雪解け(主人公×他キャラクター) | ナノ
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 壊れた境界線


局長の助手として霊体の隅から隅までを解剖し、全てが終わったのは陽が沈んだ何時間も後だった。
採取した細胞の研究は明日から始めるよう言われ、今日は自由を許された。
研究室に戻ると、すぐに気が付く。
薄暗くひんやりとした部屋には、電子機器の音、ぽこぽこと水の中で気体が浮上していく音、それから耳を澄まさなければ聞こえない程の小さな寝息。
寝ている時すら霊圧も気配も感じないものだから、一体こいつの魄睡はどうなっているんだか。

作業場や棚は資料やらで散らかり放題だが、唯一長椅子の上だけには物を置かないことが習慣になっていて、それは多分、彼女が決まって此処に座るか寝るかしているからだと思う。
彼女が此処へ来ることを分かっていて、長椅子に物を置くことをしない。
長椅子で胎児のように眠る彼女は、所謂幼馴染と言うやつだ。
十番隊前隊長と先代の局長の親交が深かった為に、拾われたガキ同士の俺達は必然的に幼い頃から知り合いだった。

煙草に火を点けて、煙が上がると、彼女の霊圧が僅かに揺れて、ゆるゆるとその瞼が開かれる。

「……阿近」

呼ばれた名前は掠れていた。
半目で俺を見上げるその目元は、長い銀色の睫毛と葡萄色が蛍光灯に反射して、少し眩しい。

「ああ」
「…遅かったですね」
「解剖に時間が掛かった」
「…そうですか」

水の入った湯飲みを差し出し、彼女がそれを飲み干すと、掠れた声はいつものそれに戻った。
現世駐在任務から二か月ぶりに帰って来た彼女は、少し前髪が伸びたようだ。

「夕方帰って来たのか」
「はい、予定通り」

にっこり笑う彼女の表情に、溜まっていた色々なものが底の方から湧き上がってくる。

「ふうん」

煙草を消して、水を飲んで、長椅子に座る彼女に、覆い被さるように跨る。

「お腹が空きました」

突然そんなことをしても、彼女は表情一つ変えない。

「ああ、俺もだ」

「だったら、」と言いかけた彼女の唇に、自分のそれを押し付ける。
喋る為に開いていたその口に舌を滑り込ませる。
いつもより随分乱暴に、その小さな口内を犯し、柔らかい舌に噛み付くと、「ん!」と彼女が声を漏らした。
構うことなく歯がかち合うほど深く食いついて、片手で腰紐を解き、俺の胸を押す手首を頭の上で縛る。
折れそうな手首からは想像出来ない程の力が秘められていることを知っている俺は、そんな優しい縛り方はしない。

「っ…、阿近、」

きつく縛り過ぎたか、彼女が僅かに顔を歪める。
その表情に欲情して、また噛み付く様に口付ければ、抵抗するように首を振るものだから、顎を掴んで固定し、口内をめちゃくちゃに舐め回す。
彼女が咳き込んだ為に唇を離すと、唾液で濡れた彼女の唇が、いやらしく光った。
彼女の衿を開いて片方の膨らみをわし掴むと、

「痛いです。八つ当たりですか」

怖がることなんてするわけもなく、文句を言う。

「ああ、そうだ」

やはり表情一つ変えない彼女にいらついて、掌に吸い付くその柔らかい膨らみを揉みしだく。

「性格悪いです」
「今更だろ」

言い終わらないうちに、下着をずらして膨らみの突起に吸い付くと、彼女の身体がびくんと震えた。
唾液でべたべたにしたそこを舐めまわし、舌で押し付けるように擦る。
彼女が耐えられずに小さく喘ぐと、俺の下半身は熱く大きくなる。
彼女がどうしたら堪らなくなって、どうしたらどうなるのかを俺は知り尽くしていて、それに大きな優越感を抱いている。

「あ、阿近、待って……、」

そして彼女も、俺がどんな時にこう言う抱き方をするのかを分かっていて、知り尽くしている。

「待って、ください…」

言いながら、胸に顔を埋める俺の頭を、縛ったままの両手で押す彼女。

「うるせぇな、鍵は締めた」
「そうではなくて、何かあったんですか?」

彼女の手を振り解いて、袴の隙間に手を入れようとして、「阿近」ともう一度呼ばれたものだから、思わず舌打ちして、「檜佐木だ」と吐き捨てるように言う。

「檜佐木副隊長ですか?」

入隊当初から、檜佐木は彼女に随分と熱を上げている。
本人曰く一目惚れ、何故か俺に懐いて彼女のことをあれこれ話してはあれこれ聞く。
俺と彼女が幼馴染だと言うことは護廷では周知のことで、幼馴染である俺から彼女のことを聞き出したいのだろう。

「それで、どうしたんです?」

先を促されて、思い出したらまた腹が立って、袴の紐も解いて下ろすと、「阿近」とまた呼ばれる。
彼女を見れば、やはり表情を変えずに、真っ直ぐ俺を見ていて、澄んだ葡萄色が俺の胸の内まで見透かしているようだった。

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