子どものぎもん

「ねぇ、おかしらー」

「何だ?」

「どうしてふくせんちょーはふくせんちょーなのに、おかしらはせんちょーじゃないの?」

舌っ足らずなせいで何かの呪文か謎かけのように聞こえるその質問に、シャンクスはうーんと頭を捻った。また難しい質問だ。

「何でったってなァ…俺ァお頭だし」

「じゃあふくせんちょーはふくおかしらでも良くない?」

「副お頭…それじゃあ何か語呂が悪ィじゃねェか」

「ごろ?」

「おう。語呂だ」

「ごろごろっごろー!」

何だか知らないが、どうやらお気に召したらしい。少女はまるで猫のように喉を鳴らすと、納得してくれたらしく、シャンクスの前を去った。気まぐれな彼女は、まるで本当に猫のよう。ベックマンを探しに行ったのであろうその後ろ姿を見送りながら、シャンクスは低く喉を鳴らして笑った。

「…なんつーか、猫が二匹じゃれてるみたい、っつったら怒られっかな…」

「いや、俺にもそう見えたぞ…」

端から見ていたクルーの呟きなど、二匹の猫には知るよしもない。



「ごろごろっごろ!ねぇ、ふくおかしらー!」

「……今度は何だ」

またもや奇妙な鳴き声を発するナマエに、ベックマンは僅かに眉を寄せつつ返答する。

「ふくおかしら!」

「…何だそれは」

「あはは!やっぱりだめかぁ!ごろ悪ィもんね!」

「…悪ィじゃなくて悪い、だ」

「ごろわるい!」

幾ら海賊団に乗っているとは言え、口の悪さがどうにか伝染らないようにとベックマンは日頃からナマエの口調に口うるさい。ナマエもナマエでそれを嫌がる素振りは見せず、素直に聞き入れるのが常だった。まるで親子だ、と誰かが呟くのも無理は無い。

「ふくせんちょーはふくせんちょーだね!」

結論は、着いたらしい。その過程も理由も到底他人には理解し得ぬものの。

「ふっくおっかしらはー、ふっくせんちょー」

満足げに肯いたナマエは、よく分からない歌を口ずさみながらまたどこかへと行ってしまった。手の掛かる猫が一匹増えちまったと、すっかり保護者が板に付いたベックマンは紫煙をゆっくりとはき出しては苦笑した。



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