UPが2013年11月30日ゆえ




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