丸井のサンフランシスコ食い倒れの旅



「うぉ〜、でっけぇ!」
「…やっぱオレ、飲み物だけにすれば良かったかな」


店頭に大きく掲げられていたポスターを見たときは、パングラタンだ!なんて興味もあったけれど、実際にカウンターで注文し出てきたものを見て、その大きさに正直びっくりした。
一緒にいるカレシは満面の笑顔で目を輝かせ、いそいそとスプーン片手に大口あけてぱくぱくと口に運び出す。


「うんめぇ!」


直径20センチ以上はありそうな真ん丸いパンの、くりぬかれた中にはこんもりと注がれた白いクリームスープ。
パングラタン……ではないが、まぁ似たようなものだろう。
お店の看板メニュー、クラムチャウダーだ。


「これ、パンも食べるのかなぁ」
「ったりめぇだろい」


クラムチャウダーをすする丸井の隣で、パンの蓋をしげしげと眺めながら一口かじってみる。


「酸っぱ!」


サワドゥブレッド。
酸味が特徴の皮の硬いこのパンは、旅先に訪れているこの街の名物らしい。


『とりあえず名物だから、食わなきゃな!』

その一言で、彼はまっすぐに注文カウンターへ向かい、元気よくクラムチャウダー2つとレモネード、セブンアップを注文してきた。
『アイスティだけでいいです』なんて言う間もなく、自分の分まで注文されたジローは、まぁいつものことだと諦めモードになってはいたが、実際に出てきた『名物』を見て、こりゃちょっと失敗かも……と頭をかいた。


これが食事ならば問題なく食べられる量なのだけど、すでに、何食目なのだろうか。
確かにパンを器に盛られたクラムチャウダーは見た目に楽しいし、味も文句なく美味しい。
ただ、これを全て平らげる自信は無いのであって……


そう、本日は朝から食い倒れまっしぐらだったのだからして。



― さかのぼること1時間前 ―

「ガーリックチキン、ソーセージシュープリーム、ハワイアンにアスパラガスチキン、バーベキューチキンと〜、フォルマッジョ。オール、1ピース、イーチね、OK?」
「頼みすぎじゃない?」
「なぁに言ってんだ。すんげぇ美味そうじゃん!ここ来たかったしな〜」
「…ご飯、食べたばっかりだC」
「飲みモンどうすっかな〜、コーラでいい?やっぱピザには炭酸だろい」
「……任せマス」
「持ってくから席ついてて」
「トレーに乗せきれないでしょ」

ユニオンスクエアとケーブルカー乗り場の中間あたりにあるピザ屋・ブロンディーズのカウンターで、クリアケースにどんと置かれた巨大ピザを、目をキラキラさせて見つめる丸井。
の隣では、お腹をさすりながらも『大丈夫かな…』と、自身の胃の具合を心配する芥川の姿があった。

1ピースずつとはいえ、その1カットがでかい。
とんでもなくでかい。
普通のデリバリーピザの3〜4カット分くらいはあるのではないだろうか?


「まじまじ、おなかいっぱいだC…」
「ここに来てピザ食わないなんて、ウソだろい!」
「いや、胃のキャパってのがあるんだよね」
「まだまだだろ」
「…そりゃ、丸井くんはブラックホールだけどさ」
「ジロくん、何のためにここに来たんだ」
「ここ?ブロンディーズ?」
「いや、サンフランシスコだ」
「…観光と、リラックスと、旅行、でしょ?」
「西海岸グルメを楽しむために決まってるだろーが!」
「……やっぱり」


一口ずつで勘弁してください、とうな垂れるしかなかった。



― そのさらに1時間半前 ―

「ビーツウィズ、ゴートチーズ」
「ヤギのチーズって、クセがあってオレ、苦手…」

写真が殆どない、文字のみのメニューのため出来上がりが想像しにくいが、単語単語を拾って興味の出たものを注文することにしたようだ。
だが、チーズはチーズでもヤギのチーズ。
独特な風味とアクの強いものなので、ジローとしては食べられなくはないが、出来れば違うほうがいい。

「(無視)オニオンリング」

まぁ、『食』に関しては、どこまでも己の欲に忠実な彼が、聞き入れてくれることは無いのだけれど。
せめて、自分が食べられる物も頼んでほしい、とささやかな希望をそえる。

「野菜くいたい」
「え〜っと、フライロースト・フレッシュアーティチョーク」
「あ、野菜だ」
「ビーツとアーティチョークで満足しろい」
「はいはい」

これが彼なりの譲歩らしい。
ただし、普通の野菜サラダならここで食う意味なし!と、馴染みの無い野菜のメニューをチョイスしているが。
続けて店員さんに告げたオーダーに、ジローの目がまん丸になった。

「ジャマイカン・ブラックペッパーシュリンプ、グリルドリブアイステーキ!」
「え、メイン2つ?」

メインのコーナーから、シーフードのプレートと、肉のプレート。
周りのテーブルを見ると、ワンプレートがけっこう大きい。

「二人いるんだから、メイン二つは当たり前だろい!」
「ここ、量すごいんじゃないのーって、心配無用か…」
「あと、チキンパルメザンサンドイッチ!」
「……」

さらに炭水化物を追加、である。
メインのプレートにも、パスタやマッシュポテト等のお腹にたまるものもついているのに、それでも頼むのか。

「とりあえずそんくらいで!」
「…とりあえず?」

他にもまだ注文するつもり?
いくら彼が大食いだとしても、少し遅めの昼食としてこのレストランに入る前に、ショッピングモールでジャンクフードを食べて、その前には朝食もばっちりたいらげている。

「あ、そっか。飲みモンまだだったな。ジロくん、何にする?」

…とりあえず食べ物から逸れて、飲み物になったのでよしとしよう。
ドリンクメニューを眺めながら、真昼間からアルコールもいいかな、とアルコール欄を見れば、ワイン、ビール、カクテル…とその種類も豊富だ。

「店員さんのおすすめって、フルーツダイキリだったよね」

テーブルに案内された際に、店員のお姉さんにおすすめを聞いたところフレッシュフルーツを使った生ジュースやダイキリ系が人気だと教えてくれた。
フルーツダイキリに使われる果物を一つずつ見て、丸井はジローの頼みそうなもの、としてとある果物のイラストを指しながらジローへメニューを向けて、確認した。

「イチゴにする?」

キウイ、バナナ、イチゴ、マンゴー…どれも美味しそうだけど、やっぱりストロベリーが好きなので大きく頷いて、お姉さんに「ストロベリーのフルーツダイキリ」とオーダーする。
どうせならアイスティや炭酸、ビールではなく、お店オリジナルのドリンクでも頼もうかな、と丸井も変わった名前のドリンクを指した。

「じゃ、俺はこのフライングゴジラ」
「ゴジラ?」
「チョコレートとバナナのミルクシェイクって書いてある」
「うへぇ、甘そう…」

食事のおともに生クリームやチョコレートたっぷりの濃いドリンクは遠慮したいジローとは異なり、何でも来いな丸井が頼むものは炭酸、アイスティ、カフェモカ、シェイク…とさまざまだ。
ユニオンスクエア前のデパート、メイシーズの最上階の人気レストラン、チーズケーキファクトリー。
全米のあちこちとハワイにも店舗を構える人気店で、豊富な種類と量の多さ、もちろん味も抜群で、ジローの大好きなお店だ。
未体験だった丸井は、旅先の街に同レストランがあることを調べ、是非とも行きたいと『滞在中行くレストランリスト』に加えた。
好きなレストランなのでジローとしても楽しみだったのだが、まさかこんなに頼むとは……いや、予想はできていたものなのだが。
二人で食すには明らかにオーバーな品数に店員さんは何度も『本当に大丈夫?』と念を押してきたが、問われた丸井はなんのその。





― そんでもってその1時間前 ―


大きいショッピングモールを見てみたい、とMUNIバスを乗り継ぎ、街の中心から少し外れたところにあるストーンズタウンへやってきた。
その名の通り、ストーンズタウンギャラリアモールを歩きながらのウィンドウショッピング。
イオンのモールとあまり変わらないな、との丸井に、フードコートが全然違うよ?と呟いてみたら、即座に『行くぞ』と手首をつかまれた。

ただ、入っている店が全然違うよ、という意味なだけだったのだが。


「すっげぇ!これ、アメリカンドックだよな?揚げてるの初めてみた」
「食べる?」
「もっちろん!ていうかレモネードもこんなに種類あんの?」
「ここ、レモネードも有名だしね」
「よっし。じゃ、飲みモンはレモネードだな。何色がいいんだ?」
「オーソドックスなのは透明のヤツだけど…ま、何でもいーんじゃない?」


ピンク、緑、青?
いったいどんな味なのやら。
アメリカンドックのお店はジローに任せて、丸井はプレッツェルの店へと走った。
いまや日本にも数店舗ある、アンティ・アンズのプレッツェルはニューヨークスタイルの硬いものとは違って、どこかデニッシュっぽい。


「…シナモンシュガーとセサミ、かなぁ」

丸井が買って来そうなフレーバーを予想する。
甘いのが大好きなのでシナモンシュガーは外さないだろう。
だが、一つだけなワケがない。
二人いるから二種類は確実。となると、お次はセサミかスイートアーモンドか?

まぁ、ジローが食べ切れなくてもそこは心配ない。
とりあえずは頼まれたものだけ購入して席につこう。


「Hi, what can I do for you? 」
「Hi. May I have... corn dog and lemonade ? 」
「How many ?」
「Just single corn dog, and 2 lemonades... Small size, and Large one」
「Any other ..」
「No」
「All right」

美味しそうなコーンドッグ、、、もといアメリカンドッグだが、相手がおそらくプレッツェルを2種類かそれ以上買ってくることを考えると、自分はかじるだけでいいか、と1つのみ注文。
飲み物もラージサイズとスモールサイズで丁度いいだろう。
空いているテーブル席に腰掛けて、しばらくすると待ち人が戻ってきて―


「お待たせ!」

「……うん」


シナモンシュガー、セサミ、は予想の範囲内だ。
まぁ、スイートアーモンドもあるだろうとは思っていた。
が。
プレッツェルドッグとプレッツェルナゲットまであるなんて、聞いてない。
なにゆえ、シナモンシュガーのプレッツェルを買った上に、さらにシナモンシュガーのプレッツェルナゲットまで買うのか。
そして、コーンドッグを食べたいといっていた割には、なぜにプレッツェルドッグもトレーにのっているのか。
ソーセージならコーンドッグを食べろ。

「いやぁ〜美味そうで、ついつい買っちった」
「……」
「あれ?ジロくん。アメリカンドッグ一つだけ?」
「…うん。オレ、レモネードだけでいい」
「なんだよ〜せっかくなんだから、食えよ〜」
「丸井くんの一口もらうだけで十分だC…」


この後、どうせ街の中心に移動したら『昼飯だ!』と言い出すことは目に見えている。
付き合わないと怒るし、かといって一緒にレストランに入ってドリンクだけオーダーするのも許されはしない。
食べないとへそを曲げるので……少しでも胃に余力を残しておかないと、後々が辛くなるに違いない。

ここであまり食べないようにしないと。
朝食だって、全然消化できていない気がするし。




― そして一食目の朝食―


レンタカーを借りて街のシンボル、ゴールデンゲートブリッジをわたり、サウサリートの町に入る。
小さなお店が転々と見えて、小洒落た雰囲気の人気エリアだ。
お目当ては、ここで一番人気のハンバーガー屋さん。

大きい手こねハンバーグを直火でじっくり焼き上げ、とろっとろのチーズとグリルしたオニオンらを巨大なバンズで包みこんだボリューム満点の一品。


「ハンバーガーとフレンチフライに、ステーキサンドイッチ!コーク、ラージね」
「ターキーバーガー、ノートマト&ノーマスタードプリーズ。エンド、アイスティ」
「えぇぇージロくん、まじかよ」
「なにが?」
「ハンバーグじゃなくて、中身ターキーでいいんかい」
「朝だし……そんな食べれないもん」
「もったいねぇなぁ〜せっかくなのにさー」


何がせっかく…


そもそも、当初の予定はユニオンスクエア付近、パウエルストリートをあがったところにあるレストランで、パンケーキではなかったのか。
オーソドックスな朝食の予定が、何がどうしてレンタカーでハンバーガー食べにサウサリートまで来ることになったのか。
そりゃ、天気は快晴でドライブ日和だし、ゴールデンゲートブリッジの上を車道から見渡すのも景色が良さそうだし、夜はツインピークスからサンフランシスコの夜景を見ようかーなんてドライブデートも予定には入っていたけれど。
午後から車の予定が、『肉厚でアメリカンサイズのハンバーガー食いたい』で、朝から車飛ばしてここまで来たのだ。
(ちなみに食後は車をホテルに置いて、市内散策するんだとか)


嬉しそうに、美味しそうにハンバーガーに噛り付く彼氏は、確かに楽しげでこの上なく幸せそうで、かっこいい。
ただし。

ここはまだ、一食目だ。

普段の食欲もさることながら、旅先だとレストランやカフェ等、その街のグルメ調査は入念に行い、どこで食べるかまで事前リストを作るくらいだ。
いつもよりも食事に付き合う回数が増えるし、拒否したら後がコワイ。
つわりの大変な妊婦さんの如く、1日3食ではなく、ちょこちょこと5食、6食と付き合わされるため、胃におさめる食物のコントロールをしなければならない。
(注:少しずつ小分け食べる…のではなく、毎食毎食きっちり食べるため、付き合わされる身は大変なのだ)

ちゃんとしたレストランでないにしろ、ここから昼食までに何回か間食をはさむに決まっている。
たとえ街角で売っているプレッツェルやホットドッグにしろ、『はい、ジロくん。どーぞ』と必ず一口すすめてくるし、それを断ると後々ネチネチと言われるのが面倒くさい。
ので、とりあえずは全て『一口』いただくことにして、ちょこちょこと摘みつつ、丸井の行きたがるお店に付き合うのが穏便に済ますやり方だと学んだ。

食後は、特にサウサリートの町を見たい、ということもなく。
目当ての用事は済んだとばかりに、再度ゴールデンゲートブリッジをわたってサンフランシスコ市内に戻った。
橋を渡りきる前、まさに市内に入る寸前に料金所があり、お金を払うシステムが何だか新鮮だったけれど。

ホテルの駐車場にレンタカーを停めて、そのままバスで中心地へ移動する……と思いきや、こっちのショッピングモールに行ってみたいということで市内の左側にあるストーンズタウンへ向うことにした。
ミュニバスの停留所で待ちながら、ストーンズタウンならそのままレンタカーで行けばいいのにな〜なんて思うのだけど、赤い髪のコイビトがバスに乗ってみたいというのだから、しょうがない。



― とまぁ、こんな具合で何食目?なクラムチャウダーに戻るのです ―


ケーブルカー乗り場でしばらく並び、この街のシンボルの一つ。
サンフランシスコ・ケーブルカーに乗って海までの道を進んだ。
アップダウンの激しい坂道に揺られ、『マニュアル車だったらやべぇな、運転できねーかも』とレンタカーがオートマであることにホッとしながら。
途中で遠くに見えた、うねうね曲がりくねった道―絵はがきで見ることも多い、ロンバートストリートを見て、『あんなとこ、まじで車で行くのかよ!すんげぇな』なんて目を輝かせていて。

(まずい…あそこ、運転したいとか言い出したら、どうしよう)

前に日光へ観光に行った際に、そのまま山の上へ…あえて、『いろは坂』をのぼると言い出して、イニシャルDごっこを始めそうだった丸井を真剣に止めた。
あんな急カーブの多い坂でスピード出されたら、恐すぎる。

『まるいくん!イニシャルDのいろは坂は、くだりでやればいーじゃん。のぼりはゆっくりだよ』

適当なことをいって、上までゆっくりのぼらせた。
前に別の車がいたことも幸いだったが。

反対に帰り道では、丸井の隙をついてカギを奪い、ジローの運転で『いろは坂』を回避し、別ルートで東京に戻った。
助手席に座った当初はぶーぶー言っていたが、最後の手段とばかりにシートを倒して上から覆いかぶさり、深いキスをしかけて意識を奪い―イチャイチャしていたら、数十分後にようやく寝てくれた。
いつもなら立場は逆だけれど、眠った丸井を起こさないように音楽もヒーリングミュージックを流し、安全運転で時間をかけて高速に乗り、都内のマンションに戻る頃には夜も更けていた。


ケーブルカーで最終地点まで着けば、潮の香りが充満する海が出迎える―フィッシャーマンズワーフに到着。
やれカニだ魚だエビだ貝だと、出店をうろうろしながらはしゃいでいた彼に、『まじまじこれ以上は食えないんだからね!』と念を押して、カフェですませてもらうことになったのだが、訪れたボーディンベーカリーで注文されたのが、大きなパンにクラムチャウダーがどっかり入ったものだった。

『も…ダメ』
『なんだ、どした、ジロくん』
『お腹いっぱいで食べれないよ……まるいくん、たすけて』


困ったように眉を寄せ、目をうるうるさせて鼻をすすり、じっと丸井を見つめれば、後は丸井が何とかしてくれる。
そもそも彼のせいでこんなに胃をパンパンにさせる羽目になるのだが、その責任をとれと詰め寄ると、夜が大変なことになるので別の言い方で何とかしのがなければならない。
『カロリー消費、手伝ってやる』と服を脱がされたことが、はて今まで何十回あったことやら。


結局、丸井はジローの残した分まで平らげるのだから、最初からジローの分は頼まなければいいのに。
と毎回思うのだけれど、丸井としてはジローが残すのは想定して注文しているらしいので………って、結局自分が食べる算段でオーダーしているのか?


「あー食った食った」

「もう、まじ無理だし…」

「美味かったな〜!」


お腹をぱんぱん叩きながらも、周りの屋台を興味深そうに眺める丸井に、これ以上は本当に無理だ、シーフードと肉が入るスペースは無い!と言い切る。
さらに、野菜もパンもご飯もチュロスもホットドッグも、もう入りません!
と、彼の言い出しそうな食材を片っ端からあげて『食』以外にしようと訴える。

が。


「そうだな、もう食事はいいか」
「!そうだよ、十分ごはん食べたC」
「肉も魚介もパンも、いっぱい食ったもんな」
「うんうん。オレ、みんなのお土産買いたいから、ピアの方に―」


「食後のデザート、だな!」

「は?!」



―しまった、そっちか。



何故、先ほどの食材の羅列の中に、甘いもの系をあげなかったのだろう。
ああ…

時すでに遅し。
口笛吹きながら歩く丸井の頭には、もうデザートのことしか入ってないだろう。


「このへんにギラデリのカフェがあるはずなんだよな〜」
「…何のカフェだって?」
「ん?ギラデリ。ほら、チョコレートの」


よりによって、チョコレートか…



「あ。アレじゃね?ほら、あっちの―」


丸井の指差す先を見ると……あぁ、それっぽい建物がある。
ドンと大きく、ギラデリの文字が見える。


「やっぱチョコパフェ系かな〜」

「オレ、コーヒー…」

「(無視)ジロくんはイチゴパフェ系にすっかなー」


まずい。
これは注文時に、ジローの分まで全て決めてしまうパターンだ。

ボーディンのクラムチャウダーの二の舞は避けるべく、『食べたいものがあるから自分で決める!』と押し通すしかない。
『何でもいい』『食べたくない』と言ってしまうと、勝手に決められる。
逆に、『○○が食べたい』といえば、それを優先してくれるので。。。。一応。


お店でメニューを見て、一番ダメージが少なそうなものにしないといけない。
コーヒーとパフェよりも、飲み物とデザートが一緒になったような、カフェモカ的なもので逃げるほうがいいのかもしれない。
なんならコーヒーとシャーベット的な、アイスで難を逃れようとも思えど、チョコレート屋でチョコ系以外を頼むなんて言語道断!と怒られるのが目に見えている。


あぁ、もう。


(まるいくん……も、勘弁して)



『カロリー消費、手伝ってやる』をやられると、翌朝動けないので旅先では絶対にイヤだ。
かといって毎度毎度、食い倒れに付き合うと日を追うごとに胃が重くなり胸焼けがハンパない。
ヘトヘトになっていくジローの原因が『食いすぎ』と知ると、『運動するか』と乗っかってくる・・・そしてエンドレス。


誰か、恋人に『適度』という言葉の意味を教えてあげてください…


切に願うジローだった。





(終わり)

>>目次

**********
世界を旅するプリガムレッド、丸井のサンフランシスコ編でした。
今はもう無いお店もありそうですが。
メイシーズ上のチーズケーキファクトリー、ブロンディーズのピザ、ボーディンのクラムチャウダー、ジャンバジュースのバナナベリースムージー…
全部ぜんぶ、大好きです。
ホールフード(スーパー)のサンドイッチとオレンジジュース、バナナクリームパイも好きさ!
あ〜アメリカ行きたくなってきました。目的は、もちろん丸井くんと同じく『西海岸グルメ』です。>の割に、行きたいのはどこもチェーンなので西海岸でなくてもいいともいえる。
ストーンズタウンのショッピングモールのコーンドッグ(アメリカンドッグ)とレモネードも好きですが、あそこにアンティアンズがあったかは定かではありません。
が、アンティアンズのシナモンシュガープレッツェル、大好きです。
おいC!!
日本ではまだ食べたことありませんが、渋谷にあるんだったかな。
海外に行ったら絶対に買います。安いし!
日本以外の国には、どこにでもある印象です>アンティアンズ。




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