赤也の五感



ふわふわの髪が太陽の光をあびてキラキラ輝く。
顔を近づけると、春のような夏のような、ぽかぽか温かくて、優しいにおいが香る。
照れたようにはにかむ表情が、たまらなく可愛くて愛しい。


「見すぎだC…」


下を向いた彼の頬に手を伸ばすと、一瞬躊躇する素振りをみせたが逃げずにじっとしてくれる。

ぷにぷに。

張りがあり、弾ずむ肌が心地いいと思わず指で何度も押してしまう。
あまりやりすぎると嫌がるので、ぎりぎりのラインを見極めなければ。


「いーたーいーっ!」


…失敗した。


(なんのまだまだ)


指を少し移動させて、ぶーたれている唇に触れて少し力を入れると、白い歯がちらり見えて、その奥の可愛らしい舌がのぞく。


「ん…っ」


舌をつまんでみると、びっくりしたのか目を見開いて、吐息を零した。
そのまま指を奥にしのばせて口内をぐるっと確かめてみると、眉をひそめながら非難の眼差しを向けてきた。
だが、好き勝手している張本人−年下の恋人−の目が、少し赤くなってきているのをみると、言おうとした文句が引っ込んでしまったらしい。


「んー、んー!」


それでも少し息苦しいようで、自身の口内を動き回る彼の長い指を歯と舌で止めて、これ以上奥へ進ませまいと意思表示をする。
そんな年上の可愛い人の抵抗に、今は折れてやろうか。
するすると指を抜くと、ほっとした表情を浮かべた彼が息つく間もなく、今度はその唇に重ねてふさいだ。


「あ…っ」

先ほど指で散々感触を味わった口内を、今度は己の舌で確かめ、絡ませ吸い上げると小柄な体がビクっと動いた。
困ったような表情でくちづけを受けながら、しばらく流れに身を任せていた金髪の彼だったが、黒髪の彼は唇を離そうとしない。
それどころか、両腕でしっかりと抱きしめてくる。


(どうしたの、赤也…)


いつになく甘えてくる年下の恋人に、どうしたもんかと考えつつ、彼のうねったワカメヘアへ−といったら怒るのだが−手を伸ばし優しくすいてやると、髪には敏感なのかやっとこさ唇をはなした。


「…なに?そんな顔して睨んでも、赤也の髪はかわんないんだC」


ニヤっとちょっぴり意地悪に微笑むと、先ほどよりも赤くなった双眸を向けてきたので、枕を押し付けて部屋から逃げることにした。
待て!と追いかけてこようとする彼を閉じ込める意味で扉をしめて、向かった先のリビングでくつろくことにする。
すると、直後に入ってきた彼が、冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出しているのが見えた。


「オレのももってきて?喉かわいたー」



『あごでコキ使われてんだな』

黒髪の彼の中高時代の先輩かつ、金髪の彼の同級生兼親友は、二人の関係をそう一言で表す。


『あごでコキ使ってたのは丸井くんと仁王でしょ』

間髪いれず言い返していたが、結果、後輩の彼はこき使われる運命なんだと結論付けていた。


『アンタらだけッスよ。あれしろこれしろってコキ使うのなんて』

言われ放題だった彼も、多少の反撃を試みるも…



結局、言われるがまま今もこうして、ミネラルウォーターをキレイなグラスに注ぎ、ソファで身を沈めている恋人に持っていくのだから、やはりそういう運命なのかもしれない。



「ありがとう」


一目ぼれしたときと変わらぬ明るい笑顔を向けられると、…たとえ先輩方に何を言われようと、彼の言うことなら全部きいてあげたい気になる。
心地よいミドルトーンで耳元で告げられた感謝の言葉に、どういたしましての意味を込めて、軽いフレンチキスを何度もしていたら…


「水が飲めないC!」




やっぱり文句を言われた。



金糸の天使は、春のような夏のようなお日様のにおい。
柔らかく弾む肌は気持ちよくて、甘いくちづけを交わすとたまに文句を言ってくる。
耳に届くのは心地くハツラツとしたアルトヴォイス、そして明るく元気な笑顔。


切原赤也、19歳。
恋人は、世界で一番可愛い人です。





(終わり)

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赤也の五感。ポエムみたいな話になってもうた。。
誰が19…




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