雪解け(過去・番外・後日談等) | ナノ
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 白か黒か(02)


「お待たせしてすみません」
「何だ今の」

不機嫌そうに日番谷が言うと、周は少し驚いたようにした後、くすと笑う。

「あまり周囲に漏らしたくない内容でしたので」

益々不機嫌な顔をする日番谷に、周は隣に腰を下ろし、少し声量を落として話す。

「技局が通信販売を行っているのはご存知ですよね」
「ああ」

技術開発局は、その技術や研究実験の副産物等を商品化し、販売している。
研究、実験には多大な費用がかかる為、それを補填する為の副業だった。
伝令神機から気軽に注文することが出来、様々な商品を取り扱っている為非常に人気が高い。
日番谷は利用したことはないが、通販目録が配布されたり、瀞霊廷通信にも広告が載っている為、存在は知っていた。

「あの中には、いくつか私の身体の一部を提供しているものがあるのですが、」
「何?」

何だそれ、初耳だ。
日番谷が驚いていると、周は「昔からです」と笑う。
いつからそんなことをしているのかは知らないが、よく考えれば、否、考えなくてもあり得ることだった。

「その中で一番売れている美白美容液、それを綾瀬川五席もご愛用なんです」
「瀞霊廷通信にも大きく広告が載っている、あれか?」
「はい、それです」

毎回のように載っている為、興味がなくても覚えてしまう程だ。
購入者一覧は技局の記録に管理されており、以前偶然目にしたそれに綾瀬川の名前が載っているのを発見したらしい。

「あの美容液には、私の細胞が入っているんです。私の細胞は色素を少量しか作れず、保つことも出来ません。その細胞を塗布することで色素が生成されるのを防ぎ、肌の白さを保ちます。勿論、他人の細胞が入ったものなんて皆さん良い気はしませんから、内密にされていることです」

周の説明に日番谷は驚くが、聞いていくうちに成る程、と思わず納得してしまっていた。
周の細胞を利用することは納得いかないが、その細胞を逆の発想で商品化することには素直に感心する。

「ですから、あれは私の細胞あっての商品なんです。そのことを、五席に教えて差し上げました」

ふふ、と周は思い出したように笑う。

「細胞は一日で死んでしまいますから、毎日使い続ける必要があります。そして、私が細胞提供しなければあの商品の製造は打ち切られる。それを聞いたら、五席は素直に建造物破壊の件を認めてくださいました」

成る程、と感心すると共に、にっこり笑う周の奥に何か黒いものを見た気がして、日番谷は顔が引き攣る感覚を覚えた。

「と言っても、あの美容液は貴族の女性達にも愛用されているので、今更製造を打ち切るなんてことは出来ないのですが」

最近新しく建設工事が始まった技局の霊子実験施設、あれの建設費用の殆どはその美容液の売り上げらしい。

「いくつかって言ったな、同じように細胞か何かを提供しているのか?」
「はい。美容関係は沢山ありますし、あとはよく売れている霊力回復剤や栄養剤等も細胞や霊圧等を提供しています」

怒りを通り越して最早呆れる。
しかし彼女はそれを嫌々行っているわけではない為、日番谷は口を出すことは出来ない。

「勿論無償ではなく、きちんとお金をいただいています。そのおかげで、死神のお給料がなくても生活していけます」

そう言う周に、日番谷は少し驚く。
勿論無償で提供することは周に得はないのだが、報酬を貰っていると言うのは少し意外だったからだ。
以前乱菊が、周の貯蓄がとんでもない額だと話していたのを思い出す。
成る程、確かにとんでもなさそうだ。

今回は相手が綾瀬川だった為にこの手を使ったと、周は言う。
ふと、もしや技局に身体の一部を提供しているのは、色々な情報を集める為ではないか――と日番谷は考えたが、周に「どうされましたか?」と問われて考えるのをやめた。
以前から若干腹黒いところがある、策士等とは思っていたが、間違いないと日番谷は思ったのだった。



白か黒か



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