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「#エロ」のBL小説を読む
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 ある日の昼休み


「三席って美人だけど、色気はないよな」

支倉五席の言葉に、僕は盛大に口の中のうどんを吐き出した。

「な、なななな?!何を!何を言ってるんですか突然!」

「汚いな。お前動揺しすぎ」と、僕の慌てようを笑う五席。
五席と三席はどこか似ているところがあると、以前から思ってはいたけれど、やっぱり似ている気がする。
どこかと聞かれても分からないけれど。

「お前はそう思わない?」
「そ、そ、そんな、そんなこと、考えたこともありません」
「お前は本当に三席好きな」

と、五席はまた笑う。

「何て言うか、あの見た目から想像出来ないんだよな、三席がエロいことしてるところ」
「エ、エエエロ?!」
「美人で綺麗だけど、あの白さが清浄無垢、清廉潔白に見せすぎてるって言うか。逆にそう言うこと考えてるこっちが汚れてるみたいに思わないか?」
「エロ、エロ、エロ?!」
「いや落ち着けって」

深呼吸をして、お茶を飲んで、出来るだけ心を落ち着かせる。
危うく呼吸困難になりそうだった。

「そ、そんなこと、考えたこともありません」
「さっきもそれ聞いた。じゃあ想像してみろよ。出来るか?あ、猫騒動の時、お前色々想像してなかった?鼻血出してただろ?」
「そっそれは…」

そういえば、そんなこともあった。
あの時は三席の意外な一面を目の当たりにして、頭が真っ白に…。

「お、覚えてません」

「本当か?」と、五席が疑いの眼差しで僕を見る。

「本当です!」

本当に覚えていないのだ。
何だか勿体ない気がしてならない。

「日番谷隊長と、シてるのかな」
「え?何がですか?」
「だから、あの二人恋仲だろ?なら普通するだろ、エロいこと」
「エ、エエエロ?!」
「お前エロに反応しすぎ」

だって五席がとんでもないことを言うから。
五席は「いや、でも日番谷隊長はまだお子様だからな…」と、またとんでもないことをぶつぶつ言っている。

「お前、考えたことないって言うけど、じゃあ三席をオカズにしたことないのかよ?」
「オ、オカ、オカズ?!」
「それだけ三席のこと好きなくせに、まさか他の女でヤってるなんてこと、ないよな?」
「ないですないです、あり得ないです!」

思わず勢いよく答えたけれど、何かとんでもない宣言をしてしまった気がする。

「まじかよ」

五席がちょっと引いている気がする。
待って下さい、最初に言い出したの五席ですよ!

「でっでも、僕は決して三席のあられもないお姿なんて想像してません!」
「じゃあ何を想像してるんだよ?」

それは――、

「さ、三席の…笑った顔、とか…」
「は?そんなのオカズになるのか?」
「そんなのとは失礼な!三席はあの微笑みだけで充分です!」

あれ、また何かとんでもないことを宣言してしまった気がする。
そして、また五席がちょっと引いている気がする。

「お前…プロだな」

「すごいわ」と、肩に手を置かれる。
あれ、これは褒められている…のか?

「でも確かに恐れ多くて、三席の…エ、エロいお姿は想像出来ません」

多分想像しようとしても、浮かばない。
三席はそういう場面に、全く縁がないような気がするから。
三席にはずっと真っ白で…いて欲しい。
それは僕の願望だ。
これを言ったら、また五席に引かれるかもしれないから黙っておく。

「な?そうだろ?松本副隊長なら容易に想像出来るんだけどなぁ」
「あたしがなんだって?」

その艶っぽい声と同時に、肩をがばりと抱かれる。

「うわぁ!!」

五席と僕の間に入ってきたのは、大きな胸…じゃなくて、松本副隊長。

「ふ、副隊長!」

ど、どうしよう。
もしかして、会話を聞かれていた?
っていうか副隊長!胸が!胸が当たってます!

「松本副隊長は、色気がすごいって話してたんですよ。笹が」
「僕ですかぁ?!」
「ふぅ〜ん」
「違います、違いますよ副隊長!」
「じゃあ何?誰の話?」

「いや、それは…」と僕が言葉に詰まると、五席が隣で笑っている。
五席から話を始めたくせに、ずるいですよ!

「まぁ、あたしに色気があるのは当然のことだけど、このあたしを上回る人物がこの十番隊にはいるのよ」
「だ、誰ですか?」

副隊長より上って一体どんな人なんだ。
そんな人、十番隊にるか?
いたら絶対に目立つだろう。
五席も興味があるようで、副隊長の次の言葉を待っている。

「知りたい?」
「知りたいです!」

僕が即答すると、副隊長はにんまり笑う。

「…?」
「あたし、蕎麦が良いな〜」
「え?」
「あたしお昼まだなのよねぇ」

つまり、続きを聞きたくば昼食を奢れと言うことらしい。
五席は先まで興味がありそうにしていたのに、今は素知らぬ顔で親子丼を食べている。

「はぁ…分かりました」

僕が払うしかないらしい。
だけど、気になるから仕方がない。

「やった!おばちゃん、鴨蕎麦一つ!あと海老の天麩羅も二つ付けて!あと、」
「ちょちょちょっと副隊長!」
「何よぉ、良いじゃない。あんた実家暮らしだし彼女もいないでしょ。おばちゃん、あと白玉あんみつも!」

自分が支払うわけではないからと、副隊長は微塵も遠慮することなく甘味までつけた。
反論はしなかったけれど、実家暮らしも彼女がいないことも、関係ないですからね!


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