彼氏がマジマジしょーもないんです

*会話文




「…ってことをな、懇々と諭してやったワケだよ」

「……」

「ウジウジ暗くて見てらんねーっての。ちったぁ先輩見習って強気でいかねーと、叶うモンも―」

「……」

「普段は生意気で強気なくせに、恋愛になるとてんでダメなんだもんなー赤也は」

「……」

「そこを一歩も二歩も先に進んでいる優しい先輩が手取り足取り教えてだなぁ」

「……」

「おーい、聞いてる?ジロくん」

「……聞いてない」

「(無視)でな、フラれた赤也を慰める会も佳境に入ってだな、仁王が―」

「………うるさいC〜」

「さすがに仁王のやり方は人でなしっつーか、ありえねーだろい」

「……」

「初心者マークの赤也には到底むーり、むりむり。俺ならともかく」

「…ねぇ」

「柳や柳生は真面目すぎて参考にならねーし、真田は論外。となるとやっぱ俺が相談にのってやるしかねーだろ」

「……ちょっと」

「そんでなー」

「だぁ、もう、うるさいC〜!!」

「うぉっ、おい、急に大声出すなよ」

「どっちが……耳元でずーっとずーっとずーっと一人で喋って、うるさいったら」

「ひとりぃ?ジロくんに話してんだろい」

「あのさー」

「で、話は戻るけど赤也が―」

「戻んなくていいっての」

「なんだよ、赤也はお前にとっても可愛い弟分だろ?」

「誰が…」

「(無視)可愛い後輩がまたもフラれて、彼女いない暦―」

「…その話、あと5時間後にしてくんない?」

「なんだよ、いち早く伝えたいっていうオレの思いを」






「いま何時だと思ってんだよ!」

「ん?何時って」







「オレ、寝てたの!丸井くんが最終で帰ってこようが始発だろうがどっちでもいいけど、起こさないでって言ったよね???」

「俺、眠くねーもん」

「酒臭い!タバコくさい!酔っ払い!」

「しょーがねーじゃん、居酒屋だったんだし。俺ら誰も吸わねーけど、隣のテーブルの兄ちゃんたちがプカプカしてたもんなー」

「お風呂はいって」

「えぇ〜」

「えーじゃない。シャワー浴びて歯磨いてくるまで、ベッド入ってくんな」

「ひでぇ」

「酷くない」

「しょーがねーなぁ」









(はぁ……やっと行った。…5時半?まじまじ?ったく、かんべんして…よ…)









10分後。







「じっろく〜ん」

「Zzz…」

「風呂入ったぞー」

「……」

「ん?」

「…おーい、起きろ〜」

「…う…る、さ……」

「なーなー、話の続き」

「……ん…」



―でな、赤也に言ってやったワケよ。お前、そんなんじゃ今後彼女できねーぞ、ってな
―仁王が一番経験豊富だけど、アイツの経験談は参考になんねーだろい
―仕舞には赤也、うるうるしちゃってさー。泣くなっつーの。アイツ押しに弱いくせに好みが細かいんだよなぁ
―男なら据え膳とっとと食えって仁王と散々言ってやったら真田に怒鳴られた
―ちょっと可愛い子に迫られてんなら、とりあえずヤっちゃえばいいのになー。好きとかこの際置いといて
―アイツ、好きな子じゃないとダメなんだと。かーわいいねぇ、アレで純情なオトコなんだよなー。そんなとこは真田の教育の賜物ってか
―据え膳タイプの俺と仁王と、好きな子じゃないとありえないっつー柳、柳生とで、赤也挟んで激論



(……もうっ…げん…かい……こんの、アホ男っ!)



「…据え膳タイプ?」

「おう。男なら、可愛い子の誘いに断っちゃいけねーだろい。ありがたくいただくとしてだな」

「……丸井くんは、可愛い女の子に誘われたら、エッチしちゃうんだ?」

「ま、困ってねーし、よっぽど抗いがたいくらい可愛い子に限るけど」

「………最近はいつ、その断れないくらい可愛い子に誘われたの?」

「んー、いつだったかなー。そういや3月中旬?」

「…仁王たちとスノーボードで北海道行ったとき?」

「えへへへへ、いやーモテちゃってモテちゃって。仁王といい勝負―」

「………」





「……って、あ……やべっ」

「へぇ。たいそう楽しい北海道旅行だったんだねぇ」

「げっ」

「酔っ払ってるから多少は聞き流そうかと思ったけど…」

「あ、あの…その…ジロくん、お、起きました?」

「さんっざん人が寝てる隣で語ってくれれば嫌でもね」

「え、えっと〜」

「ほんっとさぁ、浮気はバレないようにやれって言ってるよね?」

「う、浮気って」

「浮気じゃないとでも?」

「うぅぅ…」

「黙ってりゃいいのにさ。なーんで酔ってるからってよりによってオレに言うんでしょうねぇ」

「あ、えっと、その」

「で、据え膳を食ったわけ?」

「す、すえぜん??」

「可愛い子に誘われたら断らない丸井くんが、北海道でナンパされた可愛い子を、ベッドに誘ったんですかねーと聞いてるんですけど」

「ね、ね、寝てない!!」

「ふーん。カワイー子とエッチしたんだ」

「してねぇ!」

「別にいーけど。オトコだし、気持ちわかるし」

「よくねぇだろい!!」

「なんだよ」

「してねーよ。誘われたけど、断ったし!!」

「モテちゃって大変だったんでしょ?いーよ、もう。丸井くん、ショートカットの可愛い子、大好きだもんねー」

「ショートはなー。ふわふわ……って、そーじゃなくて!」

「据え膳食うんでしょ?」

「だぁ、違う!アレは仁王と一緒に赤也畳み掛けるためにっ」

「べーっつに〜」

「仁王だってそこまでがっついてねーし、アイツも据え膳ってタイプじゃねぇ。あんなナリして真面目なの、知ってるだろ」

「……」

「それに、俺にはジロくんいるし、いっくら可愛い子に言い寄られても、なびくわけねーだろ」

「……」

「冗談でも『別にいい』なんていうなよ」

「……」

「迫られたのは本当だけど、俺も仁王もきっぱり断ったっつーの」

「……ん」

「ありえねー女たちで、部屋まで押しかけてきたんだよ」

「……」

「押し倒されて、あと一歩で俺らがやられる寸前。ったく、怖いねーちゃんたちだった」

「…据え膳」

「あんなの迷惑以外何ものでもねーよ。北海道旅行の恐怖体験として仁王と一緒に封印した出来事だ」

「……ごしゅーしょーさま。モテモテオトコはツライね」

「あんなのにモテたくねーよ。仁王が最も嫌いなタイプだから、アイツ始終怖い顔してて」

「…仁王、分別ない人には容赦ないもんね」

「その後ずっと不機嫌で、小樽につくまで車内無言だぜ?俺だって被害者だっつーの」

「……酔い、さめた?」

「ん?酔ってねーよ」

「ウソ。酔っ払ってたしょ。オレの前でアホなこと喋るくらいは」

「うっ……」

「半分寝てたからあんまり聞いてなかったけど、『据え膳と可愛い子』で目が覚めちゃった」

「…ごめん……ほんのちょっと、酔ってたかもしんねぇ」

「うん。いいよ。オレも、ごめんね?」

「ん?」

「『別にいい』なんて言って」

「…傷ついた」

「ごめんごめん」

「繊細なハートがズタボロ。こりゃもう心行くまで慰めてもらうしか」

「は?」

「とりあえずジロくん、寝起きの一発―」

「寝言は寝て言えよ?」

「100%起きてます、ほーれ、俺のムスコちゃんもビンビン♪」

「はぁ?!」

「なんか元気いっぱいみたい、俺」

「…しらねーんだけど……ってか、何で?いつから?」

「わかんねぇ。朝だから?」

「朝も何も…始発まで飲んでて、そこから帰ってきたばかりでしょ」

「まだまだ若いなー俺も」

「……おやすみなさい」

「ちょーっと待った」

「…なに」

「俺をこんな状態にしたまま、寝るってのか?」

「寝るよ、何時だと思ってんだよ」

「6時」

「いつもならまだ寝てる時間です。オヤスミ…」

「俺は眠くない」

「……」

「おいこら、寝るなー!!一発はどうしたんだよ」

「リビングで好きなだけエロDVD見てきて…」

「目の前にジロくんがいるのに、AVで抜くなんてそんなジロくんにシツレーなことできねぇだろい」

「全然失礼じゃないから。むしろ一人でしてきて欲しいっていうか、巻き込まないで欲しいというか、放っといて欲しいというか」

「寝起きの一発!」

「まだ起きないから」

「起きてんじゃん。なー、この子、しずめて?」

「なにがこの子…」

「据え膳、いただきま〜す」

「あ、ちょっ、入ってくんなー!」

「目の前に美味しいご馳走が転がってれば、ありがたく頂くのが礼儀だろい」

「誰がゴチソウだよ。ちょっと、髪、濡れてるし!」

「風呂上りだからなー。ジロくんが風呂入ってこいって言ったからだC〜」

「C〜じゃないっての」

「俺、ジロくん限定で据え膳いただく主義ですから」

「わっ、ちょ、待って!!」

「待ちません」

「ご、5時間!あと5時間後にして」

「なんだよ11時まで寝る気か?」

「寝る気です。休みだもん」

「なら、いま一発ヤっといて、心ゆくまで寝るってことで」

「一発で終わるわけ?」

「さぁ」

「もー、本当、カンベンしてよ〜」

「どうしよう、俺、どんどん目が冴えてくる」

「イーヤー」

「嫌じゃない!」

「寝ーさーせーてー」

「寝てもいいけど、コイツがどんどん大きくなっちゃって。ジロくんの中に入らないとおさまりつかねーんだけど」

「バカー!!!ばかばかばか!」

「寝っころがってりゃいいから」

「はいー?!」

「好きにすっから。寝てろよ」

「ちょっ、脱がすなー!!寝てられるわけねーでしょ!」

「なー、キャラメルとバニラ、どっちがいい?」

「は?」

「新商品のバニラ味と、キャラメル味。どっちもいいニオイなんだよな〜」

「なっ…いつの間に」

「ネットで買った。だいじょーぶ、ちゃんとオーガニックでカラダにイイやつだから」

「オーガニックって…」

「バニラに決定」

「そ、それをどうするつもり…?」

「もっちろん、しっかり慣らさねーとなー」

「!!」

「しつれいしま〜す。天才的指テクで気持ちよくしてやっからな〜」

「アホなことばっか言って……ま、丸井くん、待っ―」











その後、小一時間以上は好き勝手され、解放された頃には太陽の燦々とした光が窓から射しこんでいたそうな。





(終わり)

>>目次

****************

ブンジロおバカ会話文シリーズ、丸井くんの据え膳。
一年以上ぶりのブンジロおバカ話。あらら。
リハビリこめての会話文(散文に…)

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