雪解け(主人公×他キャラクター) | ナノ
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 きみの唇に宿る魔法


「ちっ、またかよ」

書類を確認して、また一枚捲り、その度に眉間の皺が深くなっていく。

「ですから副隊長、そっちの山は全部十番隊トリオなんですよ」
「分かってる」

困ったように言う三席に、書類――調査用紙から目を離さずに言う。

「それにしても、本当に十番隊の人気ってすごいですね。日番谷隊長が就任されてからは更にすごくて、入隊希望の倍率がどんどん上がってやばいらしいですよ」

三席の言う通り、十番隊は人気がある。
日番谷隊長が就任する前からも、乱菊さんと彼女目当てで結構な人気ではあったが、日番谷隊長が就任してからは更にすごい。

俺が目を通しているのは瀞霊廷通信の調査用紙で、特集して欲しい話題を募ったものだ。
回収したら、殆どが十番隊トリオの特集を希望する声ばかりだった。
日番谷隊長、乱菊さん、彼女の三人は、いつの間にか十番隊トリオと呼ばれ人気を博している。
銀髪金髪の、色素の薄い珍しい容姿の三人が、偶然か必然か、同じ隊の重役に就いている。
三人に共通するのは、有無を言わさず人を惹きつけてしまう特異な点。
特別な感情を持っていても、そうでなくても、自然と、当然のように引き寄せられる何かがあった。
それは容姿の美しさなのか、醸し出す雰囲気なのか、言葉では表すことの出来ない何かだ。
十番隊の隊花である水仙、その花言葉を体現したような人達だった。

それだけでも話題になるのに、更に三人とも流魂街出身だ。
隊長、副隊長、三席まで全員流魂街出身の隊は、他に十一番隊だけだ。
そして、三席以上に二人以上女性が就いているのは、他に四番隊だけ。
それだけ珍しいと言うことで、人気に拍車をかけているわけだ。
まあ十番隊が人気なのは今に始まったことでもないし、日番谷隊長が就任してからの人気も予想は出来ていた。

「これもかよ……」

何がこんなに俺を苛々させているのかと言うと、十番隊トリオが好きと言っても、中にはコンビが好きな連中もいる。
日番谷隊長と乱菊さん、乱菊さんと彼女。
そう、日番谷隊長と彼女、と言う組み合わせも異常に人気があるのだ。
この調査用紙にも、日番谷隊長と彼女の特集を組んで欲しいと言う内容が結構な数あって、それを涼しい顔して瀞霊廷通信のネタに出来る程俺は優等生じゃない。
そりゃあ十番隊の人気には、瀞霊廷通信の売り上げに大いに貢献してもらっているが…それとこれとは話は別だ。
瀞霊廷は兎も角、護廷では俺と彼女の関係を知らない者はいない筈なのに、それでも、日番谷隊長と彼女がお似合いだと言う連中が数多くいるのだ。
気持ちは、と言うか、客観的に見れば分からないでもない。
同じ銀髪に神秘的な容姿、雰囲気の二人はよく似ている。
だからこそ、俺は平静ではいられなくなる。
他の男が彼女に近付いても許せないが、日番谷隊長となると別の感情が湧いてくるのだ。

昔は、彼女に片想いをしている時は良かった。
瀞霊廷通信を理由に何かと彼女に会いに行けたし、写真を余分にに刷って自分用にしたり…いや、ほんの数枚な。
彼女と両想いになった今となっては、瀞霊廷通信の関係で苛々することばかりだ。
調査だなんだと、何かと彼女の名前を目にする度に嫉妬に駆られる。
そりゃあ片想いしていた時期も嫉妬はしていたが、理由をつけて彼女に会いに行ける喜びの方が勝っていた。

「トリオで特集組みます?コンビの票も多いですけど」
「コンビなら日番谷隊長と乱菊さんか、乱菊さんと周さんの二択だ」
「副隊長、それ私情入ってませんか?」
「じゃあトリオだ。それが一番人気があるんだから」

三席は少し呆れたように溜め息を吐いて、席を立つ。

「では早速、取材申し込みに行ってきます」
「俺が行く」

席を立った俺に三席が驚いて、少し怪訝そうにする。

「取材の依頼くらい、俺が行きますよ」
「良いから。お前はこっち校正しとけ」
「ええ!荻野三席の淹れたお茶、飲みたかったのになぁ」
「お前、忘れてねぇだろうな。あの人は、お、れ、の、だ!」
「やっぱり私情じゃないですかぁ」

と喚く三席を無視し、副官室を後にした。

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