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言いたい事などさっきからずっと言っているのだが、それ以外の返答を待っているのだろうか。目を伏せて口を結んだ。
すると突然後ろから重さがかかった。顔が自分の顔のすぐ隣にある。
その人物は、今回のすべての発端者でありながらも今も尚楽しそうに口元に弧を描いている。
「エルネット…」
「なぁに〜?あたしには構ってくれないの?」
「一人一人に構ってる余裕なんて…っ」
首もとに回っていた腕は次第に伸びて行き、首筋から鎖骨に沿うようになぞる。耳元に言葉を発する際に息が掛かり、それにぞわりと鳥肌を立たせた。
「っ、お前ら、いい加減に…!」
「いい加減に…なぁに?」
座ってしまったのが運の尽きだったのだろうか、逃げ場など無かった。
視線を反らせれば半ば無理矢理に視線が合わせられ、首筋や耳元に掛かる息はくすぐったく、鳥肌を立たせ身を震わせた。
"やめろ"と言った所でやめる気配など微塵も感じなかった。
「お前ら…いい加減に……寝ろ!!」
そう叫ぶと同時に、頭上に小さな魔法陣が浮かび、そこから波長なような物を発した。一瞬だが波打つような波紋が触れた途端糸が切れたようにアレルとエルネットはその場に倒れ、眠った。
ほんの数分間のやりとりなのに、どっと疲れが押し寄せて息を切らす。
比較的落ち着いた所で立ち上がり、腕を肩に掛けてそれぞれをソファに座らせる。
散らかるに散らかった部屋を見てまた溜息を吐き、手早く片付けを始める。
テーブルの上に広がったグラスを重ね、倒れたポットを直して零れた酒を拭き取ると、キッチンへ運ぶ。
食器を洗ったり、簡単に片付けをしていたら気付けば30分以上経っていた。
「ふぅ…、終わった…か…?」
力が抜けたように、ソファのサイドに寄りかかるように座った。
先ほどまで感じていなった酔いが回ってきたらしく、急に顔が熱く感じ、視界も思考もぼんやりとしてきた。
(やべ…、眠い…)
重たくなった瞼が次第に降りてくる。
気付けば眠ってしまっていた。
そして暫くして目が覚めたエルネットは、最初の時よりも綺麗になった部屋を見て驚いたのである。
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