▽月には星屑の気持ちは分からない
「…葉山、くん」
ふと、彼の名前をつぶやいてみた。
冷たくて空っぽな教室でそんなことをしたって、彼は現れない。
表情の読めない彼。皆はどことなく、彼を疎外している。
前髪を前が見えなくなるくらいに伸ばして、
「…あー凛ちゃんになりたい」
朝木凛ちゃんは、無口な彼と話せる数少ない女の子だ。
彼女も多くを語らない性格だから、ウマが合うのかもしれない。
言葉少なに、まるで目と目で会話しているような二人を見ると、なんともいえない生ぬるい気持ちが胸をいっぱいにして、息ができなくなる。
それは嫉妬とも、支配欲ともいうのかもしれない。
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