◎5
頬がピクリと引きつるのを感じた。
それは、安室 透だったのか。
はたまた、バーボンだったのか。
あるいは、降谷 零だったのかもしれない。
だが、共通して言えることは。
「あっ 安室さん。この前言っていた新人さんですよ」
…どうしてお前がここにいる、ベルンカステル。
笑ってごまかそうとして…いや、ごまかす気すらないベルンカステルを見ていると、頭痛がしてくる。なんなら、胃も痛くなってくる。
ああ、そんなベルンカステルの隣の梓さんの笑顔が眩しい。とても癒された。
とりあえず深呼吸をして、何とか笑みを張り付ける。
「あー……、彼女が__」
「いえーい!ぴーすぴーす!!」
控え目に言って、割とイラっとした。
「……ええと?」
「愛支さんです。もしかして知り合いですか?」
「近所の弟。この子、すぐに無茶するから心配しちゃったの」
「いつから僕はあなたの弟になったんですか」
「でも、すぐに事件だなんだと言ってお仕事中に抜け出すことが多いと聞きました。そういうのはよくないと思います!」
それに関しては何も言えない。
梓さんも、うんうんと言いたげに頷いている。
いつもすみません、梓さん…。
「弟の不始末はお姉ちゃんがなんとかします。だから、弟、ちゃんとゆっくり休むこと!」
「…その弟設定はどこから来たんですか…」
「頑張り屋さんな子はみんな私の弟と妹!だから、梓ちゃん、私のことはお姉ちゃんって呼んでいいよ!」
「なら、お姉ちゃんって呼んじゃおうかな」
先程までカオスだったのに、いつの間にか普通の会話に戻っている。
この場に梓さんがいて本当に良かった。
…なんて一安心したのがいけなかったのだろうか。
ベルンがカウンターにいたのに跳躍だけで目の前に着た挙句、思い切り抱き着くという「お前、人間のふりする気ある?」案件をかましてくれたので、思わずチベスナ顔になった。
これには梓さんも顔を真っ青にしている。
「お、お姉ちゃん…炎上しちゃいますよ…」
「炎上?大丈夫、私、マグマの中にダイブしても死なないから!」
そういう問題ではないのである。
この真祖、全くわかっちゃいない。
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