2.多分、それでも
「ほら。 もうじき、クリスマスでございましょう? あの子の彼のオジサマ天使、イブには二人で一緒に演奏しようって…まあ平たく言うと、一緒に二人で過ごそうってなことを言ってたらしいんでございますのよ」 「へえぇ、イブにクリスマスソングなんて、なかなかオツだねえそん人も」 「ん、まあそこはそこでいいんでしょうけど。 仕事。 入っちゃったんでございますのよ、そのオジサマに。 まあ仕方ないですわ、なんたって音楽の国の名ピアニストなんでございますから、時季的にそりゃあ仕事も入るに決まってるでございます」 「…まあ、そうだねえ」 「それが、あの子。 すんごい楽しみにしてて、ヤマトW様にむりくり頼んで休暇までとってたのに、反故にされたのが気に入らないらしくって。 『Pアンノ様の、馬鹿〜!』 て、言っちゃったらしいんでございます」 「あいたたた…」 「でしょでしょ。 で、私達に泣きついてきたんでございますわ」 「ふ〜ん…」 「私個人の意見で言わせて頂くと。 まあもうムシャクシャするでございますのよ、女は男のお仕事の邪魔になっちゃあいけませんわ、最っ低!」 「うん…」 「どうしたでございます?」 「いやそのオジサンはさ。 多分、それでもベスタニヤのこと、好きなんだろうなって」 「…」 「そんなわがままいって、自身を困らせるとこもひっくるめて、好きなんだろ」 「……そんなもん、でございますの?」 「相手を好きになるって、そういうことじゃないか?」 「はあ…私にない発想なもんで、なんか新鮮でございます…」 「ミネルンバはそういうとこ、キッチリしてるもんな。 たまには俺にもわがまま言って、甘えてくれたらいいのに」 「え…そ、そうなんでございますの、やだ、なんか照れますわ…」
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