丸井家の場合



「なぁ兄ちゃん、氷帝って入るの難しいのかなぁ」

「…は?」


リビングで携帯いじりながらこの秋発売のお菓子をボリボリ食べていたら、小学校から帰ってきた弟がランドセル背負ったまま、座っているソファの隣にどかっと腰をおろしてきた。
ていうかナンデ氷帝?
お前、立海を受験するんじゃねぇのかよ。
ちょっと前まで、『おれも兄ちゃんと同じ、立海行く!!』て言ってただろい。


「立海はどうした、立海は」

「…立海も受けるけどさ。氷帝って、どう?」

「どうもなにも…なに、お前、氷帝行きたいん?」

「……」


正直言うと、偏差値的には氷帝のほうがちょーっと、いや、かなり上だな。
あそこは小学校から大学までの一貫教育で、特に中等部や高等部からの外部入試組みには高い壁だと聞いたことがある。

『外部生はまじまじ、あったまいーんだよ!』

跡部も中等部からの外部組だC!…って言ってたな、確か。
外部組にしては根っからの氷帝生っつーか、氷帝=跡部になってる気もするけど。


「氷帝はちょー頭イイ学校だから、かなり勉強しねぇと厳しいぞ」

「まじか…」

「まじだ」

「塾行かないと無理かな…」

「つーかよ、氷帝は勉強のレベルもすげーけど」


学費もすげぇだろい。

立海も私立だから校区内の中学に比べれば高いけど、氷帝はなんつーか、モロ私立?
あんだけの設備で、全室もちろん冷暖房完備なうえ競技大会が開けるんじゃないかっていうくらいのコート、室内プール、陸上グラウンド、サッカー場、とあれこれスポーツ施設が凄いのは言うまでもない。
そんでもってカフェテリアだのレストランだの、本当に中学校かよ?!というくらいの施設が揃っていて、初めて練習試合で訪れたときはまじでびっくりした。
(向日や宍戸が言うには、それまでは普通のちょっといい私立くらいだったけど、跡部が入学してからありえない建物が増えたと言っていた)


「こっからだと通うにも遠いしなぁ」


お前、立海でテニス部入るんじゃねぇの?
氷帝に入学してテニス部に入るとしても、通学だけでだいぶ時間がとられるし、練習後帰宅する頃には夜遅くなるだろうし。
部活動に励みたい中学生が普通に『通う』のは、さすがに厳しい距離だろう。


「やっぱ難しいのかな…氷帝って」

「なんで氷帝なんだよ」


どうしても氷帝がいいという明確な理由でもあれば話は別だろうけどさ。
氷帝のフェンシング部に入りたい!とか。
(すんげぇ強いんだと。ま、競技人口少なそうだけど。オリンピックのメダル目指すようなヤツは氷帝目指して全国から来るんだとか。ちゃんと寮もあるようだし)


「いや、その…知ってる人が、氷帝通ってる、から」

「なんだそりゃ。なに?氷帝に友達いんのか」

「……うん」


なんだその間は。
てういかこいつの友達連中、たいがいが校区内の区立中学か、コイツ含め数人私立に受験するくらいだろ。
塾も行ってねーし、県外に友達いるようには思えないけどな。

まじまじと弟の顔を見てみると、単なる軽いノリじゃないらしく、えらい真面目な表情をしている。
どういう知り合いなんだ?同い年?
離れたくないって?


…あ。

もしかして?


ふと頭をよぎったフレーズを、そのまま口に出してみたら弟の顔がみるみるうちに赤くなっていき、自分の直感はアタリだと確信した。



「お前、氷帝に好きな子いるんだろ」

「…!!」


へ〜へ〜、そうなんだぁ。
そうだよな〜小学校4年生だもんなぁ。
初恋ってヤツ?
しかも氷帝?

つーか、お前もかよ。


「な、何言ってんだ、兄ちゃん」

「どもってんぞ。いいなぁ〜青春。初恋か〜」

「うるせぃ、ほっとけー!」

「あっはっは、可愛いなーおい」

「〜っ、髪ぐちゃぐちゃすんな!」


自分と同じ色の赤い髪をかき回してやったら、両手をぶんぶん振り回し抵抗された。
ちょっと前までは嬉しがって『兄ちゃん、兄ちゃん』て離れなかったのに、少し大人になったのか最近反抗的な部分を見せる弟だけど、それもそれで可愛いんだよな。


「ほれほれ、どうなんだよ?ん?」

「……言わねぇもん」

「あーそう。そういうこと言っちゃう?ザンネンだなぁ、せっかく氷帝の友達に聞いてやろうかと思ったのになー」

「!兄ちゃん、氷帝にトモダチいんのか」

「おう。お前もしょっちゅう会ってるだろい」

「え?兄ちゃんのトモダチ?」

「よく家、来るぞ」

「…あかや?」

「アホ。立海だっつーに」

「……におー?ひろしくん?」

「どっちも立海だろい」

「ゆきむらくん…は、立海テニス部だし」

「全員テニス部だっつーの」


本気でわかんねぇのか、こいつ。
確かに赤也も仁王も、他の連中も家に来ることはあるけど、だいたい制服かジャージだ。
さらにお兄様である俺の制服姿もジャージ姿もしょっちゅう見ているから、立海だとわかるだろーが。

ヒントとして『先週泊ったぞ』と出してやれば、すぐさまパァーっと表情が明るくなってクイズの正解を確信した子供のごとく、目をキラキラさせて答えを述べた。


「ジロくん?!」

「せいか〜い」

「うっそ、ジロくん氷帝?!」

「おー、しかも小学校からずっと氷帝だぞ、確か」

「まじで?!ジロくん、幼稚舎から氷帝!?」


氷帝は小学校じゃなくて幼稚舎って言うのか。

ジロくん=氷帝に何だか興奮している弟に、そういえばジロくんが前回泊まったときに忘れていったモノがあったなと思い出す。
それでも見せれば、余計にはしゃぐかねぇ?

目を輝かせている弟へ『ちょっと待ってろ』と告げて、部屋までひとっ走り。
次会ったときに渡す予定の『ジロくんの忘れ物』を引っつかみ、急いでリビングに戻ると、未だにランドセル背負いっぱなしの弟に放り投げてやった。


「ほれ、ジロくんの」

「なにこれ」

「学生証。忘れてった」

「!!氷帝の?」

「だろい。あいつ氷帝だし」

「!!ほんとだ、氷帝!!」


ぺらっとめくり、出てきた学校名とジロくんの顔写真をじっくり眺めている弟の手元―氷帝学園の学生証を、上から覗き込むと見慣れた顔がにっこり笑顔で映っている。

写真でも可愛いな、ジロくんって。
この写真を撮ったときはちゃんと起きていたらしい、目をパッチリあけてニカっとしている。
やべぇ、すっげぇカワイー。

返さなきゃいけない学生証なんだけど、そういえばジロくんの写真ってテニス関係以外持ってねーじゃんと思い直したら、返すのがちょっと惜しい。
…いや、うん、返さないとなんだけどさ。
こう、学生服のジロくんってのも、しょっちゅう見てるんだけど、あらためて写真でみるとまた新鮮というか。

割かし真面目なはずのバストアップショットは、いわゆる『証明写真』なんだけど被写体がジロくんだと、こうも受ける印象が他の連中と違うものなのか。
ふわふわ金髪のジロくんの写真は何だかキラキラ輝いてみえた。

写真のジロくんのように目をキラッキラに輝かせている目の前の弟も、最近やや生意気になってきたとはいえ目にいれても痛くないほど可愛いのには間違いない。


しばらくじっとジロくんの学生証を眺めていたと思ったら、何かに気づいたのか、何かが気になるのか。
パっと顔をあげてこちらをじっと見つめてきた。


…なに?


「なぁ、兄ちゃん」

「ん?」

「ジロくんって…」

「へ」


え、ジロくん?
なんだよ、ジロくんの何が気になるんだ?

お前も知っての通り、たまに泊りにくるジロくんはいつも明るくて元気いっぱい、ふわふわしてて可愛くて。
もう一人のチビの面倒もみてくれるし、一緒に遊んでくれる優しいオニーサンだろい。
ゲームも強いしアニメも詳しいからこいつらとも気が合う ―精神年齢が同じなんだなーとからかったら、頬をぷーっと膨らませて抗議されたけど。
…つーか、両頬ふくらませて『ぶーぶー』って、何だよそれ。
可愛いっつーんだよ。ったく。

ジロくんはあの通り、天真爛漫で笑顔がチャーミングなスペシャル可愛いヤツだ。
そこにいるだけで周りがぱぁーっと明るくなって、皆が笑顔になる。
物凄い吸引力を持っている稀有な存在で、誰からも好かれるし、気難しいヤツやとっつきにくいヤツ、暗いヤツ、おかまいなしに巻き込んでは、いつの間にかそいつらはジロくんのファンになっている。

過去の例その1:亜久津
あの怪物がいまやジロくん見ると表情が柔らかくなるし、ジロくんが誘えば一緒にモンブランたべにアンジェ●ーナにだって入るくらいだ。

過去の例その2:真田
前に赤也とジャッカルと一緒に、部活の用事で真田んちを尋ねたら縁側でジロくんが寝こけてた。接点が全然見つからず疑問ばかりだったけど、ジロくんはどっちかというと真田の甥と仲がいいらしく、たまにそのガキんちょに呼ばれるので遊びにくるんだと笑ってた。
(何故か毎回、甥っ子の自宅ではなく近所の真田宅に呼ばれるんだと)

過去の例その3:日吉
当初はジロくんのことを『面倒くさい先輩ですね』と言ってたくせに、中学3年時のU17合宿で、なんとジロくんをおぶって登場した。
…おい、ジロくん背負うのは樺地の役目じゃねぇのかよ。後々聞いたら樺地は跡部とジロくんと自身のテニスバッグを持つためジロくん運ぶのは難しい、となって、じゃあ誰かおぶるかーとジャンケンで決めようとしたら、その前に日吉がさっと背中におぶったんだと。
(要注意人物が増えた瞬間だな……つーか氷帝、そういう時は起こさねぇのかよ。立海なら鉄拳が飛ぶっつーの)


…とまぁ、挙げればキリがない。

つまりはそんなジロくんのことを、俺はもちろん丸井家の人間は全員、大好きだ。
ジロくんは何でも美味しそうに食べるけど、キライなトマトが出ると目をウルウルさせて『まじまじ、無理だしぃ…』と悲しい顔をする。
そして母さんは『好き嫌いはダメよ〜?』と笑いながら、ジロくんのサラダにさらにトマトをのっける。
そんでもって増えたトマトに、ジロくんは余計に目を潤ませて、助けてと言わんばかりに俺をじっと見て懇願してくる。
そんなジロくんが可愛いから、しばらくじっとジロくんを見る。
ジロくんは俺を見る。
エンドレス。


トマトを食べるのはどーってことねぇけど、食べるとジロくんのウルウルが終わると思うと、もうちょっと、もうちょっと…とジロくんを助けず置いておくと、チビどもが助けにはいる。
そんなこんなで一番下の弟は、ピーマン、トマト、セロリ、と苦手だった野菜を次々に克服していった。
(ジロくんはトマト以外は食えないこともないけど、あまり好きでないらしい)

母さんがどんなに言っても、うまく混ぜてわからないようにしても弟はシイタケをよけていたのに、『ジロくんを助ける』という名目に、ヒーロー心に火でもついたのか。
ある日、シイタケのホイル焼きなんつー、モロ椎茸な料理が食卓を飾ったとき、ジロくんは正直顔が引きつっていた。
キライじゃないけど椎茸そのものドカンはちょっと…なんて泣き言を言っていたが、母さんはおかまいなしにジロくんの分を取り分けて、『はい、どーぞ』と面白がっていた。
そして一番下の弟は、『ジロくん、それよこせ!ぼくがやっつけてやるぜい!』なんつって、大嫌いなはずの大きな椎茸にかじりついて完食し、母さんを喜ばせていた。

結局ジロくんの好き嫌いはあまり改善されないんだけど、弟2人はめきめきと何でも食べれるようになっていって、今では俺と同じく『なんでも好き』だ。
それがジロくんのおかげな部分も大なことを考えれば、ありがたやありがたやと感謝している。
…のは母さんも同じようで、頑張ってジロくんがトマトをひとつ食べたときは、ふわふわの金髪をぐりぐり撫でて、『よく出来ました』と小さい子にするように褒める。
ジロくんは照れくさそうに『むぅ…オレ、もう高校生なんだC』なんて、また頬を膨らませて抗議するから、母さんは可愛くてしょうがないとばかりにますます撫でる。

うん。
ジロくんを『可愛い』と感じるポイントは、丸井家では共通のものらしい。

父さんはといえば、夕食時に一緒になることはあまり無いけど、会社から帰宅すると俺らがリビングでゲームしてたり、遊んでたりしてうるさい中で夕食をとる。
俺は弟らの相手してるから父さんと夜あまり話すことも無いんだけど、気づけばダイニングテーブルで父さんとジロくんが向かい合っていて、父さんは夕飯を食べていて、ジロくんは父さんの相手をしている。
わかってるのか聞き流しているのかサッパリだけど、父さんの会社のグチや新聞ネタ、時事ネタを聞いては上手い具合にあしらっているのか、うんうんと相槌うつタイミングも絶妙。
そういうのってフツー、奥さん(母さん)がやるんじゃないの?と思うけど、母さんは後片付けやら掃除やら何やらで忙しく、父さんの相手をしていられない。
『ジロくんがいると助かるわ〜』とキッチンで洗い物しながら笑っている。

面倒くさくね?

寝るときに部屋に戻ってから、父さんの相手してるジロくんに聞いてみても、実家でも同じような役割らしく、よくお父さんや近所のじーさんばーさんの話し相手になっているようで、慣れっこだと笑ってた。

結果、父さんにとってもジロくんは歓迎すべきお客さんかつ、ジロくんが来ると顔がホクホクしてるから他の丸井家メンツ同様、ご多分にもれず『ジロくん大好き』なのは間違いない。



なんてことをつらつら考えていたら、パーカーの袖を引っ張られた。
みればいつの間にかランドセルを床に置いた弟が、相変わらずジロくんの生徒手帳片手に、興奮した様子でまくし立ててくる。


「ねぇねぇ、ジロくんって『芥川』なの!?」

「は?」


何いまさらなこと言ってんだ、こいつ。
ジロくんが『芥川』なのは最初っからだろい。
『芥川』の『ジロー』くんは名の通り次男だけど、漢字は違う。
ジローという響きは古風で男らしい印象だけど、文字の『慈郎』はなんだか優しげで柔らかくて、あいつの見た目ともぴったり当てはまる。


「ねぇってば!」

「痛ぇって。引っ張るなよ」

「ジロくん、『芥川』なの?!」

「そりゃーお前、ジロくんは芥川だろ」


学生証の『氏名:芥川慈郎』をツンツン指差して頷いてやれば、何を考えているのか弟は信じられないとばかりにジロくんの顔写真と『氏名:芥川慈郎』をまじまじ見つめてさらに興奮気味になった。

…なんだっつーんだ?


「ね、氷帝の中等部に『芥川』って、何人もいるかなぁ?」

「は?いや、ジロくんは高等部―」

「じゃなくて、中等部!」

「中学なんて知らねぇよ。つーかあそこも生徒数多いし」

「ジロくんってキョーダイいる??」

「は?兄弟?」

「中等部に、キョーダイ!」

「ジロくん3人兄妹で、兄ちゃんと妹がいるけど」

「!!ねぇねぇ、妹って、氷帝の中等部の『芥川』さん?!」

「…そりゃ、芥川サンだろい」


え、なになに。
何なの?
コイツの『氷帝行きたい』発言って……え、ジロくんの妹?まじで?


『なぁジロく〜ん、起きてくれよー』
『ん?ブン太くん、どしたの?』
『あーちょうどいいところに!ジロくんが起きねぇの。なー、寝るならジロくんの部屋戻ってからだろい、起きろー』
『そんなんじゃ起きないよ〜?』
『どうすりゃいいの?』
『こうする』

……。

……。

ドカッ!

『!!』
『ほら、起きた』
『…いった〜い、その起こし方、止めてって言ってるのにぃ〜』
『部屋で寝なさいって言ってるでしょー?今日お兄ちゃんいないんだから、ジロ兄ぃが居間で寝てても、部屋につれてく人いないんだかんね!』
『…は〜い』


ジロくんちに泊りにいったときに、風呂からあがって居間に行けばゲームしているはずのジロくんが熟睡してしまい困ったところに、サッとあらわれてはジロくんの鼻と口を手で覆い、しばらくしてジロくんが苦しそうにした瞬間、雑誌て頭をバシっと叩いて起こしたジロくんの妹。
まじですげぇ荒業だったけど、ちょー鮮やかだった。

ジロくんの妹は、確か中学1年でいまは氷帝の中等部に通っている。
兄によく似た、ふわふわのひよこ色の髪に、くりくりした小動物っぽい目が印象的な可愛い子だ。
兄貴と違ってどこでも寝るようなこともなく、どちらかといえば兄がああだからか、かなりしっかりしている。
ちゃきちゃきしてて、ジロくんの面倒をよく見ているっつーか、世話のやける兄に『やれやれ』といいつつ、『しょうがないなぁ』と結局甘い顔をしているのを見たのも一度や二度ではない。
妹にまで甘やかされてんだな…

呆れたこともあったけど、不思議と『まぁ、ジロくんだから』で納得できるところも、あいつが常に周りに助けられている証というか、何というか。


「なに、お前の好きな人って、氷帝中等部の『芥川サン』なのかよ」

「……なぁ、兄ちゃん」

「ん?」


けど、氷帝の中学1年で絞れたとしても、うちと同じくマンモス校なわけだし、『芥川』さんが一人とは限らない。
せめて外見の特徴とか、名前とかさー。

けれども弟はジロくんの妹が、想いを寄せる『芥川サン』だと確信しているのか、学生証を俺へと返してきたと思ったら、やがて意を決したかのようにお願いをしてきた。


「ジロくんち行きたい」

「は?」

「お願いっ!!ジロくんち、つれてって!!」

「違う『芥川サン』かもしんねーだろい」

「確かめるためにも!ていうか絶対、ジロくんの妹が『芥川サン』だから!」

「まぁ、ジロくんの妹は紛れもなく『芥川サン』だな」

「ねぇ、お願い!!ジロくんに頼んで!」

「別にジロくんちにお前連れてくのはいいけどよ。ジロくんに頼むって―」

「『芥川サン』に会いたい!!」

「あー…」


おいおい、積極的だな。
ジロくんちに泊りにいくことはあるし、互いに行き来する仲なので遊ぶのもしょっちゅうだ。
その一回に弟を連れていくことはどうってことないし、泊るとしてもジロくん家は歓迎してくれるだろう。

さて、どうしたもんかな。

縋るように俺の目をじっと見てくる弟に、まだ小学生ながらその内なる情熱を感じて、どうにかしてやりたいと思うのは何も身内だから―ではなく、この熱意に負けたというか、何というか。

とりあえずジロくんの妹がいるときにジロくんち遊びに行って、何なら一緒に出かけてもいいだろう。
ジロくん行きつけのカフェでお茶でもして、互いの妹・弟を紹介しあって。
でもって後は若い二人で〜

うん。
ジロくんの妹ならば、俺の弟の面倒をみてくれるはず。
こいつをジロくんの妹に預けて、俺はジロくんと遊びに行っちゃえばいいよな〜


つーかよ、こいつ、まだ小学4年生だぞ。

年上のオネーサマかよ。
何かが起こって氷帝中等部に入れたとしても、その頃ジロくんの妹は高校1年生で同じ校舎には通えないだろ。


…まぁ、いいか。



とりあえずはこの小さな恋を見守ろうと決意し、ジロくんへメールすることにした。





(終わり)

>>目次

**********
丸井家リビングにおける兄ブン太(高2)と弟(小4)の会話でした。
ブンジロ?いやいや、わかりませぬ。ブン太→ジロくんではありますが。
果たして真田の甥っ子が真田宅同居か知りませぬが近所ということで。
ジロくん呼びつけるときは、いつもゲンイチロウの家に呼ぶ真田甥っ子でした。

いいお兄ちゃんなんだろうな〜ブン太くん。



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