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PROLOGUE

さむい。
いたい。


冷たい雨が、僕を叩くように、打ち付ける。
震えが、とまらない。
寒いからか、怖いからか、僕にはわからないけど。
全身、ぐっしょりと濡れたまま、まっくろの中を歩く。
だって、じっとしてたら、まっくろが僕を、飲みこんでしまいそうなんだもの。
・・・なにかしてないと、思い出してしまいそうなんだもの。


でも、感覚がなくなってきたせいか、思いっきり転んだと思ったら、ごろごろ転がって、とまらなくなって、いろんなものにぶつかって。
気がついたら、もう僕がいたところに戻れないくらい、ずっと、遠い場所にいた。
全身が痛い。
じんじん、じんわり、身体がが熱くなってくる。


辺りを見回しても、誰ももいない。
まっくろのなかに、僕だけがいる。
・・・僕以外に、そこにいない。


「・・・僕、ひとりで死ぬんだな。」


なんとなく、そう思った。
誰にも見つけられずに、ひとりで、こんな怖いところで、なくなるんだ。


「誰か・・・来たり、しないよね」


来るはずがない。そんなこと、僕が1番、わかっているのに。
なぜだか、ほっぺが濡れていたので、ごしごしとこすると、ひりひり痛くなってしまった。
ふんだりけったりだ。
覚えたての言葉を使ってみたが、褒めてくれる人なんて、そこにはいない。
どうしようもないので、膝をかかえて、まっくろな空を見上げてみる。


「あ・・・」


そんなとき、辺りが急に明るくなった。
僕から、まっくろが遠ざかっていく。
そらを見上げると、そこには小さな三日月が輝いていた。


「きれいだな・・・みかづき」


まっくろな空の中にある三日月を見ていると、不思議と胸の奥がぽかぽかしてきて、心地いい。
三日月だけは、僕がここにいると、僕を見ていてくれてると、そんな気がしたから。


僕は、眠りに落ちるまで、ずっと三日月をみていた。

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